第五話 ある意味騙される
……私、助かったの?
窓を見ると、さっき起きていた時より明るく見えていた。
体を起こしたとき、あのときの体が嘘のように軽く動いた。まるで背中に翼が付いたかのように。だけど、背中に翼なんてあるわけがなかった。
「うん? あれっ?」
目の前にいたはずの細手長手がいない。まさかの夢オチ?
それならそうとして、さっきから体に何か違和感があるのが感じる。特に腰辺り。ひとまず違和感がある部分に触れる。すると私の体に何か太いものがくっついている。気になって後ろを振り返ったら、少し暗くて見え辛いけど、あの真っ紅な腕があった。
「……えっ?」
「ドウシタノカ?」
「いや、どうしたもこうしたもないよ!何でくっついているのよ!」
「ケイヤクヲ シタンダゾ ソノ ショウコニ オマエガ イイト イッタ ヨコガミヲ イタダイタゾ」
「人の質問、聞いてた?」
「キイテイタゾ? ナゼワタシガ オマエノ、カラダニ ツイテ イルカダロウ?」
「分かっているなら教えてくれる?」
「……ケイヤクト イウモノワ キョウリョクスルト イウ イミデモ アルノダゾ」
「えっ? じゃあ……私、ある意味騙されたってこと?」
「マァ……ナ」
体が良くなったのは良いんだけど……こうなるって知ってたなら最初から言ってよ、と今更思う。どのみち契約すると思うけど。
でも、どうしよう。ここに居たらいずれかバレてしまう。バレたらどうなるだろうか。きっと生物学者に実験台にされるのだろう。そのことを私の細手長手に言った。細手長手は落ち着いて言った。
「ダイジョウブサ ヨウカイナドヲ シンジヌ モノニワ オマエノ スガタワ ケッシテ ダレニモ ミセナイ」
「いや、それもそれで困るんだけど……」
「ジャア ドウシロト?」
「うっ……」
話が矛盾した。私はまた再び悩んだ。姿を隠せば行方不明、見つかれば実験台。腕を隠してもいろいろ変化しすぎだから、どのみちバレる。
「うぅ……分かったよ。私の姿を消して」
「ワカッタ」
「うーん。目が冴えて眠れない……どうしよ」
「トリアエズ メヲ ツブレ」
「はーい」
私は布団に潜り込み目を瞑った。そのうちにだんだん眠気が襲い、眠った。