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秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第一章 伊奈利神木 ~ Japanese-Cedar Of The Crest
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第一四話 神も暇になる

 時は神無月。神無月と言えば、全日本の八百万が出雲大社に集まり、神議をすることで有名だ。

「あー行きたくない。運悪く被っているんだよぅ!」

 天の真上には日が突き刺し、爽やかな風が吹いていた。

 私に凭れ掛かる暇人が愚痴を言う。

 今日は惨拝客がいないので暇人なのだ。いや、暇神か。

 ━━それは仕方がない。其方は八百万なのだから。

「あー! 普通の神に転勤したいー!」

 暇神が私の下でじたばたする。そこで暴れるな。私の身体が傷付く。

 ━━愚痴を言うな。

「えー。どうせ人間には聞こえもしないし、見る事も出来ないよ?」

 ━━聞いてて気分が悪い。

「……はぁー、見回り行ってくる」

 暇神は溜め息をついた後、よっとと声を上げながら地面を押し上げた。

 ━━気を付けるんだぞ。

「分かってるよ」

 暇神である宇迦之御魂大神は見回りをしに、私から姿を消した。

 見回りとは伸びすぎた植物を縮めたり、逆に成長が遅れている植物を伸ばしたりするのである。主に杉を中心にやっているらしい。その証拠に他より伸びていた杉が縮んだ。

 ━━暫く休むか。

 あー、暇。



 ━━━━



「長時間力を使うのは流石に疲れるー」

 暇神だった宇迦之御魂大神が帰って来たのはあれから五時間後。日も落ちていき、美しい紅が伏見を染めた。

 ━━お疲れだな。

 また再び私の下に凭れ掛かる。止めてくれ。重いのだ。

「あー行きたくないー」

 ━━そんなこと言うな。

「えー……」

 ━━……

 暫く風が吹く音しか聞こえなかった。話す事を探しているが……あぁ、あったあった。

 ━━……さぁ、明日には行くのだろう?  仕度をしたらどうだ?

 これ以上沈黙が続いたら気分が悪い。なので話を切り替える事にした。

「んー? 準備することがないよ」

 暇神は立ち上がってくるりと回る。その姿は美しかった。

 ━━あるだろうに。まず服装。

「大丈夫」

 ━━爪。

「爪? う、うん。大丈夫」

 ━━胸。

「大丈夫……ってちょ、ちょっと待ったぁぁぁ!」

 暇神は顔を赤く染まらせた。あの日には及ばないが。

 ━━どうしたのか? 胸は女にとって、い━━

「そ、それ以上言うなっ!」

 ━━のち……

 しかし、私としたことが。つい口を滑らせてしまった。

 私の言葉を聞いた暇神は、ついに暇神ではなくなった。辺りは怒りで立ち込めていた。今の表情で似ていると言えば針千本、という魚類だろうか。

 怒りの千本の針が迫っていく。

「この……変態神木ぅぅぅぅぅっ!!」

 ━━た、ただ言っただけなのだが!?

「問答無用っ!」

 その後、私は暇……宇迦之御魂大神に命に侵害のある重傷を負わされ、正気に戻った彼女が元に戻してくれた。このまま重傷を負ったままだと、本当に死ぬところだったと言う。

 神を怒らせてはならない。たとえ神を信じていなくても、決して怒らせるな。



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