第七七話 門番さんとメイドさん
私達は魔理沙の箒に乗って湖まで来た。綺麗な湖だね。諏訪湖よりも綺麗かも。
そんな湖の畔には紅いお屋敷がある。メリーの言ってた通り、凄く紅いのに自然と周りの風景と溶け込んでいる。ここまで自然なのはあまりない。
魔理沙は紅いお屋敷の門の前に降りた。門の前には二人の人が居た。一方は怒ってて、一方は半泣きしている。
「よ! 咲夜んとこの門番はいつになったら門番という仕事に執着するのか?」
「魔理沙さんまで酷いですぅ……」
箒から降りて様子を見たら、一人はチャイナ服を着てて、一人はメイド服を着ている。メイド服って事はこのお屋敷って財閥のお嬢様が住んでいたりして?
「魔理沙?私の知ったもんじゃないわ。それで、何の用かしら? パチュリー様の本を盗みに来たのなら━━」
「今日は違うな。後、盗んでいるんじゃなくて借りてるだけだぜ」
本を盗む? もしかして魔理沙って盗人? お尋ね者? どれも同じ意味だけどね。
っていうか、いいの? 盗んじゃって。いや、よくないよ。
「では、借りた本はいつ返すのですか?」
「死ぬまで返さないつもりだぜ」
「ちょっと魔理沙!?」
メリーがいきなり驚いた声で魔理沙を見た。私以外の皆が肩を上げた。そしてきょとん顔でメリーを見た。
「えっと? あ、貴女は……」
「あ……」
「やっぱり二人は会った事あったんだね! 夢は本当だったんだ!」
二人はまだ見つめ合っていた。まだ現実がはっきりしていないみたい。
「……会ったのはもう随分前の事ですわ。なのに何故?」
メリーがこの話を私にしてきたのは約一年前。でも、どうやら、メイドさんにとっては数年前の事だったらしい。メリーはあの時から時空を移動していたんだ。私はまだメリーの事を知れてないみたいだね……例え、メリーも知らなかった事だとしても、知れていなかったのは事実。もっと頑張らなきゃ。
「何故って言われてもね……私にも分からないわ」
「でもっ!! ……中で話しましょうか」
「そっちの方が助かるぜ。寒いしな」
「美鈴は後できっちり縛るわよ」
メイドさんはチャイナ服の人に向かって言ったから、彼女の名前が分かったよ。美鈴か。中国人っぽいね
「咲夜さぁん……」
メイドさんの方は咲夜って言うのかな?もう他の人がいないからそうだろうね。
「さ、行くわよ」
咲夜が少し開いていた大きな門を、人が余裕で入れるくらいに開いて中に入っていった。
魔理沙も私も門の先へと行っていたけど、メリーは美鈴の前で何か話している。
「メリー? まだ?」
「今行くわ!」
メリーは美鈴に一礼して門を潜った。メリーは見てなかったけど、美鈴は門を潜ったメリーに向かって一礼をした。
待っていた私達に追い付いたメリーは一言謝って先に進む皆についていった。
「あの人に何て言ったの?」
私は内容が気になったから隣で咲夜についていってるメリーに尋ねた。
「特に大した事言ってないわよ。ただ、頑張ってくださいって言っただけよ」
「あの人には会ってなかったの?」
「いいえ、会ってるわ」
「へー……」
それから私達は黙りながら咲夜の後に続いた。何処に行くのかな?
それにしても、立派だな。これだけ大きいと、お嬢様も相当なんだろうね。
私はこの紅いお屋敷のお嬢様の全体像を予想しながらも、今何処かに向かっているメイドさんについていった。




