第四七話 夢旅行
台詞少なめで読みにくいかもしれませんが、神主に合わせてしまうのが、ダメうぷぬしです。
何であんな事をしようなんて言ったのかしら? 蓮子ったら、巌流島で''武蔵と小次郎ごっこ''をしようなんて言ったのよ。あんな小さい島でチャンバラはちょっと……。因みに小次郎をやらされたわ。
それでなんやかんやあって疲れたわ。そのせいで駅でぐったり寝ちゃったわ。
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あら、ここは何処かしら? 鉱山っぽいわね。
目の前には発掘途中みたいだけどほったらかしにされているわ。何の発掘かしら? 鉱山みたいだから鉄とかかしら?
私は近くに落ちてあった石を拾ったわ。赤みを帯びている石。蓮子なら知ってるかしら?
取り合えず洞窟の中に入ってみたわ。秋芳洞より凄く狭くて、砂埃も酷いわ。喉が痛くなりそうだわ。
岩肌がごつごつしてて歩きにくいわ。何処まで続くのかしら? まさかあの世の裁判所?私は白かしら? それとも黒? 黒だったらどうしましょ。蓮子には悪いわね。
どんどん進んでいく私。景色も変わってきている気がするようなしないような……どうでもいいけど、相変わらず長いわね。山、越しちゃったかもね。いつが出口かしら? それとも永遠?
お腹空いてきちやったわ。前にもこんな事があった気がするわ。いつの時だったかしら? っていうか、いつもお腹が空いているわ。取り合えず早く出たいわ。
なんて思ってたら本当に出ちゃったわ! でも、それは陽の光の世界じゃなかったわ。凄く広いお屋敷のど真ん中みたいなんだけど、またこれの出口が回りを見渡してもないのよ。
おどおどしてたらね、何処からか声が聞こえてくるのよ。''あなたは誰?''って。
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「メリー! メリーィ! 起きてよぉ!」
あら、大変。つい夢旅行をしちゃってたわ。
「んー? 何、蓮子?」
「んっもう! 何回起こしたか分かる?」
「んー、一回?」
「全然違うっ! 十回くらいは起こしたよ! って、もうリニア行っちゃったじゃん」
「えっ!? 本当? あらら……」
次に行く所って島根県だったのよね。あちゃー。やっちゃったわ。
「んー……まっ、私、他のを探してみる」
「ええ、行ってらっしゃい」
きっと私に気を遣っているのね。無理をさせたし、蓮子も私が夢に行ってるって思っているんだと思うわ。多分。
暫く色々考えながら待ってたら、蓮子が帰ってきたわ。
「メリー、もう鳥取県しか残ってないよ。どうする?」
「もうそこにしましょ。行き当たりばったりなんだから、自由に行きましょ?」
「そうだね! なら早速行こう!」
蓮子は鳥取行の切符を買って、リニアに乗ったわ。
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私は声が何処から聞こえてくるかきょろきょろ探してみたけど、何処にも居ないわ。そしたら、また聞こえてくるの。今度は''私は貴女の後ろよ''って。でも、後ろを振り向いたけど居ないの。
また声が聞こえたわ。''今度は前よ''って。その後に可愛い笑い声が聞こえたわ。''うふふ''ってね。可愛いわ。
それでね、前を向いたら声の持ち主がすぐ目の前に居たのよ! 吃驚したわ。
でも、声と同じくらい可愛かったわ。
その後、その子と一緒に遊んだわ。笑顔だったわ。何で私達の住む世界はこんなに冥んだろうって、改めて思ったわ。
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「━━っていう事があったのよ」
「へー。やっぱりいいな、メリーは」
陽が隠れてくる時間帯の機内。窓からは景色が速いスピードで通り過ぎてくわ。
「でも、夢よ。私にしか体験出来ない吉夢のような悪夢なのよ」
「だから私はその夢を現にしようとしているじやないか!」
「出来るのかしら?」
「きっと……いや、必ず出来るよ!」
頼もしいけど、ちょっと心配だわ。私にしか出来ない事っていうのもそうだけど、蓮子のどたばたが、ねー……取り合えず、頼ってみようかな?
「んー……そう言うなら頼るわ。頑張ってね」
投げ遣りに言っておいたわ。
「うん! じゃー頑張ってみるよ! メリーのためにっ!」
声、おっきいわ。あの子とは大違いね。
「あっ、そうそう。この石、何て言うの?」
「んー……これは赤間硯の原石でもある、赤間石かな? 頁岩の一種だよ」
「へー……」
よく知らない単語ね。詳しく聞きたいけど、蓮子の説明、長いのよ。後で調べてみよ。
「今度削って、硯でも作ろうかな?」
「出来るわけがないわ」
「そうだよね!」
私達は陽がゆっくり沈むのを待たずに笑い続けたわ。色々、楽しかったわね。




