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秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第六章 幻想未現過 ~ Space-Time Ghost Medium
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第八八話 流星群を見たかっただけなのに

 そう、私は歩いた。すぐに着く筈の森の広場に向かって歩き続けたんだ。何で歩く? そう、天秤座流星群を見るためだよ。

 真っ暗だけでも不安でいっぱいなのに、一人だけな事と、広場に着かない事が、私をもっと不安でいっぱいにさせる。

 本当にこの森であってただろうか。もう通り過ぎる筈の森はまだ続いていた。しかも、なんだか木が古くなっていくような……怖くなって目線を下に向けた。空の星は見えなくなった。

「あー、いたいた。探すの大変だったんだからー」

 この声を聞いて、震えていた手が余計に震えた。足も止まった。知らない。知らない声だ。なのに、知ってるかのように言ってきた。

 違う、きっと違うんだ。別の人に向かって言ったんだ。でも、予想は外れた。声を発した人はこっちに向かってきたのだ。私は目線をもっと下に向けた。もう、黒い地面しか見えない。

「やっと見つけたよ」

 いつの間にか私の前に立った人は優しく話しかけたつもりなんだろうけど、私にとってはとても怖く感じた。その証拠に体ががくがくしている。

「ここは君みたいな人間が来ちゃいけない所だよ。さぁ、戻りなさい」

「で、でも私、流れ星が見たくて……お願いです。広い所に行かせてください!」

 私は怖かったけど、勇気をどん底まで振り絞って言った。

 こんな人に会うという事は、きっとここはパラレルワールドなんだ。そして、今目の前にいる人はここの事が分かる筈。

「困ったなー。じゃ、君に流星群を見せる変わりに、これをあげる事と……元の場所に戻してあげるよ」

「いらない。欲しくない……」

 そうか、ただの不審者か。絶対に言う事聞かない。

「あー! 私は全然怪しくないからっ!」

 私の前にいる人は私の思った事が分かったみたいで、頭を抱えた。

「充分怪しい」

 きっぱり言ってやったよ。これでいなくなってほしかったけど、またこの人は頑固である。

「怪しくないってっ! あー……もうっ……」

 真下を向いていたけど、その人がしゃがんだ事が分かった。私はぐっと早見盤と方位磁針に握力を掛けた。

 その人は私の素の頭に何かを被せた。こっちを見ただろうけど、ずっと下を向き続けた。少し怖い。

 がたがた震えている私に、目まで隠されるほどの手が額に触れた。隠されてるのに目をぎゅっと瞑った。もしかしたら握力と同じくらいの力は出てたかもしれない。常識的にあり得ないけどね、常識に逆らうのが私だから。

「落ち着いて。君を帰すだけだから。後、あげたものはなくさないように、大事にしててね……」

 その後、何かを言った気がしたけど、何て言ったか分からなかった。

 私に触れた目の前の人の手に温かみを感じた。その後、一瞬頭がくらっとして目を開けると、森が見えた。空を見ても、街灯の明るみで何も見えなかった。

「帽子……?」

 あの人が私に被せたのってこれだったんだ。その帽子は黒い。白いリボンもある。

 私はそれを隠して帰った。親は心配したけど、帽子の事には何も言わなかった。

「もう……疲れた」

 私は床に星座早見盤と方位磁針を床に投げ捨て、ベッドに倒れ込んだ。ただ、天秤座流星群を見たかっただけなんだけど……もう、色々考えるのは止めよう。

 重い瞼が閉じて、そのまま夢の世界に引きずり込まれた。



九月末には終わらせたかった……。


因みに、ワン○ースじゃないよ。



次回をお楽しみに!

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