第一九話 フェイスパワーアップ!
最近、あの無表情能面を見かけない。何処へと行ったのだろうか。
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時はまたまたざっと流して現代。
最近の人間は神を全く信じなくなり、信仰力がなくなり、完全に消え失せた神は少なくない。
竺紗は私や他の植物がいるから、なんとか形を保っている。だが、年に一度にある神議には、よほどな事がないかぎり、一切参加する事はなかった。
そして都市は国土が小さい東京都から広い京都県へと変わった。そこからまた京都は大幅に変わった。木は削られ、住宅街ができた。東京都に住んでいた者も、皆京都へと移住してきた。
今日も稲荷山は誰も来ない、ただの捨てられた神社だ。
━━今日も……来んな。
一日中私の傍にいる竺紗に、いつもの言葉を言う。もう、これが日課のようになった。
「本当だよ。私、疲れたよ……!?」
竺紗が急に顔を歪めたので不思議に思った。
━━どうしたのか?
「植物が……なんか急におかしくなった」
━━おかしく? どういうことだ?
周りは静かのままだ。ただ風が吹いているだけ。植物がどうおかしくなったと言うのだろうか。
「なんていうか……全てが変わったって感じ」
━━具体的に言えば?
「全てって言ったら全てだよ。性格とか植物としての役目とか……全部」
これが植物合成化の変だ。植物達は無心になった。感情が消え、力が一気に増した変だ。
「しかも……欲が消えた」
━━なにっ……
生き物には必ずある欲。植物にも勿論ある。だが、それが消えるとはどういうことだ?
というか、欲が消えたのならば竺紗はどうなる?まさか、消えて神の墓場行きか?
「ぐっ……力が急に……」
植物が竺紗に信仰をしなくなったせいで、力を失っていく。一つ、一つの信仰が消えていく……
━━なぁ、竺紗。
「何?」
━━私はなんともないんだが、何故だ?
私も植物だ。他の植物がこんな事になっているのだから、私も同じ運命になるはずだ。だが、ならない。
「多分それは……私の力を得ているからだよ」
━━そうか……だからか。
そのまま一週間が過ぎていった。
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「はぁ……もう死の境目を見ている気分だよ……」
根元で座っている竺紗が溜め息をして疲れきった表情で言った。
━━いつ消えてもおかしくない状態だしな。
「……はぁ……!」
竺紗が一週間前とはまた違った感じで顔を歪めた。
━━どうしたのか?また。
「来た! 来たよ、古屋!!」
竺紗が急に立ち上がるので少し吃驚した。そのあと、希望の目でこちらを見てきた。
━━何が来たと言うのだ?
「人間だよ! 来たんだよ!!」
━━き、来たのか!?
「私行って来る!」
竺紗は返事を待たずに私の前から消えた。
━━本当に力が戻ったんだな……
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「それで私が会ったのが君達っていうこと!」
稲荷神がはしゃぎながら話した。本当に嬉しそう。
そういえば和銅四年に生まれたって言ったっけ? ……何年前? 取り敢えずとっても長生きな神っていうことが分かった。
「''秦こころ''って子、まだ会えていないの?」
''古屋''って言う神木から手を離したメリーが竺紗に尋ねた。
「いや、私が復活して以来一度も見たことがないよ……」
「そっか……」
私がそう答えた後、少し間が空いた。そして竺紗が口を開いた。
「そうだ! 君達に特別に見せたいものがあるんだ! 蓮子! マエリベリー! 手をつないで!」
そう言って竺紗は私達の方へと手を広げて向けた。
「次は何?」
「まぁまぁ、そう言わずに。ほらっ!」
「う、うん」
私達は躊躇いながらも竺紗の手を握る。相当の長生きだから優しく握ったけど、竺紗は私達が手を握った事を確認すると、私達の手を強く握った。
「じゃあ少し気持ち悪いかもしれないけどすぐだから我慢してね!」
「えっ?それってどういう事!?」
「感じれば分かるさ! 行くよ! そーれっ!」
「ちょっ、まっ! 心の準備が━━」
私達は竺紗により強制的に神木を後にした。
竺紗は蓮子達が来てから瞬間移動が出来るようになったので、急に目の前から消えたりしたのです。




