表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第五章 黒濃霧迷宮 〜 Wandering Dark Girl
69/148

第六四話 風の噂

 私達は中庭の真ん中。隅の方には少し人が居る程度。ここで何言ったって大丈夫ね。

「ねぇ、エニーって呼んでもいい?」

 また蓮子が失礼な事を! 全く、本当に自由人なのね。

「別にいいですよ。そういえばお二人の名前を聞いてませんでした」

 名前、いいんだ……私の時は嫌だったけど。

 そっか、私達の事何にも知らないんだったわね。

「あーそうだったね。私は宇佐見蓮子。物理学専攻。『月を見て今いる場所が分かり、星の光を見て今の時間が分かる()』を持っているんだ!」

「星の光で時間、月で位置……ですか。そちらは?」

 エニーは蓮子を見ていたけど、私の方に体を向かせた。

「私はマエリベリー・ハーンよ。蓮子にはメリーって呼ばれてるわ。専攻は相対性精神学。因みに蓮子と同じような()を持っているのよ」

「どんな目ですか?」

 また字が違うぅ……。目は''目''じゃなくて''瞳''だって。

 ちょっといらっとくるわね。何故かしら? 顔が近いからかしらね。

「けっ『結界の境目を見る()』よ」

「結界の……境目!? 一番見てはいけないものじゃないですか!?」

「近い近い近い。一回離そうね」

「あっ、また私ったら。同じ過ちを……」

 近かった顔が離れると太陽の光が私を照らす。

 蓮子の方をちらっと見ると、空をじっと見ている。今何時かしら?

「すぅ、はぁ……さて。何故二人共そんな目を持っているのですか?」

 だから……やっぱりいいわ。いちいち言ってるときりがないわ。後できっちり言っとかなくちゃ!

「生まれつき……? ね、蓮子」

「え、あっ、えっ? な、何?」

 集中してるとすぐ驚くんだから。前にも何回もあったわね。

 吃驚している蓮子は少し慌てる。一人、道に躓いている蓮子を想像してると少し苦笑いした。でも、私はそんな蓮子を笑いながらも助けるわ。

「もう……蓮子のその()はいつからのかって」

「あー、んー……いつだっけね? 分からないから生まれつきなのかな?」

「随分と曖昧ね。何か隠してるの?」

「別に……そんな事ないけど?」

「そう」

 意外に隠してたりしてね。私に黙って……狡いわね。

 考えても分からない蓮子の秘封は、いつまで経っても分からないまんまだったわ。

「それで……エニー、本題本題」

「あー! すいません。つい訊ねるのが私の癖でしてね」

 新聞部だものね。そういうのも分かる気がするわ。

 そういえば相棒、蓮子はどうやって情報を仕入れるのかしら? また蓮子の秘封を見つけたわ。また考えなきゃ。

「丁度いい頃ですね……風が言ってる……」

 エニーは心地よさそうに目を瞑り、耳を澄ました。私も同じ事をやってみるけど、風が体を通り抜ける音しか聞こえないわ。

 目を開いて蓮子を見ると、蓮子も同じ事をしていた。目が開いた時に透かさずアイコンタクトをするけど、蓮子は首を横に振った。

 一体エニーには何が聞こえるのかしら?風が人のように話すのかしら?

「んー……校内のカフェで抜き打ちサービスを明日にて行うそうですよ?」

 目を開けてこっちを見たエニーは、至って普通の顔で言った。エニーは大学二年生って言ってたわね。二年もやっているから普通になってくるか。

「そ、そうなの!? い、いつ? 何のサービス?」

 あそこのパフェが大好きな蓮子。透かさず訊ねるわ。

「え、えっと……時間はお昼辺り。サービスは……一割引ですね」

「ほ、本当? 本当だよね?」

 大好きだからって言って追い詰めるのは駄目よ、蓮子。って言っても駄目か。

「ええ……まぁ、はい」

「本当? ありがとう!! やった!!」

 流石のエニーも蓮子の追い詰めには敵わないわね。ちょっと後退してたものね。

「メリー! エニーの能力凄いと思わない? 思わない?」

 うわっ、私まで絡まないでよ。苦手なのよ、ハイテンション蓮子は。

「え、ええ。そうね」

「よしっ! 気に入ったよ、エニー! 貴女は次から秘封倶楽部所属を許可する!この私がね」

「えっ、教授に所属願は━━」

「大丈夫!私達は非公式だから!」

 いや、そういう問題じゃないから。

 全部言い終わるまで聞いていたエニーの言葉も、ついに口が鋏まれた。蓮子のせいでね。

 取り合えずなんやかんやあったけど、エニーは秘封倶楽部に所属する事になったわ。勿論、所属願はちゃんと出したわよ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ