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秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第六章 幻想未現過 ~ Space-Time Ghost Medium
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第七五話 寺子屋の教授さん

 私達は幻想郷の人里の中にある寺子屋の入口から中に入った。

「邪魔するわよー」

「そんなふうに言うんだ……お邪魔します……」

 さっき蓮子に時間を聞いたら、もう九時を上回っていたわね。しかも、今は肌寒い秋。外は夏よりも暗いわ。そして、寺子屋の中も同じくらい暗かった。でも、真夜中って言うにはまだまだの暗さね。

「やっぱりいないわね。奥に行きましょうか」

 霊夢は暗い中、綺麗に揃えて並べられていた机と机の通りを抜けていく。

「その寺子屋の先生っていつもはどんな感じなの?」

「少し怖いんだ。でも優しいんだ!」

「頭突きしてくるわね、あいつは」

 蓮子はきっと、ルーミアに聞いたんだと思うけど、一斉に二つの返事が聞こえた。声の高さが違うから聞き取れたけどね。

 ''けいね''って先生は怖いみたいね。妖獣でもあるから気を付けなきゃいけないわね。ってルーミア、矛盾してるわ。言いたい事は分かるけど。

「さーて、ここかしらね? けーね? 居る?」

 霊夢は寺子屋の奥の隅にある木の板で造られた扉をノックしながら聞いた。暗くて響きやすい夜で、寺子屋の中が響く。足元は黄色く照らされていたわ。

 すると、扉の向こう側から声が聞こえた。

「こんな夜になんだー。よいこは寝る時間だぞ……ぐっ」

 扉の向こう側から聞こえた声はとても弱々しくて切れそうな声だったわ。この声の人が寺子屋の先生?

「私は大人よ。そう言うあんたはよいこなのかしら?」

「私は、大人だ……って、霊夢か……入りなよ」

 中に居る人は、霊夢と同じ言い訳を言ったわ。中に居る人はよいこじゃないから、漏れた光は消えない。

「あと三人いるけど失礼するわ」

 霊夢は光が漏れている扉を、夜中とも気にせず勢いよく開けた。

 入ると真正面に本がびっしりの本棚があった。でも、真正面を見ても視界には、肝心の''けいね''って人が見つからないから辺りを見渡したらそれっぽい人が作業机で何やら書いていた。

「……扉は静かに開けろ。それで、夜中に何の用だ?霊夢。ってそっちの人達は?」

 さっきの声の人がまた弱々しく聞いた。

「あー、こっちは外の世界から来た、マエリベリー・ハーンと宇佐見蓮子よ」

「私もいるのだ!」

 私の名前、ちゃんと言えてるわね。もしかして言えないのって蓮子だけだったりしてね。

「外の世界から? 何で帰さないのか? って何でルーミアがいるんだ」

「私がこの人達を帰さないのも、ルーミアがついてきてるのも、色々と事情があるのよ。あんた、最近調子が悪いみたいね」

「その通りだが? ぐぅっ! ……はぁはぁ……すまない、続けてくれ」

 弱々しく聞いた人は、見た目も弱々しかった。手を胸に押さえつけて苦しそうだわ。

「あ、いや……その前に、貴女は誰?」

 ルーミアをまだ乗せている蓮子が弱々しい人に尋ねた。

「ああ、すまない。私は上白沢慧音。ここの先生をやってる、歴史を食う妖獣さ……」

「あ、すみません。無理させちゃって……」

 っていう事は、霊夢が説明すると思ってたのね。まぁ、この人本当に気分が悪そうだったからね。

 でも、歴史を食べるってどういう事?もしかしてそのせいで気分が悪いのかしら?

「いや、大丈夫だ。初めましての人には自己紹介はちゃんとしないとな。それで、事情とは?」

「今、異変が起きているのよ。あんたの調子が悪いのはきっとその異変のせいなのよ」

 霊夢がいつもの真面目顔で慧音さんを睨み付ける。怖い人なんだからあんまりやらない方が……。

 だけど慧音さんは気にしていない感じだった

「その根拠はなんだ?」

「この人達が時空が歪んでるって言ったのよ」

「時空が……何故そんな事を知っているのだ?」

 慧音さんは霊夢に向けていた体を、霊夢の後ろにいた私達に向けた。視線もよ。

「時空に居た未来の人が……そう、言ったから……」

「未来の人……時空にはどう行ったのか?」

 まだ近夏さんにしか言っていない事を聞かれた。未だに半信半疑なのね。

「それには、まず私達の能力から言わないといけないから……かくかくしかじか」

 ''かくかくしかじか''の間に今までの事を全部話したわ。''かくかくしかじか''はいつまで出てくるかしらね?

「なるほど、それでか……すまない。その時空の住民とやらは私は知らん」

「ま、そうでしょうね」

 残念だったわね、蓮子。まだ会えなくて。

 蓮子の顔が少し歪んだわ。

「しかし、分かり辛い異変だな。時空が歪んでるっていう事は未来が変わったり過去が変わったり、時間が勝手に止まったりする事だからな……普通の人には、まず分からない異変だ」

「確かにね。ただ、妙に感じるだけかもね」

 本当に厄介な異変だと、今の言葉で改めて思ったわ。歴史が書き換えられているのにそれに気付かないなんて。

「あ……もう休ませてくれ。体に限界を感じる。それと……お前達」

 私達に向けてだわ。

「な、何?」

「今度頼み事をするかもしれないからな。それだけだ。ルーミアは毎朝早くここに来てくれ」

「何で?」

「伝達係さ」

「でーんーたーつー? そーなのかー」

 頼み事って何かしら? 何となく予想がついたわ。当たったらちょっと嫌ね。

「すまないな、力になれなくて」

「いや、いいのよ。分かり辛い異変だし、仕方ないわ。じゃ、また」

「またな」

 私達は電気の消えた部屋を出て寺子屋の出口に向かったわ。と言っても、入口と同じ扉だけど。

「今日は私の神社に来なさい。夜中は妖怪が活発だから」

 泊まらせてくれるって事ね。

「ありがとう、霊夢」

「あんた達が食われたりしたら困るから言ってるだけよ」

 私達は寺子屋の扉を開けた。

「私はもう帰るー。また会おうね! れんこ! マエリベリー! れーむ!」

 私達の名前はさっきの霊夢の説明のところで言ったからね。それで覚えたのね。

 蓮子の頭から離れたルーミアは夜中を飛んで帰った。

「こっから歩きね……あんた達、飛べるの?」

 私は蓮子の方を横目で見始めた。その行為はすぐにばれたわ。

「飛べるのね。ならさっさと行くわよ!」

「って、霊夢飛べるの?」

「まぁ、飛べるわよ」

「そ、そうなんだ……」

「あんたもあの能力持てすれば、簡単なんじゃないの?」

「良ければの、話だけどね。必ず出来るとは限らないよ」

 蓮子はそう言いつつも、飛んでみようとしたみたいだけど、体が浮かないわ。

「なんか……出来ない」

「あー、残念ね。仕方ないわね、歩くわよ」

「ごめん……」

「その''秘力''ってのは気紛れなんでしょ。仕方がないわ」

 私達は歩いて、霊夢の住まう博麗神社へと向かった。

 そういえば霊夢、いつの間にか''貴女''から''あんた''に変わっているわね。打ち解けたのかしら?まぁ、話しにくかったし、よかったわ。



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