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秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第六章 幻想未現過 ~ Space-Time Ghost Medium
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第七一話 幻想の秘封倶楽部さん

「蓮子ー! まだなのー!」

 時間は既に八時半を上回っているわ。いつまで探しているつもりなのかしら?



 ━━━━



 二十分前。

 エニーを退けた秘封倶楽部は博麗神社に既に着いていた。

 今って九月の中旬だけど月は下弦なのよね。だから、まだ月は出ていないの。でも今は関係ないわ。ただ写真の位置に行けばいいだけよ。

 だけど、蓮子は厳しい顔で唸っていたわ。

「大体このら辺なんだけど、シビアだねー……」

「どういう事よ」

「言葉のまんまだよ。その位置ぴったりにいなきゃいけないっていう事」

「本当にシビアね。頑張って」

「うん」

 蓮子は、右に行けば違う、左に行けば違う、上に行っても下に行っても違う違うと呟いて移動していったわ。たまに空の星を見上げて八時十一分四十三秒って言ってる。

 私はそんな蓮子をただ見てるだけだった。蓮子の足下を見てね。

 蓮子は『客観的に見て明確な真実が存在する』って言ってるからね。考え方が前時代的だけど。

「んー……違うなぁ」

 蓮子みたいな()がない私が時刻を知るためには左腕につけた腕時計が頼りだった。

 今は八時三十三分八秒。

「蓮子ー! まだなのー!」

「んー……分かりそうで分からない!」

 蓮子はまだ上下左右動いては違うと言っていたわ。結構シビアみたいね。困ったものよね。何時までかかるのかしら?

 でもね、その直後よ。


 ━━かちっ


 何かのスイッチが押された感じの音が鳴ったわ。

「うん? ……あっ、ジャスト」

 蓮子の立っていた場所は丁度、博麗神社の鳥居のど真ん中だった。

 そして、私も蓮子もその場で固まっていたらね、蓮子の足下に大きな穴が開いたの!

 蓮子がそれに気付いたのは立っている感覚がなくなったと思った時だった。

「って……うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「蓮子!」

 私がそう叫んだ時には蓮子はもう見えなくなっていたわ。

 私は慌てて蓮子を落とした穴に急いだ。

「結構……深そうね。いやいや! 怖がってちゃ駄目よ。急がなきゃ!」

 私は穴の中に飛び込んだわ。殆どが本能なのよ。

 落ちると周りは真っ暗。蓮子の姿も見えないわ。

「蓮子ーーー!!」

 必死に叫んだわ。喉が潰れるくらい。

 そしたらね、声が聞こえたわ。

「メリー……」

 ちょっと小さかったけど、確かに蓮子の声だわ!

 私は体を細くして空気の抵抗を小さくしたわ。

 今時のフリーフォールより怖かったわ。だって頭を下にしているのよ?恐怖もその分大きくなるのよ。

 私は何の意味もないけど、手を伸ばしたわ。いや、意味はあったわ。蓮子に追い付いたのよ。

「蓮子!」

「メリー? くっ!」

 背中が上だった蓮子は体を上に向けたから、私の伸ばした手を掴む事が出来たわ。そして私は蓮子に手を引っ張られ、再び背中を上にした蓮子と同じ体勢にしたわ。

 でも、落ちるには変わりはないわ。私達は何処まで続くかも分からない暗闇をスピード落とさずどんどん落ちていく。

「蓮子! 落ちてくけど、どうするのよ!? このままいって地面が見え始めたらもうおしまいよ!」

「私に言われても知らないよ!」

 私はもう終わったと思ったわ。為す術がないわ。このまま落ちて地面に叩きつけられて……。

 あー! 何、恐ろしい事を考えているの? 私。助かる方法はないの!?

 暗闇を落ちていくと白い点が見え始めたわ。その白い点は落ちていくにつれ大きくなっていくわ。

「光?」

「そうっぽいね」

 あー、本当にないの!?

 そんな事を考えれば考えるほど白い点は大きくなる。考えなくても大きくなるわ。

 凄い勢いで落ちているから心臓が飛び出そうよ。なんたって、紐のないバンジージャンプみたいなものよ? そう思うのも当たり前じゃない。

 そもそも、バンジージャンプから紐を引くと、ただの飛び降り自殺じゃない。

 白い点はなくなっていたわ。だって暗闇から抜け出したんだもの。

 でもね、もう落ちていなかったの。でも見る限り、地面はもっと下にあるわ。つまり━━

「浮いて……る?」

 最も非常識な事が身に起こっているわ! 私達、重力に逆らっているわ! 私の口と蓮子の口が叫び声を上げたわ。だって……誰だってなるわよ。常識逆らうと。

 下は森があるわ。前を見ると遠くに高い山があるわ。

 印象的なのはそれくらいかしら?

 私は落ちてきたあの暗闇を見ようと上を見上げたわ。

「蓮子! ないわ……」

「何が?」

 辺りをずっと見渡していた蓮子は私の方に視線を向けたわ。そして、私が見上げているところを見て、蓮子も目線を上に向けた。

「あ、本当だ。ないね」

 あの暗闇は消えていたわ。私達はどうやって帰るのかしらね?

「って、いつまで浮いてるのよ。早く地に足を着けたいわ……あ」

 私は蓮子の()を見たわ。

「どうしたの?」

「赤いわね、()が」

「えっ、本当?」

 蓮子の()が深緋だわ。綺麗ね。

「まさか、浮いてるのも……かな?」

「そう、考えるしかないのかしらね?って、そうじゃなくて!」

「はいはい、地に足を着けたいんだよね。えー……」

 蓮子は下にある森が沢山ある地の方をきょろきょろ見渡したわ。きっと建物を見つけようとしているんだと思うわ。建物がある所に人があり、ってね。

 でも、蓮子が見つける前に見つけちゃったわ。

「蓮子、あそこ」

「あっ、本当だ! 早速行こう!」

 私達は一番最初に目につけた、小さく見えた建物へと向かったわ。



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