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ヨハン編

 大きな羽ばたきが聞こえ、外を見ると真っ白な梟が木に止まっていた。何かを語るようにじっとこちらを見ている。


「あぁ……行かねぇと」


 唐突にそう思えた。


 今だ目覚めぬソギを連れ、夜の森を歩く。殆ど無意識に足を進めた。あの時と同じく、光る花が導いてくれる。


 行き着いた小さな泉。闇の空にかかる虹。ここは、彼と初めて肌を重ねた場所でもある。目覚めるきっかけが何かは分からないが、ここは自分にとっては思い出深い場所だ。


「なぁソギ。変わらずここは綺麗だ」


 ヨハンは腕の中の細い体を力強く抱きしめる。


「俺は、ソギを待ってるよ」


 ソギの鷲が隣に舞い降りてきた。


「ピィ」


「お前も待ってるんだな」


 唇へ口づける。彼の唇は柔らかく、温かい。何度も何度も触れ合わせ、自分がここにいるのだとソギに知らせる。


「ごめんな、護ってやれなくて」


 銀色の髪が月明かりに光った。


 きらり。


 きらり。


 甲高く鳴いた鷲が、大きく羽ばたいて空へ昇っていく。ヨハンはそれを見上げた。


 視線を戻す。


「……ヨハン?」


「え……?」


 そこには、切望した薄水色が広がっていた――。


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