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とりあえず冷静になって来ると今度は纏まらない思考回路に頭痛を覚えてきた。
「私が皇女だとして、どうして今更それを私が知る運びになったの?」
さっき頭で整理しようとしたけれど思い出せない箇所が多すぎてめんどくなった私は、呆れられるのを覚悟で整理しようにも覚えていない話の内容をもう一度聞き出す事にした。
本当に残念な頭である。
「ですから先程も申し上げたとおり、ミリアディア様は国王様が今は亡き隣国の皇女様を見初め、産ませた御身。もう一度、物凄く簡単に経緯をご説明致しますが今は亡き隣国、マユーセ国皇女であるミリア様は、クレストルア現国王様と大恋愛の末ミリアディア様を身篭られました。ところがミリア様が身重にも関わらず国王様とのご結婚が非常に難しかったのです。理由はマユーセがかねてよりコロレア公国と戦争をしていた事にあります。マユーセはその年に他国との戦争に敗戦し、滅亡致しました。 ミリア様は、赤子であるミリアディア様お一人をなんとかこちらに寄こされたのですが、ミリア様ご自身は隣国共々お亡くなりになられたました。 当然、正妃様を始めとする側室、並びに国の重鎮達もご結婚されていない、しかも滅亡した隣国マユーセの皇女であるミリア様と国王様とのお子様を面白くお思いになりません。数え切れぬ陰謀がミリアディア様のお命を奪おうとしていたのです。そこで国王様は内々にミリアディア様の隔離を画策し、こちらの商家、アルトバルン様にお預けになったのです。生きてさえくれればそれで良いとの事でした。勿論、姫様が混乱せぬ様、御自分の素性をお知らせする事無く育てよ。とお達しになられていたのですがごくごく最近、正妃様がお亡くなりになられました。側室制度も廃止され、ご病気を患われてしまわれた国王様がミリア様の忘れ形見であるミリアディア様に会いたいと仰せられるようになりましたのは自然な事と存じます。……国王様はずっとミリア様を愛しておられたのでしょうね。その証拠にミリアディア様のお名前はお母様であるミリア様のお名前をそっくりお継ぎになられていらっしゃいます。ミリアディア様のお名前は、述師に頼むでもなく、王様自らお付けになられた尊いお名前なのですよ。ミリアディア様も次のお誕生日で16歳になられます。大人となられるミリアディア様に色々して差し上げたい。とお祝いのお話もなさっておいででした。一刻も早くミリアディア様にお会いしたいのでしょう。叶うのならば今すぐにでもと仰せでしたよ。」
ふむ。
言ってる事はざっくりわかるけど色々とわからん。
というかどこから突っ込めばいいかわからん。
そもそも、である。
このクレストルア大陸は沢山の国がひとつになっている巨大な島だ。
世界に7つあると言われる巨大な島のうちのひとつに数えられており世界からは英知の島などといわれている。
今、私の住んでるクレストルア国はクレストルア大陸の中でほぼ真ん中に位置している。
クレストルア大陸自体、大小いくつもの国々があるものの主要となっているのはクレストルア五大大国と呼ばれる国々だ。その中でも特に大きなクレストルア国。
クレストルア国は伊達にクレストルア大陸の名前をそのまま継承していない。
何せこの大陸で他の国々をを従える一番大きな国でもあるのだ。
細かく説明すると大変なので色々と割愛するが、この世界の七分の一を統べるクレストルア大陸の主要クレストルア国姫君様ともなれば、たとえ末弟の方々であろうとも、商人富豪のものからしてみても、下々の者から見てみても、勿論貴族達にしてみても余程の者で無い限り雲の上の存在でまず謁見すら叶わず、特に国王クラスの親族となればこんな場所できゃっきゃうふふと木登りして果物かじったり悪戯したり狩りに出かけたりしてちゃいけない存在だ。
それがよもや商家に預けられるとかどう考えてもおかしい。
だって普通そういう場合って他国や王族学校に留学とかさせない?
どうして留学じゃなくて大富豪とはいえ商家?
なんつーかその疑問を差し置いても今の私を見てみて欲しい。
執事が知ってる知らないはさておき、普通は王族がしない事なんて全部やってるぞ。
謁見簡単だぞ!
寧ろ農民もお友達だしスラム街にもこっそり行っちゃってお友達もいっぱいだぞ。
そして勉強きらいだぞ。
下々のものより荒っぽく育ってやったぞ?
この時点で他のお嬢さん方より既に若干お転婆気味だぞ??
マナーなんてほぼ知らんぞ。
寧ろお姫様に憧れた事もないんだぞ。
しかも高貴な血筋の片鱗ないぞ……。
ってのが頭の中を堂々巡りなんだぞ。
何せ私の今の大半の思考回路は
……皇女様とか窮屈そうだしめんどくさそう……。である。
ある日突然そんな巨大国家のお姫様ですよー。
今日から登城して国王に謁見してくださいねー。
なんせ国王は貴女のお父様ですよー。
とか言われても新手の悪い冗談にしか聞こえないってのにってかいつの時代よ……。そんなベタな設定……。
ってなもんである。
いや、この状況を見るに本当なんだろうけども……。