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ちよすず物語  作者: ひな菊
13/60

遥と千代


龍夜にレポートを託して、遥は自分の店に戻る。


「ただいま~」


「奥山店長!!」


慌ててお出迎えしてくれた茜。


「アレ?ちぃちゃんは?」


「会長様が来てます!!」


それを聞いて、目を見開く。


「今、如月副店長が対応してくれてるんですが…って!店長!?」


茜の言葉を、最後まで聞かずに遥は、スタッフルームまで、走る。


扉の前で、軽く深呼吸をして中に入ると、パイプ椅子とテーブルだけしかない殺風景な場所に、千代と呉服店『八重桜』の会長であるー奥山 聡子ーの姿があった。


そうだ、奥山 聡子は遥の二番目の母親。つまりは、継母だ。


「遅れて申し訳ありません」


「店長!」


「遥さん、今まで何処に行ってたのですか?」


「それは…「奥山店長には、最新の着物の、デザインを描いたイラストを取りに行ってくれたのです」


遥の、フォローに回る千代に、そうですか。と、聡子は納得をしてくれたようだ。


「奥山店長、コチラにお掛けください」


遥を座らせる。彼の後ろに、立ち聞きをしている千代。


「で、今日はどのような要件で?」


「別に貴方に用で、来た訳ではありません。如月副店長を私の秘書にしたいの」


「え?」


「ふぁ?」


思わず、アホみたいな声を漏らしたのは千代だ。


「如月さんの仕事っぷりは、いつも聞いてるの。バカで使えない店長の代わりによく働いてるって」


遥は、拳を握り締めることしかできなかった。


しかし、聡子は、続けてこう言うのだ。


「本当に使えない。役立たずね、あの女そっくり」


これ以上は、流石の遥も堪忍袋の緒が切れる思いだ。


反論をしようとした瞬間だ。


ーー パシャッ


目の前に、合ったお茶を聡子に掛ける千代。。。


「なっ!?何をしているの?!貴女の為でもあるのよ?!」


「遥さんをバカにするな!!!!」


目の前で、まるで自分の事のように怒っている千代である。


「貴女なんか、クビよ!クビッッッ!!」


「それはできひんよ。この店で僕が店長です。如月副店長は、貴女に渡しませんしクビにもさせません」


「ふざけるんじゃないわよ!!妾の子如きが!!!アンタたちなんか、いつだってクビに出来るのよ!?アンタは、私の言う通りに生きていれば良いの!一生ね!!!」


取り乱す聡子に、カッチーンと来る千代。

カラになった湯呑みを、咄嗟に投げつけようと振りかざす。


しかし、遥がそれを止める。


「開店時間過ぎてるんで、お引き取り願いますか?」


「絶対許さないわよ!!アンタはっ「分かってます!!」


聡子の言葉に、遥はいつものほんわか笑顔で、答えるのだ。


「僕は、所詮…妾の子やから」


聡子は、荷物を持つとそのまま帰っていった。


千代の湯呑みを握り締めている手を離した。


「なんで、千代が泣いてるん?」


「もう知らない」


彼女が、遥から離れようとした瞬間。腕を引っ張られて、抱き寄せられる。


「なに怒っとるの?」


「怒ってるよ!!怒るに決まってるでしょ?!なんなの、あのババアっ!!口を開けば、店長のこと…妾の子妾の子って!!ふざけるんじゃないわよ!」


他人のことを、まるで自分のことのように怒る彼女に、愛しさを覚える。


「僕なら、大丈夫やで」


湯呑みをとりあえず、テーブルに置いてから力いっぱい彼女を抱き締めた。。。


「て、店長…く、くるじい」


「ありがとう…大丈夫やで…僕には、千代が居てくれるから」


遥は、千代の頬にそっとキスを落とす。それと同時に、彼の頬に一筋の涙が零れた。


困った人。と、呟いてから涙を拭いてやる。


「ありがとう…」


「いいえ」


おでことおでこを合わせ微笑み合う二人だった。

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