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秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第六章 幻想未現過 ~ Space-Time Ghost Medium
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第八九話 夜の大妖怪さん

 次第に小さくなってくる愉快な声は、ついに消えてしまったわ。

「そんな事があったのね。知らなかったわ」

「そりゃそうだよ。言った事ないもん」

 蓮子の過去を聞いて少し驚いたわ。てっきり生まれつきばかりだと思ってたわ。

「あぁ、いつの間にか晴れてる。今は……十一時三十七分二十一秒だよ」

「まだ日にち変わってないのね」

 長く感じたわ。蓮子の話し方が下手なせい?

「そんなに早く過ぎてほしいの?」

「何となく。日にちが変わったら私達の世界に帰れるかなって思って」

「実際、そうかもね」

 空を暗くした雲はもう、所々にあるくらいだったわ。月も出てないから星がよく見えるわ。

「そういえば、エニーはどうなっているかしらね?」

「怒ってるでしょ?」

「分かってて言うのね……怒られる覚悟は?」

「ない」

「余裕ね……」

 この自信ありげに言うって難しい事よ。よく言えるわ。

「あら、こちらも楽しそうね」

「誰っ!?」

 何処からか声が聞こえてくるわ。私達は後ろを見たり、左右を見たりしたわ。そしたらね、私だけが見えたのよ。蓮子の横に境目があることに! でも、蓮子に見えるかどうかは微妙ね。

「蓮子、あそこ……」

「ん、何処?」

 やっぱり見えないわね。開き方が少し悪いわ。

「出て来なさいよ。私にしたらもうばればれよ」

「分かってた? なら仕方ないわね」

 境目が大きく開いて、恐らく蓮子にも見える大きさになったわ。

「おおっ! そこにあったの!?」

「貴女は……?」

 ほぼ同時に言ったわ。

 大きく開いた黒い境目から、人が飛び出てきた。

「私は八雲紫よ。多分霊夢から聞いているかと思うわ」

 プライドの高い人だわ。八雲紫ってこんな感じだったのね。凄く上品な人だわ。

 あ、でも、人じゃなくて妖怪ね。

「八雲……紫? なんか、結界を操るとか何とかの人?」

「失礼ね。確かに私は結界を操る事が出来るけど、人じゃないわ」

「あ、そっか。大妖怪だったね」

「それしか聞いてないの?」

 それを言うって事は他にも何かあるって事ね。じゃなかったら何故言うのかしら?

「まだあるの?」

「あるわよ。幻想郷の創作者だとか、神隠しの原因とか」

 まだあるのね……。

「幻想郷を創ったの!?」

「ええ!私がいなきゃ今の幻想郷はないわね。それほどの重要人物よ」

 自分で言うのね……正直引くわ。

 やった事が凄くても、性格がこれだとマイナスの方が大きくなるわね。

 大妖怪と名乗る八雲紫は境目の縁に身を乗り出したわ。

「へー……」

 蓮子は八雲紫の性格の悪さには気にせずに興味を引いたわ。不思議なものには目がないんだから。全く……この癖にどれだけ振り回された事か。

「さて、貴女達の話を聞かせて。私、初対面だからまだ貴女達の事知らないのよ」

「分かったわ」

 取り敢えず、いい妖怪っぽいから話してあげてもいいかも。

 私達は私達の事を出来る限り全部話したわ。エニーの事もルーミアが私達の世界に紛れ込んだ事も。

「そんな事があったのねぇ……大変ね、貴女達も。さて、今何時かしら? 蓮子」

 私達の能力は話したからもう知ってるわ。だから聞いたのね。

 なんだか少しだけ貴女の事が羨ましく思えたわ。

「今は……十一時五十八分三十五秒だよ」

「ならそろそろ、帰そうかしらね?」

「私達を?」

「主語が抜けてたわね。そう、貴女達を、よ」

 やっと帰れるわ。もう疲れたわ。もしかしたら、酔っているせいかもしれないけどね。

「はいはいはい」

「''はい''は一回ね」

「はいはい」

「また久々の説教受けたいぃ? 蓮子ぉ」

 何を言ってるのよ、私ったら! 何か人前ですっごく恥ずかしい。

「いやっ! いいですっ!!」

 ''受けたいですぅっ!''って言う人がいるか。いたらきっとドMね。

「あっそぉ」

「うん、そう」

「さて……いいかしら?」

 あら、私達、人を待たせてるわ。いけないわね。

「はい。すいません」

「別にいいわよ。貴女達みたいなやり取りは何回も見た事あるから」

 そういえば、ここって酒好きが多いわね。ルーミアだって明らかに未成年なのに呑んじゃっているし。その代わりに、すぐに酔い潰れちゃったけど。

「じゃあ、戻る境界を開くわよ? あ、言い忘れてたわ」

 紫が開こうと思っていた境目は中途半端に開いていたわ。私が抉じ開けたいくらい、いらいらする隙間だわ。

「何?」

「貴女達凄く力が強いから、周りに結界を張っといたわ。それだけよ。」

「は、はぁ……」

 紫は話を切らしたから、後の言葉に詰まったわ。でも、紫はそのまま続けた。

「お待たせしたわね。じゃあ……」

 そう言い残すと目の前の縦長い境目は横に広がったわ。

「また会うときまでね……時間は貴女達がここに潜り込む前に戻しておくから」

「はい。分かりました。お世話になりました!」

 蓮子は弾みの良い声で紫にお礼を言ったわ。最後はこうでなくちゃね!

 私も紫にお礼を言った後、二人手を繋いだわ。そして顔を見合わせて、振り返らずに真っ直ぐ黒い境目に飛び込んだわ。

 でも、何か違和感があった気がしたわ。何かしら?誰かに何かを弄られたっていうか何ていうか……。



 ━━━━



「本当によかったかしら? 弄っちゃっても」

 紫は秘封倶楽部達を見送り、スキマを閉じた。そこに、後ろの人影が話しかけてきた。

「大丈夫大丈夫。後は任せておけばいいから」

「奴に? 大丈夫かしらね?」

「私は嘘はついた事だけはないよ」

「怪しいわねぇ……」

「じゃ、また今度」

「いつになったら見せてくれるのかしら? 貴女の姿」

 紫は人影が消える前に聞いた。

「いつになるかなー? また今度、ってだけは言えるかな?」

「あら残念だわ」

 人影は返事を返さずに消えてしまった。

 静まり返った幻想郷に星を隠すほどの月が優しく照らしていた。



 ━━━━



「狡いですっ!!二人だけでそんな所へ行くだなんて、酷いですっ!!約束したじゃないですかっ!!」

 放課後、勿論エニーは私達に向かって激怒したわ。覚悟はしてたわ。ただ、顔が近い事以外。

「わ、私は何も悪くないわよ?蓮子の好奇心のせいよ」

「私ぃっ!?ちょ、メリー、私を裏切るのっ!?酷いよっ!?」

「別に裏切ってなんかいないわよ?本当の事言っただけじゃない」

 言い訳じゃないからね。真実よ。客観的に見てあげたわよ。

「ますます酷いっ!!」

 まるで私の思った事が分かったかのように強い口調で言った。でも、怒ってはいない。少し涙目だけどね。流石私の相棒だけあって我慢強い。

「宇佐見さんっ!!」

「はーい……」


 〜少女説教されるのを聞き中〜


「さてと!次は何処へいきますか?」

「切り替え……早いなぁ……」

 蓮子は項垂れて反省していたわ。反省しないよりまだましよ。よかったわ。

「んー……何処にする?蓮子何かある?」

「んー、鏡とかは?」

「鏡……?」

「ほら、鏡の中を通ったら異世界に来たっていうのあるじゃん」

 よく思い付くわねー。変な無駄知識を取り入れすぎよ、蓮子。

「なるほど……!では、早速行きましょうよ!鏡の国へ!」

 私はやる気満々なエニーと、ようやく立ち直った蓮子に引っ張られながらも、鏡の国を探すために鏡をまず探したわ。



丁度切り良く終わりましたよっ!


そして、久々の説教ですw

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