表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第五章 黒濃霧迷宮 〜 Wandering Dark Girl
73/148

第六八話 人食い妖怪が来た理由

「きょーは何処行くのかー?」

「今日は妖怪山の河童にいたずらするんっだー!」

「そーなのかー」

「チルノちゃん、危ないってぇ……」

「大丈夫大丈夫! 何と言ってもあたいは幻想郷一の最強だからね!」

 大自然の象徴である妖精が二匹。人を食べる妖怪が一匹。紅い屋敷が見える湖の近くで愉快な声が聞こえてくる。

 妖精の方は、一匹はチルノ、もう一匹は大妖精。妖怪の方はルーミアだった。

「じゃ、早速行こー!」

「あっチルノちゃん、待ってよー!」

「そーなのかー。って待って」



 ━━━━



「ルーミアァァァ? 何処ぉぉぉぉぉ?」

「ルーミアちゃーん!」

 人探しに全く興味ない妖精と、探すのに必死な妖精は行方不明の迷惑ルーミアを探していた。

 妖怪山は勿論、霧の湖、博麗神社、魔法の森、更には三途の川までも探した。

「ルーミアァァァァ?」

「ルーミアちゃん!! 何処に居るの!?」

 どんどん陽が暮れる。ルーミア、何処に居るのかな?



 ━━━━



 その頃ルーミアは妖精達の探していない、守矢神社の近くの湖に来ていた。

「あっ、夕陽だ。みーんな何処に行ったのか?」

 ルーミアも湖を中心に辺りを探した。だけど、既にその時に博麗神社に行っていた妖精は見つかる筈がない。

 陽も、視界から消えていく。

「夕陽が……隠れていく。皆帰ったのかな?」

 ルーミアは一人が普通だった。だから、皆いなくても平気だった。

 人食い妖怪は人間で恐れられる存在。誰も近づく人間はおらず、妖精達とも、たまにしか遊ばない。だから平気だった。

「今日はここで寝よーっと!」

 ルーミアは湖の近くで大の字になり眠った。



 ━━━━



 鶏が鳴く時間帯。ルーミアはその前から起きていた。お腹が空いたのだ。

「うー……人肉人肉ぅ……」

 ルーミアは何かないかと辺りを見渡し、湖の中を覗いた。水がゆらゆら揺れる。

「水の中に人肉があるわけないよねー……お腹空いたぁ……」

 しかし、ルーミアは湖の底に穴が見え、その穴から光が差し込んでいる。

「あそこに人肉あるのかっ!! 絶対行くっ!!」

 ルーミアは飛び込んだ。きっと人肉があるであろう、湖の中の穴へと。



 ━━━━



「な・る・ほ・どっねー。だから続けるんだ」

「そーなのだ」

 ルーミアって子はそう言いつつも反省の顔を浮かべた。自分のしてる事が分かっているみたいだね。

「あー……折角いいネタだと思っていたのですが……妖怪の仕業じゃ書けませんね」

「ぐう……」

 ルーミアは意味が分からないのか、項垂れた。

 そのまま沈黙が流れるわけにはいかないから、私は微妙な空気を変えるため、話を切り替えた。

「とにかく! もうここに来ないで? 来るにしても、人、食べないでほしいよ」

「ううん……」

 人食い妖怪はさっきよりも項垂れて、より反省の顔を浮かべた。少し涙目になっている気がする。

「蓮子……流石に''来ないで''はないでしょ」

「だから''来るにしても、人、食べないで''って言ったんじゃん」

「まぁ、そうだけど……言い方、変えたらどうなのよ」

「今更言っても、ねー」

「ぐぅっ!! 腹立つわ」

 これもいちゃいちゃの内なのか。姉妹みたいに仲がいいっていうのはこういう事なのかな?

「取り敢えず、まぁ……お別れしますか」

 エニーが詰まった話に終止符を打ってくれたおかげで、ルーミアは湖の中に飛び込む事が出来た。

 私達はルーミアが潜っていった穴の中を覗いた。確かに光が差し込んでいる。

「流石にこの深さは無理だね……他の入口を探そうか!」

「あの約束もあるから、早めに見つけないとね」

「あ、それもあるね」

「忘れてると思ってたわ」

 図星を当てられた。いつもの事だからすぐに分かってしまった。流石一年半相棒やってるだけあるね。

「約束って何ですか?」

 そう、エニーは知る筈がないよね。説明しなきゃ。

「あー、実はねかくかくしかじかで━━」

 長くなりそうな説明を、要約を引っ張り出して分かりやすく説明した。研究者なら、このくらい簡単だよ。っていうか、出来なきゃ駄目だね。

 私達はリニアに乗って、今までの活動を順を追ってエニーに聞かせた。

「ハーンさんも大変ですね……いつも待たされて」

 聞いた感想がそれかい。もっとましな感想はないのかな?



 ━━━━



「そういえば蓮子」

「何?」

 私のマイホームのマイリビングにて。

 ソファーに座って暇してた隣のメリーが話し掛けてきた。

「蓮子ってさ、月の石持ってたよね」

「うん。それが?」

 月の石っていうのは、前に宇宙旅行に行った時に拾った土産物の事。本当はなんだか取っちゃいけないものだったらしいけどね。勿論、本物だよ。

「その月の石、持ってたらいつでも今の位置が分かるんじゃないの?」

「あっ、そうかも」

 私は宇宙旅行で拾った産物が仕舞ってある引き出しの中から、月の石が入った袋を取り出した。

「もしかして気付かなかったの?」

「まぁ……あっ、メリーの言う通りだね」

 月の石が今立っている位置を教えてくれる。これで何処に居ても、月が出ない日でも、持ってさえいれば分かる。

「これからGPS少女って言わせてもらうわ」

「ちょ、それは……」

「でも事実じゃない」

「うぅっ!」

 一ついいものを手に入れる度に、メリーに気持ち悪がられる。仕方がないけど。

 いつになったら溜め息が止められるかな? メリー。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ