第七四話 空から少女さん
「境界を見る目と時間と位置を見る目、ね……」
私達はここ、幻想郷に来れた理由を能力の事から話していった。
「それに合わせて、蓮子には''秘力''があるわ」
「秘力? 何それ」
「秘めた力。何で出来たかは知らないけどね」
「ふーん……で、その秘力は?」
私は霊夢に秘力の効果を言った。何で読者には効果を言わないか? 口止めされているんだよ。うぷぬしに。
「なるほどね……見てみたいわね」
「今、丁度出してるよ。その証拠にこれ」
「あ、そうなの……確かにね」
私は自分の深緋の瞳に指差した。霊夢はそれをまじまじ見つめる。
「じゃ、試しにはい」
「え、何? 何をしろって?」
霊夢は私にカードを渡してきた。それには綺麗な字で''霊符『夢想封印』''と書いてあった。
「それはスペルカード。スペルカードルールで使う……まぁ、必殺技みたいなものよ」
スペルカード? スペルカードルール? また変な単語が出てきた。
それいえば、ちょっと違うけど、似たようなもの結縁も持っていたね。幻想郷に行った事があるのかな?
私は霊夢に手渡されたスペルカードに書いてある''霊符『夢想封印』''の字を目で何回も追った。
「貴女なら出来るんじゃないかとも思うけど。あ、それと、頑張れば貴女も出来ると思うわよ。力強いし。はい試し」
最初は私に話し、後の言葉はメリーに向かっての言葉だった。
霊夢はまた別のスペルカードをメリーに渡した。それには、また綺麗な字で''夢符『封魔陣』''と書いてあった。
私もメリーも出来るかどうか迷った。よく分からないし、初めてやるし、いきなりだし……私は躊躇いながらもする事にした。
「ん……」
霊夢が真剣な眼差しで私を見てくる。でも、もうやるって決めたんだ。やらなきゃ。結縁は確か、スペルって言ってから言っていたね。よし。
「ス、スペル! 霊符『夢想封印』!!」
叫んだだけ叫んだけど何も起こらなかった。恥ずかし。少しだけ、幻想郷に声が響いた気がする。
霊夢は失敗したと手を額に当てて溜め息をついた。いや、そっちが溜め息しなくてもいいのに。
メリーの方は私よりも小さい声で言ったけど、失敗し顔を赤くした。
「駄目か。使えると色々便利だけどね」
「どんな事に使うの?」
「例えば妖怪退治。ここでは妖怪は退治され、人間は退治しなきゃいけないからね」
そうなんだ。てっきり妖怪達と仲良く暮らしてるかと思った。ほら、さっきみたいに。
「じゃあ、何で近夏の事は退治しなかったのですか?」
「もう退治したわ。後、退治する妖怪っていうのは悪事を仕出かした奴とかだから」
奴とかっていうのが凄く気になる。まさか関係ない妖怪まで蹴散らしていたり。大変だね。
「なるほどね」
すると、何処からか声がしてきた。
「れーーーむぅぅとあの時のだぁぁぁぁぁ!!」
空から女の子が。
女の子はどんどんこっちに向かってくる。
「うぅぅぅぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! むぅ!!」
「ぐぁっ! って、ルーミア? あの時のルーミア?」
空から落ちてきたのは、あの諏訪湖の黒濃霧を引き起こしたルーミアだった。ルーミアは私の真正面にいたのでそのまま突撃してきた。
「知ってんの?」
「うん。こっちの世界で色々あってね」
「ふーん」
霊夢って本当に何事にも興味がなさそうだね。私達とは真逆な性格だね。
突撃してきたルーミアは私の帽子の上に顔を乗せた。浮いているのか、凄く軽い。
「れーむ達は何処に行くのか?」
「寺子屋よ」
「けーね先生、今ちょーしが悪いから行かない方がいいよ」
寺子屋の先生の名前は''けいね''って言うみたいだね。どういう人だかは知らないけど。
「異変は既に起こっているって事ね。行くわよ」
「というか、何で寺子屋に行くの? 時空の歪みと何か関係があるの?」
さっきからずっと気になっていた事をメリーが言った。ま、当たり前だね。
「関係があるかないかって言ったらないわね。まぁ、歴史を知り尽くしてるからね、今から会いに行く妖獣は」
「え、妖獣? 妖獣が……先生?」
「ええ。テストで九点しか取れない馬鹿を中心に教えていってるわ」
「その妖獣の事を知ってるって事は、貴女、寺子屋の生徒なの?」
確かにね。寺子屋の先生の状態を言ってたもんね。
私の上から声がした。
「そうだよ。けーね先生、ちょーしが悪いから、きょーの授業とちゅーで止めたんだ。それで、お散歩してたられーむ達に会ったの。って異変って何?今やってるのか?」
「あいつがそういう状態だからね。確信はしてるわ」
けいねっていう妖獣先生が気分悪い事と時空が歪んでる事って何か関係するのかな?
「とにかく、今の時点で異変が起こっているっぽいわ。行きましょう」
「そうなのかー」
「うん」
さて、時空の住民って人に早く会いたいな。それには''けいね''って人……いや、妖獣に会いに行かなきゃね。
私達は霊夢についていきながら近夏の居る夏愁庵を遠ざかっていった。
暗い夜道で月も星も見える中、妖獣の遠吠えが聞こえてくる……まさかね。
極「慧音さんそろそろ出番ですよー」
慧「そうか、ぐっ……」
極「大丈夫ですか?慧音さん」
慧「大丈夫……じゃないな」
極「もう少しの辛抱です。頑張ってください」
慧「お、おう……」
たまにこういうのをやっていきます。




