始まる
千代は、七倉の悲鳴を聞いて仮眠室に向かった。
「店長!!」
「ん?あ、千代ちゃん」
仮眠室の扉を開けると、遥が笑顔で七倉に跨り首を締めていた。
苦しんでいる七倉を見て、大笑いしている笹木部兄弟に、どうしたらいいか分からない迷涼。
「なにしてるんですか!!遥さん!」
今すぐ、七倉くんから退いて下さい!と、付け足した。
遥は、大人しく七倉の上からおりた。
「七倉くん大丈夫?」
千代は、倒れている七倉に駆け寄る。
「ゲホッ!……だ、大丈夫……」
「よかった……」
「千代?」
「ん?」
七倉は、千代の腕を引っ張りそのままキスをした。
これには、周りは驚きを隠せなかった。
「俺、まだお前のこと好きだよ……千代は、嫌か?もう、俺のこと嫌い?」
七倉の行動に、なんと言っていいか言葉を失う千代。
「陽平くん……」
「やっと、名前呼んでくれた」
ニコッと、七倉は微笑む。そんな、彼を見て、彼女は思い出してしまう。
彼が大好きだったことを。
千代は、七倉の頬に手を添えて顔を近付ける。
しかし。
「千代」
自分を呼ぶ遥の声に、千代は我に返る。
そのまま、遥は千代の、華奢な体を引っ張り自分に抱き寄せた。
そのまま、迷涼と千代を攫うように遥たちはその場を去っていった。
「ジ、エンド」
ボソッと、呟く龍夜に。
「あらら、ドンマイだねよーへいくん」
笑う右京に腹を立てる七倉。
でも、名前まだ覚えててくれたんだな。
と、内心喜んでいた七倉であった。
ジ、エンド?まさか、ここからが始まりだ。




