表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第八章 信仰乱心 ~ Hope Mask
142/148

第一三四話 落としてしまった希望

「今回はまともでよかった。ひゃっ」

 出た先は森よ。幻想郷で森と言ったら、魔理沙の住んでいる森よね。いつ魔理沙の住所訊いたか? 忘れたわ。

 暴風で木がいつもよりも激しく揺れているわ。音もテレビにノイズがかかったような雑音で声がよく通らないくらいよ。

「いつもは違うの?」

「前まで、行く度に落ちてたわね……」

「落ちるって……空から?」

 目線を少し下ろしたら、愛乃ちゃんが蓮子と手を繋いでいる様子が見えるわ。下から聞こえる声はいつも愛乃ちゃんよ。

「そうだよ。一体誰がこんな悪戯を仕掛けるのかな?」

 一回目に来た時はなんか浮いたけど、そこから落ちっぱなしね。

 今思い出してみたら、何で一回目だけが浮いたのが分かった気がするわ。分からない人はよく振り替えってみる事が重要よ。意地悪? 違うわよ。親切よ。

「そういえば何で竺紗さんと結縁さんを連れて来なかったの? こことは友達関係みたいな感じなのに」

「留守番。盗人でも入ったらいけないからね」

「え、セキュリティは最新式じゃ……」

「念には念を入れるものだよ」

「なるほどねぇ」

 気紛れねぇ。思考があっち行ったり、ぐるっと回ったり、猫みたいね。

「……」

「……エニー? どうしたの? 急に黙って」

 空を見つめて黙り混むエニーの顔は今にも何かが起こりそうな歪んだ顔をしていたわ。

「風がこんなにも吹いている状態だというのに、何を言っているのかが分からないのです」

「風が荒いほどごちゃごちゃしているものじゃないの?」

「確かにそうかもしれませんが、こんなおかしな風は初めてです」

「おかしい? どうおかしいの?」

「暴れるというよりも……好き放題に暴れるという感じです」

「どう違うの?」

「怒りがないという感じでしょうか……」

「取り敢えず風がおかしいわけ?」

「はい」

 私には怒りにしか感じない風が吹いているわ。また何か異変でも起こっているのじゃないの?

「うーん……風が納まればいいのですがね……」

 さっきからスカートを押さえているわ。捲れたら大変じゃない。憂鬱になるわ。

「さて、この幻想郷に何が起こっちゃって━━」

「そこの者! 止まれっ!」

 風で警戒心を衰えていて後ろの存在に気づかなかったわ。声が聞こえた瞬間に後ろを振り替えると、薙刀を持った危ない子が立っていたわ。

「ここ……ろ?」

「そこのお前! 我の希望の面になれ!」

 薙刀を持った危ない子は愛乃ちゃんに向かって指を指した。確かにこころだけど、何か変よ。

「わ、私? 希望の面ってどういう意味なの?」

「希望の面が消え去った今、希望を持つものが必要なのだ! だから、お前は我の希望の面になるのだ!」

 話が噛み合わないわ。やっぱり異変なのかしら?

「ちょっ、ちょっと落ち着こ? こころ。何があったの?」

 私達とこころの少しだけの間に蓮子が割り込んで、こころの薙刀を持っている右手を両手で掴んだ。すると、はっと目覚めるように正気になったのが感じられたわ。殺気があった目付きも、今はないわ。

「あ……私……蓮子?」

「よかったー……もう暴れないよね?」

「うん……」

 安心した蓮子は固くしていた両手を解き、一歩後ろに下がる。私も、いつの間にか強ばっていた肩を落としたわ。

「あ、私、変な事言ってた?」

「うん……言ってたね」

「そっか……」

「さっき言っていたのは何の事だったの?」

 早苗が訊ねるわ。はしゃいでいた気持ちも少し納まったみたい。

「私、希望の面をなくしたの。このままだと、大変な事になりかねない」

「希望の面って?」

「私の持っている、六十六個の面の内の一つ。勿論、希望を表す面よ」

「それがなくなると何が起こるっていうの?」

「私は感情を操る事が出来、また、感情を管理する事が私の仕事だったりするの。その管理に必要不可欠なのが、私のお面。それをなくすと人から、それに込められた感情が抜き取られちゃうの。特に、希望の面がなくなるとなったら大変な事になる」

 確かに希望がなくなったら辺り一面が暗くなりそうね。ちょっと想像するだけで気持ち悪くなるわ。

「じゃあ、その希望の面っていうのを、何で私と間違えたの?」

「間違えたんじゃない。貴女が希望を沢山持っていたから、代わりに使おうとしただけ」

「要には間違えたんだね」

「だから、間違えてないって!」

 早苗は幻想郷の人にも塩を塗っちゃうのね。怖いわ。

「とにかく! その希望の面を見つけ出さないといけないの! お願い! 手伝って!」

 無表情だけど、声の勢いだけでこんなに感情が伝わるなんて。表情がない分、名一杯声を張るわ。

「分かった! 一緒に探そう!」

 こんなに頼まれて、断る事が出来ないわよね。蓮子はこれにプラスアルファがあるんでしょうけど。

「本当に? ありがとう!」

「大丈夫大丈夫! それじゃ……何処に行こうか?」

 まずはそこよね。当てはないのかしら?

 周りを見渡したけど、木ばかりだわ。方角は太陽の光で大体分かるけど。太陽は真上よりもやや西寄りね。

「……音楽が聴こえてきませんか?」

「音楽……?」

「はい。色んな音が混ざってますよ。これは……トランペットとバイオリンとキーボード音でしょうかね」

 エニーの言う音が全く聴こえないわ。皆も同じみたいで、きょろきょろしてて、色んなところに耳を傾けているわ。

「うーん……皆、聴こえる?」

「聴こえないわ」

「私も」

 早苗とこころは首を左右に振らせているわ。エニー以外、皆聴こえないみたい。遠くにあるって事かしら?

「なら、エニー、その方向分かる?」

「はい。あっちです!」

 エニーが森から聴こえる音楽を頼りに、自然と演奏者を探す事になっていたわ。

 気になるわね。何処かで歌う音の音色を。



大幅に遅れました。


後、来週水曜日はスキー教室のため、投稿をお休みしますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ