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秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第八章 信仰乱心 ~ Hope Mask
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第一三一話 秘封誘拐阻止

 周りはさっきよりも紅く染まってる。何、この既視感。何だか、この後に起きる事が分かる気がするわ。

「早く帰ろうーおうちに帰ろうー」

「何処かで聞いた事ある事しか言えないですか? 宇佐見さんは」

「ぐっ……ほらっ! 早苗! ためって言ったでしょ!」

「そうやって話を逸らすー。酷い」

「何気に傷口に塩に聞こえたのは気のせいかしら……」

 何だか愉快よね。既視感を気にせず、私も入るわ。

「そういえば、''幻想郷''、だったかな? そこに一度連れってってくださいな!」

「勿論勿論。いつになるか分からないけど」

「えぇー……」

「私達もそう頻繁には行かないからね」

「そうなんですか……」

「月一回は頻繁の内に入らないの?」

 蓮子は黙った。あ、酷い。無視だなんて、大人がするような事じゃないわ。

「なら、もしそこに行ったら何をさせますか?」

「させる?」

「ほら、こちらの文化を教えてみたいでしょう?」

「うーん……分からなくはないけど……なら、早苗なら何を教えたいの?」

「そうですねぇ、缶蹴りとかはどう?」

「古っ。あと、多分洒落にならない事になると思う」

「何でですかー」

「私もそう思います」

「エニーさんまでー」

「私も」

「メリーさんもぉ……いいと思うけどねぇ……」

 早苗はしゅんと肩を落として、考えだした。今度はこの世界らしいものだといいわね。

 私達は校門を通りすぎた所で止まった。

「あ、じゃあ、私はこっちだから、また」

「はいはい。じゃあまたね、早苗ー」

 蓮子につられて手を振って、安心の溜め息をついたわ。そして、早苗とは明日にまた出会うと思ったと思った矢先よ。

「いやーーーっ!!」

 叫び声よ。しかも、この声って……。

 振り返った時、空を覆う雲も、校舎も、夕陽に照らされて紅かったわ。

「あ! ちょっとメリー!! 待ってよ!」

 私はまさかと思い、とある場所へと走った。とある場所って言ったらあの場所しかないわよ。貴方達が一番よく分かってるでしょ?

 蓮子達は私の後ろを追いかけていくけど、気にしている余裕なんてないわ。気になるんだもの!

 そして中庭にたどり着いた時、自分が怖くなってしまった。目の前はあの夢と一緒。ただ唯一違うのは黒い影に色が付いた事だけかしら。あの姿は、きっと……。

「岡崎教授……」

 襲われていて怯えているあの子。その子は叫んだわ。

「助けてっ!! そこに居るんでしょ!」

 全く一緒だわ……。

 正夢は前にも見た事はあるわ。だけどあれは、こことはかけ離された世界。だからその時は、正夢を見ても当然だと思っていたわ。だけど今回は違う! ここは歴とした現実の世界よ。見た夢もそう。いえ、正夢ね。

 今の気持ちは身近ものが違うと感じた時に怖く感じるのと同じよ。恐怖を感じたわ。

 後ろからリズムを刻む足音が近づいてきたわ。

「岡崎教授!? メリー、何ぼーっとしてるの! 早く行くよ!」

 後ろからきた蓮子に左手を引っ張られて、岡崎教授と子供のもとへと走ったわ。繋がれた手から恐怖が消し去られていく感覚がしたわ。蓮子の秘力はがんがん出ているようね。

 岡崎教授は一度振り返ったけど、また向き合っている子供の方を向いて、手を差し出したわ。このままだったら人体実験をさせられてしまうのわ!

「岡崎教授!! まだ幼い子供を人体実験させようだなんて、何を考えているのですか!」

「くっ……あーっ!! 後もう少しだけなんだからいいだろ!」

「よくないです!」

「はぁ……ちっ」

「何気に舌打ちしないでくださいよ」

 岡崎教授は手を伸ばして子供を触ろうとしていたけど、だらんと手を下ろしたわ。

「後もうちょっとのところで邪魔されたら舌打ちくらいはするさ」

「まぁまぁ。それで、岡崎教授」

「何だ?」

「人体実験をしようとしてたのですか?」

「ああ、そうさ。凄く気になるからな、彼女の事が」

 岡崎教授の目線の先には私が夢でも見た子供がいた。ほっとしているわ。でも、黒い傷があるけどね。さっきの衝撃なのかしら?

 岡崎教授の言う通り、やっぱり何かあるわ。

「でも、止める奴が来たから台無しだな。私は諦めるとするよ」

「そうしてもらえると嬉しいです」

「あぁ、ちょっと来てくれ」

 岡崎教授は蓮子を招いて何やら話しているわ。話は漏れているけど、聞く気がないから全く聞こえないわ。

 暫くしてから戻ってきて、話の内容を聞いてみたわ。蓮子の手に何か持ってるわね。あまり見かけない形ね。

「何それ」

「精神何とか眼帯だって」

 名前的に特殊な事をするのね。精神とかって言うのなら、精神異常なのかしら? この子。

「何とかって……何ですか?」

「いやだって、覚えられないって。凄く長かったんだもん」

「真ん中辺りが重要になっていくのに、これじゃ何をする眼帯か分からないじゃないですか」

 それもそうね。精神とは全く関係ない事かもしれないし。でも、多分そういう事だと思うけどね。

「ま、まぁ、とにかく、これをあの子の右目につけてくれって岡崎教授が言ってた」

 蓮子は先を歩いていく岡崎教授を見た。私もつられて見たけど、紅い光は消えて、一番星が校舎の頂に見えたわね。もうさっきの事が嘘の事のように感じたわ。

「あ、後、岡崎教授、私達の活動の事とか全部知ってるらしいよ」

「え……だったら何で襲わなかったの?」

「考え方が単純すぎるから、だってよ?」

 何の考え方が単純なのかはよく分からないけど、取り敢えず私達は助かったわ。

 岡崎教授が見えなくなった時、蓮子は子供の方を向き直したから私も向き直したわ。早苗やエニーも同じ方向に向いていたけど、私と同じように向き直したわ。

「さてと、お待たせ。私は宇佐見蓮子。ここの生徒だよ」

「あ……うん……」

 子供は人見知りなのか、静かよね。最近の子って皆人見知りよね。私もだけど。蓮子? 見ての通りよ。

「それで、私の隣にいるのがマエリベリー・ハーン。言いにくかったらメリーでいいよ」

 誰もいいなんて言った覚えがないけどね。でも、最近蓮子、私のフルネームが言えるようになったわね。やっぱり秘力のおかげなのかしら?

「その隣がエボニー・セテントライト」

「二人も外国人さんが……」

「ん?」

「いや……何でもない」

「そう。あ、それでその隣にいるのが秋風早苗だよ」

「何で思い出したかのように言うの……かな?」

 早苗の気持ちに同感ね。ちょっとむかっとくるわよね。流石に蹴飛ばすくらいじゃないけども。

「よろ……しく」

「名前は?」

「……仲間からは赤十字愛乃(せきじゅうじあいの)って言われてる……」

「愛乃ちゃんだね。そういえば、その服装何処かで見た事あるんだけど、何処で買ったの?」

「いや……すぐそこの教会で貰った……」

「教会? あー、あそこのキリスト教会か。通りでね」

「え、キリスト教徒なの?」

 愛乃ちゃんはこくんと頭を上下に振った。キリスト教徒なんて珍しいわね。なら神も見えたりするのかしら?

 黒い服によく分からない白い布を肘の長さまでまとっているわ。キリストも少し気が抜けてきたわね。

「嫌になって逃げ出してきた……」

「んー、なんか奥が深そうだね。よし、ここはお家に帰ろう」

「帰りたかっただけでしょ」

 また無視するぅ……蓮子も私に対しての態度が雑になってきたわね。

「私も?」

「勿論だよ。さ、おいでよ」

 蓮子が不審者に見えたのは、きっと気のせいよ。気のせい。

 子供の傷は付いたまま、蓮子の家に帰る事にしたわ。これからお悩み相談になりそうね。

 あれ……早苗もついてくるのは何でかしら。『家に帰らないの?』って蓮子が聞いたら、『興味があるから一緒に行きます』だって。神含め、六人のカウンセラーの始まりね。



結縁ちゃんの存在を忘れていた事は秘密。


愛乃ちゃんの『よく分からない白い布』はアリスのあれだと思っていていればおけです。

説明下手ですいません(特に本家様)。

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