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秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第五章 黒濃霧迷宮 〜 Wandering Dark Girl
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第六七話 闇の姿

 朝、早すぎる諏訪湖。まだ陽が少ししか顔を出してないよ。風もなく蒸し暑い。死ぬぅ……。

 黒い霧は出てなくて、白い霧が出ている。でも、もうそろそろかな?

「さぁて……本番だねぇ……」

 いつもより低い声で驚かせようとした。案の定、二人の腕には鳥肌が立った。

「蓮子怖いわ」

「私もぞくっときましたよ」

「さ、そんな事より……そろそろでしょ?」

 自分で蒔いた種は放置して、次の話に移した。

「ええ。ボートは予め用意しているので、いつでも大丈夫ですよ」

「いいの? 行方不明になるくらいなのよ?」

「ボートは大丈夫と思いますよ。ただ、私達の命の保証は大丈夫じゃないですがね……」

「何それ怖い」

 エニーも意外と黒い事考えるなぁ。少しびびつちゃったよ。

 だけど、私はそんなエニーの方に振り返らずに、じっと湖を見ていた。

「……出た」

 目線の先には、昨日見たものがあった。今はそれを睨んでいる。

「よしっ、行こう! 私達がこれの原因を突き止めるんだ!」

「ええ、そうね」

「……? は、はい!」

 その時の私の()が深緋に染まっていたのか、何も知らないエニーは顔をしかめた。

 メリーはそれに気付いてエニーの方に近寄った。

「そういえばまだ言ってなかったわね。蓮子はね━━」

「そうなんですか!?」

 メリーが私の事を言ったのはこの声で分かったよ。そして私の()が赤い事もね。

「わざわざ説明ご苦労様」

「あらばれちゃった?」

「別にひそひそ説明しなくてもいいのに……取り合えず乗ろっか」

 どうせばれる事なんだからいいのにね。気を遣ってくれてるつもりなのかな?変な気遣い。

「はいはい」

 私達は用意されたボートに乗って黒い闇に包まれた霧の中に入った。

「わっ、暗いわ。大丈夫なの? 蓮子……って、何処蓮子」

「そんなに暗い?」

「宇佐見さんは見えるのですか? 今私が持っているオールすら見えませんよ?」

「えっ?」

 私は船頭で内側座っていて、メリーとエニーは向かい側に居る。メリー達は分かっているだろうけど、暗すぎて姿が見えないみたい。

「まさか秘力のせいなの?」

「まさか。ここまで?」

「私もないと思うけどね……」

 はっきり見える二人は少し考え込んだ顔をしていた。私って不思議だなー。

 エニーはオールで漕いで船を水に滑らせる。

「そういえば、狐火が出ていないですね。もしかしたら……本当に食べられているのですかね」

 少し鳥肌が立った。私達、食べられたりしないといいんだけど。

 そう言いながらも先に進む。戻ったりしない。

 静かな湖をどんどん進んでいくと、誰かの声が響いた。

「やっとみーつけた! きょーのあさごはんー!」

 私の視界の先にはっきり見えた。その姿がね。

 姿はこっちに向かってくる。

「だ、誰っ!? み、見えないんだけど!」

 周りすら見えないメリー達はおどおどしている。

「いただきまーす!」

 こっちに向かっていた姿はスピードを上げていく。

「いただくってまさかですかっ!? ちょっと! 食べられて死ぬのは嫌ですよぉぉ!?」

 叫んではいるけど体は硬直していた。ここで暴れても意味がないからね。

 だけど叫んでも、姿は近くなる。このままだと……!

「エニー、オール貸してっ!」

「わっ! 何ですか!?」

 私はエニーの持っていたオールを掴み取って姿に向かって思いっきり振った。

「うりゃーーー!」

「えっっ! うぃゃーーーーーー!!??」



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