第一四〇話 闇が見た姿とは
元々、前回と繋がっていたので文章が途中からです。orz
「怪奇現象なのかもしれないねぇ」
「うわっ! さ、早苗かぁ……びっくりさせないでよ」
オカルト好きな早苗が私とこころの間に割り込んできた。また長々と話し続けるのかな?
「怪奇現象?」
「ええ! 不思議がいっぱいの幻想郷ならば何でも起こる筈! だから、こんな事が起きてもおかしくない!」
「それでも、急に光るっていう事はそこに何かあったって事になる。一体何が?」
「それにあの声もね。ねぇ、エニー!」
早苗の長話防止にエニーを呼んだ。勿論、ただ呼んだだけじゃないよ。ちゃんと理由もある。一石二鳥っていうやつだよ。
「はい! 何でしょうか?」
「エニーは光る直前に聞こえた声の持ち主が誰だか分かった?」
「あの声ですか……よく分かりませんでした。ただ急に光った原因は分かっていますよ」
「原因があるの……それじゃあ、怪奇現象って言えないかぁ」
原因が分かっては怪奇とは言えないからね。残念。
早苗はテンションを落として、その後の話に耳を向けなくなった。
「原因は?」
「その声の持ち主が放った光弾によるものだと、言っていました」
「光から音って聞こえたっけ?」
「いえ。恐らく、光弾の微かな爆発音からだと思います」
なるほどね。
もしかしたら、その光弾を放った人がルーミアを正気にさせたのかな? もし会ったらお礼を言っておかなきゃ。って言っても、見た事がなかったら駄目か。
「うーん? んー?」
「ルーミアちゃん!?」
「大丈夫? 大丈夫なの!?」
ルーミアが微かに目を開けたと同時に、二人の妖怪が騒ぎ始めた。
「ん? ミスティア? リグル? どうしたの?」
「''どうしたの?''じゃないって……心配したんだから……」
この二人はミスティアとリグルっていうみたい。
二人は目覚めたルーミアにほっとして、固くなった体が柔らかくなった。二人だけじゃない。私達もだよ。
「大丈夫? ルーミア」
私はルーミアの傍でしゃがみこんだ。いつの間にか、ルーミアの目はぱっちり開いていたよ。より安心するね。
「れんこ! そうだ! れんこだよね? 助けてくれたのって」
「うわぁっ! え?」
質問に答えない上に、質問をされちゃった。更には私に飛び付いてきた。
「だからー、れんこが、私が暴れてるの助けてくれたんだよね?」
「え? 私はしてないよ?」
「嘘ついてるの? けーね先生は、嘘はだめって言ってたよ?」
「本当に私じゃないって!」
ルーミアは私の秘力の効果を知って言っているのか、また、本当に見たからそう言っているのか。もし、後者だったらそれは一体誰? 光でルーミアの回りが真っ白になったから、私ではないだろうけど……。
「本当に? じゃあ、あれは誰だったの?」
「あれって何?」
今まで登場していなかったメリーが割り込んで訊ねた。
「急に意識がふっと戻ってきたみたいに正気になった時、帽子……まさにれんこの帽子みたいのを被ってて服装も似てたの。それもあるし、れんこの秘力っていうのを使えば、私を正気に戻す事が出来るって思った。でも、違うなら、あれは誰?」
「んー……ねぇ、紫?」
「それは、恐らく蓮子ね」
「はぇっ!?」
速答した紫に驚いたよ。だって内容を聞いていないと思ってたし、何よりもその答えが予想していたのとは全く違っていて仰天な答えたったから。その事は誰もが思っていたと思うよ。
「どういう基準でそう決めたの?」
「さあ? 何処かしらね?」
「何か知ってるでしょ。ねぇ、紫!」
「あ、霊夢の捜索をしなきゃいけないわね。あの子の力は幻想郷を揺るがしかねないほどだからね」
「もう……」
絶対に何かを知ってる。完全否定をしていないという事が動かぬ証拠だよ。
私がもう一人いる? 言葉のままなんだろうけど、どういう事なの?
もしかして、この幻想郷で生きている私なの? じゃあ、また会う時があるのかもしれない。その時は詳しく訊かなきゃ。
「でも……その霊夢さんっていう人は何処にいるか分からないだよね? どうやって探すの?」
今まで喋れずにいた愛乃ちゃんが私の袖口を引っ張って、興味を引かそうとしている。
「う、うーん……分からない」
「分からなかったら意味ないじゃない……」
当てもなく探し続けていたら切りがなくなるし、時間がたっちゃう。でも、探さないわけにはいかない。矛盾してるよ。
その時、唸るばかりの空間にミスティアの助け船がやってきた。
「霊夢? 霊夢なら見たよ?」
「え? 本当!?」
「うん。霊夢なら確か……あっちの……そうねぇ。お寺の方に行ったよ?」
ミスティアが太陽の位置を見てぐるぐる回った後、ある一つの方向を指差した。お寺ってもしかして……。
「お寺……命蓮寺か。よし、そうと決まれば今すぐ出発だな!」
やっぱり、お寺っていうのは命蓮寺の事だったんだ。前にも一度、来た事あったね。確か、鼠に会ったような。
「えっ、もう行くの?」
「はあ? 逆に、行かないのか?」
「いや……行くよ」
何というか。心の準備が欲しかったけど、魔理沙はそんな余裕を与えてくれないみたい。
それもそっか。霊夢の事もあるもんね。
「よし、なら行くとするか! あ、お前達は人里に行くといいぞ?」
魔理沙は三人の幼子達に向かって言った。全く口調を変えないよね。凄く無礼講だよ。それとも、この幻想郷がそんな感じなのかな?
「え? 何で?」
「あそこには希望メーカーがいるからな。行けば分かる」
「う、うん。分かった。皆、行こう」
三人の幼子達は心配しあいながら神社を後にした。
「あら、私の心配はしてくれないの?」
「お前は子供かよ」
「私は永遠の十八歳よ?」
「はいはい、分かりました。ほら、早く行こうぜ」
「あ、うん」
背中を無理矢理押されて、私達も神社を後にする。
これから霊夢の様子を見るべく、命蓮寺に行く。ルーミアが見た私の姿を探す事も頭に入れておかなきゃね。
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「ふふふ……さぁて、どうしよう? そうだな、こうしてやろう」
少女が持っているのは、開かれている本が一冊。
少女の狙いの的は、お面を持ち歩く幼子だった。
この物語の大犯罪者がいよいよぶちかましてきます。




