第六〇話 紫陽花 〜 白の寛容
竺紗ちゃんの私に対する愚痴が入っております。
「んっあー! あー今日よく寝たー」
ここは何処って? 伏見稲荷大社だよ。突然の場面切り替えごめんねー、うちのうぷぬしが……ぐはぁ! な、何でもないよ、何でもない。
私は家である本殿の廊下を歩いていた。外に出るためにだよ。
「ふぁー……あ、あぁ!?」
な、何で紫陽花が咲いてるの!? 頭、おかしいんじゃない? あっ、花に頭なんてなかった。
「え、ええ!? どうなってるの?」
夏に咲かないはずの花まで咲いていた。やっぱりおかしいじゃ……あっ。
「竺紗ー! ちょっといいかなー?」
「蓮子? マエリベリー? どーしたのー?」
こんな朝に……何を。
「あー……ここもか……」
駆け寄ってきた蓮子達は周りに咲きまくった花を見て溜め息をつけた。
「ここもかって何!!」
「実はね、色々あってかくかくしかじか……」
''かくかくしかじか''って……やっぱりうぷぬし、ぐぅ! な、何でもない!
「ふーん……それで……これとは何が関係あるのか?」
「それは……分からないよ」
「まぁいいや。賽の河原はね、積み石があるとこにあるよ」
「それは知ってるわよ。沢山あるから困って来たの!」
知ってたか……流石賢そうな格好をしてるだけあるね。参ったな……次のカードがない。
あっ、いや。あった。
「まぁまぁ、そう怒らないの。私、前……って言っても結構昔に佐比の河原に行って来て━━」
「賽の河原って何処のよっ!」
「そっちの河原じゃないんだけど……''賽''じゃなくて''佐比''だって」
「だから''賽''じゃない」
どうしたら分かってくれるんだ! うぷぬしぃぃぃ!!
そうか、書くんだ。書けばいいんだ。ケータイは何度か使った事あるからどうかなるはず。
「あーっもう! ちょっとケータイ貸して! 書くからっ」
「あ、うん」
阿吽? どうでもいいんだけどね。
私は蓮子の差し出した、ケータイとは違うものを渡された。世に言うあれか。スマートフォンってやつかな?
私はそれを受け取り、画面に映された平面のボタンをケータイと同じように押していく。
「は、早っ。どっかの女子高生……」
なんか引かれてる。どうか、参ったか。これこそ私の必殺技、ケータイならぬ、スマホの速打ちぃーー!!
「私の言う''さいの河原''はこっちの''佐比の河原''なの」
「そっちね……それで?」
やっと話が進む。よかったー、分かってくれて。
説明遅れたけど、佐比の河原はね鴨川と桂川の丁度合流するとこにあるんだ。賽の河原の由来地ってなってるけど、その説を語る人は少なくて知る人は少ない。
「そこの先端に奇妙な花があったんだよ。その花に触れたら変なとこに着いて━━」
「きっとそこだ! 竺紗ありがとう!」
「えっ、あ、えっ?」
「メリー行くよ!」
「えっ、ええ」
二人揃って走り、何処かに行った。おいおいおい……話の途中でしょうが。ま、多めに見てあげようか。
「あー……じゃーねー」
花が咲いてる事以外、退屈な日がまた始まった。
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「ここかー、あるねー……」
「彼岸花、ね……」
私、嫌いなのよ、彼岸花。前にも言ったかしら? 言ったわね。
「この花に触れると……彼岸?」
「彼岸と冥界ってどう違うんだろう?」
「んー……同意語でしょ?」
「だよねー。なら、行こうか!」
蓮子が離れ離れにならないようになんて思って、私の手をしっかり握ったわ。その握りの強さで蓮子の気持ちがよく伝わった。
「ええ」
私もその気持ちに応えて蓮子の手をしっかり握った。
さぁ、行きましょう! 私達の知るはずない世界に! 覚悟はあるわ!
蓮子はそっと夏の彼岸花に触れた。
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「話の続きくらい聞いてほしかったなー」
見回りを終えて、本殿でごろごろしていた。古屋のとこは……今日は行かない。行けば意味不明な花達を見る事になるんだもん。そんな事言いながら見回り行ってるけどね。
「あの時は楽しかったなー。あの人達、まだ居るのかな?」
私は遠い目であの人達の事を思い出していた。愉快な人だったな。ジョーク、好きな人だったな。そして━━
「また、壮大なの起こしたなー。あの宣言通りじゃん」
ま、この事は秘封倶楽部に任せるか。やる気満々だったし。きっとどうにかなるし。
一度言わなかった事に躊躇い、また遠い目で秘封倶楽部の事を思い出した。
あの紫陽花、白かったねー。白い紫陽花の花言葉って寛容だっけ? 今日の私みたいな事だね。
紫陽花は皆さんのご存知の通り、アジサイです。花言葉も竺紗ちゃんが言ってた通り『寛容』です。
極楽「竺紗ぁ?何、小説内でブツブツ私の悪口言ってんのぉ?」
竺紗「き、気のせいだと思うんだけどなぁ(焦)」
極楽「お仕置きよっ!!亡符『極楽浄土』っ!!」
竺紗「何!?その、何処ぞの必殺技名は!って、あぁぁぁぁぁぁぁ!!




