第三二話 哀れな人工衛星
私達は太陽系の木星に向かう途中、起動していない一つの人工衛星を見つけ、立ち止まっていたの。
「そういえば、他にもあったよね。こんな感じに佇んでいるの」
「もう使われなくなったものね」
ぼろぼろの人工衛星の右下には''第20号科学衛星MUSES-C''という文字が刻まれていたわ。なんとか読める感じだった。その文字の左にも何か書かれているみたいなんだけど、それは読めなかったわ。
「この人工衛星は……何かの小惑星を見つけたっていう人工衛星だった気がする」
「ふーん。まだ迷子なのね」
「こんなのがあるから星が見えづらいんだよ。ガスとか色々出て。私の能力が効かなくなるよ」
今じゃ、都市の明るみのせいで星が見えないだけじゃなくて、こういうのが散らばっているおかげで見えないっていう事もあるのよ。
「星の命を奪っているのは私達、人間なのね。困ったものだわ。私達、何もしていないのに」
「歴史が流れて人々はその存在を忘れる。まぁ、当たり前の事だよね」
「もしかしたら今でも親が探していたりしてね」
「でも、もう動いていない。電波も届くわけがないし、そもそもその電波を受け取れない。手段は他の人工衛星が回収しに行くしかない。そんなお金があるなら政治やらに使え、っていう思考をするんだよ。人間っていうのは」
人間ってあまりにも酷いわね。私達も人間だけどこんな事にはしたくないわ。
自分で蒔いた種は自分の責任。実を収穫し、収穫した後の後始末をするまで責任を持たなきゃいけないと思うわ。
「残念ね。親が迎えに来ないなんて」
「本当だよ」
暫く沈黙が続いた。
なんで私達ってこんなに沈黙する回数が多いのかしら? 人間の特性みたいなものなの?
そんな事を考えていたら蓮子が口を開いたわ。
「機械に秘めている事ってあるのかな?」
「さぁ? あるんじゃないかしら。だって、この人工衛星の名前、分からないじゃない。その時点で秘めている事なんじゃないかしら?」
「そうか……帰って調べてみよう! メモは……」
蓮子は紙を出したわ。何故に紙……。
「蓮子、宇宙じゃ紙に字は書けないわ。スマホのメモ帳アプリを使いなさいよ」
「あっ、そうだった」
蓮子はスマホを出して人工衛星のあの文字の通りに打った。
「さてと、書けたし……行こうか。木星に!」
「ええ」
私達は哀れみに包まれた人工衛星を通りすぎて行った。
この話でやっと一ヶ月いきました!ここまで頑張って書けたのは皆さんがこの小説を読んでくれたからこそです!
胡散臭い?いえいえ、そんな事はありませんよ!
次回の話も楽しんで読んでください!




