第二五話 南の境目
今回は場面切り替えが多いです。
私達はヒロシゲに乗ってきて、今さっき卯東京駅に着いたわ。何のためか? 蓮子の遅れた彼岸参りのためよ。
どちらかというと、早いお盆参りかしら?
「ほんっとにごめんねー」
「さぁ、さっさと終わらせましょ?」
「うん」
私は蓮子のために遅れた彼岸参りをするために、歩いて間もない墓地へと向かった。
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「さて、終わったわ! 付き合ってあげたんだから何処かに連れてってよね!」
「はいはいはい。何処に行く?」
私達は行く場所もないのに歩いていた。そしていつの間にか市場の中にいた。
「''はい''は一回よ。そうねー……あっ」
「うん? あー……懐かしいなー」
道端に一つの屋台。そこはくじ引きの屋台だった。流石田舎ね、人が群がっているわ。
「あそこ、くじの数が多すぎてなかなか当たらないんだ」
「当たるの?」
「意外に当たるみたい。私の友達がつい最近当たったみたいだよ」
私達は立ち止まって、人群がっている胡散臭い屋台を見つめた。
「やる? あそこ一回高いよ?」
「んー、蓮子やる?」
「メリーがやるなら!」
顔、近いわ。蓮子。
「なら、やろうかしら? たまには田舎人になるのも楽しいし。景品って何かしら?」
私は背伸びをして景品一覧を見ようと頑張った。でも見えないわ。
「取り合えず並ぶ?」
「そうね。そっちの方が早いわ」
私達は景品が蓮子が喜ぶものだと知らずに人が群がる中へと並んだ。
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「当たった……」
「当たっちゃったわね……」
私達は一回千円と衝撃的な値段のくじ引きを一回ずつ引いたわ。私は外れちゃったわ。あんなにあると流石にね……なかなか当たらないのが分かるわ。
でも蓮子は引いちゃったのよ! しかも蓮子の狙っていた、三十年前の小型機械宇宙! あんなにくじがあるのによく当てたわ。
「もう……帰る? もう寄る所がないよ」
「私もそう思うわ」
私達はまだ昼だけど再びヒロシゲに乗り、五十三分先の京都へと戻った。
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「ただいまー」
「おかえり」
「おかえりー」
「ただいま……って、昨日もやったけど、このやり取り何よ」
私達は蓮子の家に帰って来た。それを迎えていたのは室内用の合成夏野菜の蔓達。竺紗のお陰かしら。
「何って……帰って来た時に言うのは当たり前でしょ?」
「……蓮子、まさかそれを毎日続けていたの?」
「そうだけど?」
「流石田舎人ね」
一人暮らしなのに言うなんて田舎者くらいしか言わないわ。
「そんな事よりも早く見ようよ! 三十年前の宇宙!」
「あんまり変わっていないと思うわよ」
でも、年代物には目が離せない蓮子はきっと言うわ。
「昔の世界がどんなのか見てみたいんだ!」
やっぱり言ったわ。私の予想通りね。
「ほらっ! ぼけっとしないで早く!」
「はいはい」
私達はリビングに入り早速小型機械宇宙を見たわ。
今ではもう科学宇宙の時代よ。別名''サーレッドプラネット''。
星が立体で映るのよ。結構値段が高いみたいけどね。
でも蓮子は機械宇宙が好きみたい。どうも科学宇宙の構造が苦手みたいよ。''どうしたら光を切断出来るのか''だってさ。だから物理に素直に従っている機械宇宙が好きみたい。
「やっぱり機械の星の光じゃ、時間は分からないかー」
「そりゃあそうよね」
星が天井を動いているわ。真上には天の川が流れている。その中をノーザンクロスが飛んでいるわね。真夏の星空ね。短冊に願いでも書きましょうか。
「メリー? あの南にある、明るい星が並んでるあの星座。あんなのあったっけ?」
蓮子が南の方角にある三つ青い星と一つの赤い星がある方向に指差した
「蓮子。あの星座の目の前に境目があるわ」
見えるわ。蓮子が指差す方向に結界の中がが真っ黒な境目が。
「えっ? 本当に!? ちょっと待ってて……」
「早く! 沈んじゃうわ!」
「えぇっ!? ちょっと待って!」
蓮子は何か整理しているみたい。こんな時にそんな事してる場合じゃないって!
「よしっ! メリーまだある?」
「あるわ。まだ間に合う!」
いま境目の下の方が沈みかけている。
「何処!?」
「こっちよ!」
私は蓮子の手を引っ張った。そして蓮子を引っ張ったまま境目の中へと飛び込んだ。




