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秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第三章 中国陰陽観光 ~ Profit Is Matchmaking
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第五二話 検証開始の合図は割り箸から

「へー……なんか微妙だね」

 私達は結縁の考える本質を聞いて、蓮子が少し唸ったわ。確かに微妙だけど辻褄は合ってるわ。

「まあ、私の推測だから本当だとは限らないからね。検証でもしましょうか?」

「メリー、いい?」

「別に構わないわ。私も見てみたいし」

 蓮子の赤い深緋に染まった()の中心を見て言った。蓮子もまた私の濃い紫、ほぼ黒に近い()を見てたと思うわ。

 不思議な不思議な()の見つめ合い。他人から見て、変な人って思われそう。校内だったら歓声や癇癪が起こりそうね。

「あー、いつまで見つめ合っているの? 早く始めよ」

「あっ、ごめんごめん! 早速やろうか!  ねっ、メリー」

「え、ええ」

 私は曖昧な返事をして、蓮子と結縁と一緒に立ち上がろうとしたわ。

「あー! ここでやるから、そのまま座ってて」

 結縁はそう言って後ろを向いたわ。何か探しているみたい。

「んーと、これでいいかな? よしっ」

 暫く後ろの物を漁ってまた前を向いた。

「これで検証してみるから、直感で引いて」

 結縁の手には二本に分けられた割り箸があった。割り箸の先が丁度手で隠されている。一本に当たりがあるのかしらね。直感で引けって言ってるのですもの。

「うん」

 蓮子はそれが分かるのか、(蓮子側)に向けられた割り箸に手を掛けた。私は残った(私側)の一本に手を掛けた。

「じゃあ、せーので引こうか。せーのっ!」

 蓮子の掛け声で一緒に引いた。そして手で隠されていた割り箸の先の部分を見たわ。何もないわ。蓮子の方を見ると割り箸の先には赤い印が付いていたわ。どうやら蓮子が当たりみたい。

「さて、第二ラウンドね」

 私達は引いた割り箸を結縁に返してもう一回したわ。



 ━━━━



 あれの繰り返しを十回したわ。結果、蓮子は当たり七回、はずれ三回。私は……分かるわよね。という事で検証されたって言って、帰ってもよかったんだけどね、結縁は━━

「今のはまぐれかもしれないわね……違うのでまた検証しましょうか」

「「は、はぁ……」」

 このまま泊まり込みは嫌だわ。早く終わってほしいわ。

 そもそも、曖昧な能力なんだから仕方がない事だと思うんだけどなー。

 私達はあの暗い部屋を出て、外に居た。結縁が一枚の五円を持ってきていた。

「それを使えばいいのに」

 結縁の腰にあるいくつかの五円を見ていた蓮子が言ったわ。どうせ答えは━━

「嫌。さっきも言ったけど、綺麗なんだから」

 言うと思ってたわ。前もそう言ったのですもの。

「さて、今から蓮子にはコイントスをしてもらいましょうか」

「えっ、コイントスでどうやって検証するの?」

「何回まで表を出し続ける事。簡単でしょ?」

「簡単ってぇ……確かに蓮子にしたら簡単かもしれないけど……」

 ここでちょっと躊躇っちゃった。よくある事よね。

「んー……じゃあやってみるよ? 表はどっち?」

 蓮子が結縁の五円を貰うために手を差し伸べた。''貰う''というより、''借りる''かしら?

「あ、はい。表は米の方だよ」

 結縁は蓮子の手の上に五円を乗せた。

 そういえば五円の表側、米が描かれている下にある何本もある線、何だか知ってる?あれは水なのよ。田んぼにある水。京都にはあんまりないのよね、田んぼ。でも、京都を出てみたら吃驚しちゃったわ。田んぼが沢山ありすぎて。

 それで穴の周りにある、あの凸凹は普通に歯車みたいよ。何で歯車かは忘れたわ。

 蓮子は五円を親指の上に乗せていたわ。これで後はその右手の親指で弾き上げるだけだわ。どうなるかしら?

「いくよ……それっ」

 蓮子が親指を弾くと、高い音と供に五円が上に上がったわ。回転していく五円は重力に逆らえずに下に落ちた。

 私達は落ちた五円の近くに寄った。

「表だね」

「本当だ」

 私達が顔を覗かせて陽の光が防がれたせいで米と水と歯車の描かれた五円が暗く見えた。一回目、成功だわ。

 蓮子はそれを拾って再び右手の親指の上に乗せた。



 ━━━━



 またあれを十回したわ。そろそろ蓮子も飽きてきたみたいで、途中で無口になっちゃったわ。蓮子が無口になるのは滅多にない事よ。つまりレアよ、レア。

「表……十回中、九回だわ。本当みたいね。検証終了っ!」

 結縁はそう言って、踵を上げて腕を伸ばして伸びをした。

 勝手に始めて勝手に続けようとして勝手に終わる。なんて自分勝手……。神は楽でいいわね。

「今は……五時四十分三秒。帰る?」

「そうね。あ、蓮子戻ってるわね」

 蓮子の()は元の焦げ茶に戻っていた。やっぱりこっちの方が馴染みがいいわ。日本人はこの色じゃなきゃね。

「本当に? なんか勝手に直ったね」

「本当ね」

 それから、つい可笑しくなっちゃって二人揃って笑ったわ。

 そこに結縁が水を差す。

「ねぇ、よかったら泊まらない? 貴女達が居なくなったら、私寂しいの。いいでしょ?」

 なんてまた自分勝手なんでしょう。自分の都合ばっかり。まぁ、それが自分勝手っていう言葉なんだけどね。

「んーんー……メリー、どうする?」

「……なら、もういいわよ。めんどくさい」

 仕方なく受け入れ。さっき言ったように、理由はめんどくさいからよ。

「よしっ、なら将棋やりましょ! 私大好きなの」

「渋っ。流石、古の神……」

「何か言った?」

 蓮子の小さな声が聞こえたのか、怖い口調で言ったわ。

「イイエ、ワタシハナニモイッテオリマセン」

「そう、ならやりましょ。最近は……やっぱり蓮子から!」

 私達はまた本殿に向かって、将棋をしたわ。結縁、強かったわー。

 その後は合成スイカとか食べて、シリアスな話をしたり、楽しい話をしたりしたわ。

 結縁、長生きだなって改めて思ったわ。



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