第六五話 諏訪湖の黒い霧
「宇佐見さーん、私ちょっとお話をしたいのですが……」
私とエニーは秋の風が流れる部室で椅子に座っていた。
「何ー?」
また宇佐見さん、か。皆言うんだよね。せめて蓮子さんにしてほしいな。
「……ハーンさんは?」
メリーでいいのにぃ。
「講義中だよ。それで話って?」
「いえ、揃ってから話した方がいい事ですから」
「そうなんだ」
揃ってから話すって事は重大な事言うんだなぁ! 楽しみっ。
私は講義が終わるチャイムが鳴るまで待っていた。
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「それでそれで! 話って何?」
また蓮子ったらハイテンションね。どうしてこうなったのかしら?
「はいはい、話しますから」
呆れたエニーは一息ついて話始めた。
「二人は長野県にある守矢神社と諏訪湖三/四の消滅事件の事を知ってますか?」
「知ってるわよ。有名だもの」
「そのくらい知ってなきゃねー」
結構昔の事件だけど、急に消えたっていう大規模な事件。警察も探偵も真相が掴めないまま手に終えず、取り止めにされたのよ。
「よかったです、話が進みます。実は、最近一/四の諏訪湖で奇妙な事が起こってるんですよ」
「奇妙な事? どんな事?」
謎の場所にまた謎が生まれると大変になってくるなー。また私達の出番になるのね。
「毎朝、黒い霧が出て狐火が出るんです。さらにその霧の中に入った人は霧が消えた後、またその人も一緒に消えるんですよ」
「うわー……また大規模な」
黒い霧、狐火、消える人。蓮子なら、こんな不思議現象を聞くとわくわくするんじゃない?
「どうですかね? 今回の活動にいいじゃないかって思いまして言ってみましたが」
「行こう! メリー! エニー!」
「蓮子なら言うと思ってたわ。いいわ、行きましょうか」
「勿論、私だって行くつもりで言ったんですから! 行きますよー!」
話が揃ったわ。蓮子は絶対に言うわね。
「よしっ決まりだね! 講義をさぼって行っちゃおう!」
ほーら、言ったわ。蓮子、成績優秀だからねー。まぁ、私もそれなりに優秀だけどね。エニーはどうかしら?
「いいですね!」
「エニー、大丈夫なの?」
「大丈夫ですよー! 私、これでもいいんで」
エニーは人差し指を頭に指した。
これっていうのは頭脳の事ね。多分。
「じゃあ、いつ行こうか?」
「私はね━━」
不思議現象を解決するために、今日も私達は結界暴きに向かう。新しい人も連れてね。
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「はぁ……今日もお掃除終わりっ。諏訪子様ー、神奈子様ー。お茶出しますよー」
守矢神社では掃除を終えた東風谷早苗が二人の神様にお茶の準備をしていた。
「ありがとねー、早苗」
返事をしたのは、土着神の洩矢諏訪子。その隣には八坂神奈子がいた。
「今頃、外の世界はどうなってるのかなぁ?」
「栄えてるよ、多分」
「何の話ですか?」
早苗がトレイに湯飲みを三つ置いて持ってきていた。
「いや、意味のない話だから」
「そうですか。そういえば、ここの諏訪湖ってなんで三/四しかないのでしたっけ?」
「ただの重量オーバーだね」
諏訪子と神奈子はあははと笑う。早苗もつられて笑った。
「戻る気はないですか?」
「早苗は戻りたいの?」
「ええ……まぁ、ちょっとだけ」
「なら行く?」
「いいえ! やっぱりいいです!」
矛盾をした事を言った早苗は顔を赤くした。それを見た二人はまた笑う。
愉快な守矢のお茶の時間はゆっくり過ぎていった。
最後の場面は何故諏訪湖が三/四しかない事についてを書くためなんで、ストーリーにはあまり関係ありません。




