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ちよすず物語  作者: ひな菊
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金平糖


講義も、全て終わらせたので迷涼は、レポートのお礼に、コンビニで買ってきた缶コーヒーを渡そうとしていた。


勿論、彼がいる場所はわかる。


仮眠室。


ーー 寝てるかな?


なんて、思いながら仮眠室の扉を開けると、暖かな光が零れ落ちて来た。珍しい、いつもは、真っ暗で埃っぽい部屋なのに、窓を開けているのか、春の香りがした。


龍夜は、壁に寄りかかりタバコを吸っていた。その姿が、不覚にもカッコよくて、 少しの間見惚れてしまった迷涼。


声を掛けるタイミングを、掴めずにいると。タバコの吸い殻をプチゴミ箱に捨てる。


「いつまで、俺をストーキングしてるんですか?」


飽きれた様に、ボソッと呟く龍夜。どうやら、バレていたらしい。


渋々、彼女は龍夜の前に出てくる。


「なんですか?」


ソファーに、横になる龍夜に黙って缶コーヒーを突き出す迷涼。。。


「レポート……届けてくれて……ありあり……ありがとうございました」


彼女の、缶コーヒーを受け取り上半身を、起き上がらせて、自分の隣をポンポンと叩く。どうやら、座れと言いたいらしい。


迷涼は、失礼しまーす。と、小声で呟いてから隣に座る。


「あ、金平糖ありますよ?食べます?」


心底嬉しそうに、袋から金平糖を出す迷涼。そんな、彼女を見て何やら吹き出す。


「あはは。なんで、そのお菓子のチョイス普通、女の子ならマカロンとか選ぶでしょ」


あー!、おかしい。と、付け足した。


「は、初めて見た!ちゃんと、笑ってる顔!!」


「え?俺、いつも笑ってるじゃないですか」


「いや、それは貼り付けた嘘くさい笑顔でしょ?」


「サラリと、酷いこと言いますね」


「ちゃんと、心から笑える人なんだね。そっちの方が素敵!」


瞳をキラキラ輝かせて、話す迷涼を見た時、彼はある記憶が蘇る。


『龍夜は、ちゃんと笑える人なの!本当は、心が暖かい優しい人なのよね』


龍夜の中で、迷涼とある女性が重なったのだ。。。


「……あかり」


「?」


「あ、いえ。なんでもありません」


彼は、缶コーヒーを一気飲みしてカラになった缶を握りしめる。


「ねね、笹木部教授は…」


「龍夜でいいですよ」


「え、でも…」


「二人きりの時は、そう呼んでください」


「分かった。り、龍夜はこの仮眠室から出ないの?」


金平糖の袋を開けようとするが、なかなか開かない。


代わりに龍夜が、開けてくれた。


「そうですね、講義がない時は殆どここに居ますよ」


「お仕事とかないの?」


「全部終わらせてあります。仕事早いんですよ」


「それ、自分で言っちゃう?」


開けてくれた金平糖の袋を、受け取り一つ彼にあげた。


彼は、ありがとうございます。とだけ言って金平糖を、口に運ぶ。


「そんなんだから、他の生徒たちに幻のポケ〇ンとか、ネッシーとか、人魚扱いされるんだよ」


「俺、そんな扱いされてるんですか?」


お腹痛い!と、笑う彼を見て迷涼は思う。


もしかしたら、この人いい人なのかも。不器用なだけで……。


「他には、なんて呼ばれてるんですか?」


「んっとね、この前聞いた時は、笹木部兄弟に会ったら、願いが叶う?みたいな感じ」


「もはや、流れ星扱い」


彼は、嬉しそうに迷涼の話を聞いて、ただ笑っていた。


彼女の中の、氷の王様が段々と溶けていった。


そんな、楽しそうに笑い合う二人を仮眠室の、扉の隙間からある人物が覗き込んでいた。

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