第一二八話 三つの動揺
出雲さんは今大学にいます。神様が大学を拝見するとは大ニュースなのですが、信じがたい事を記事にするのはちょっと厳しいですね。メモはするのですが……。
「私はメリーについていくよ、心の傷ってやつが気になるし」
きっとそうではないかとは思っていました。外に凄く興味を示すだけでしたら宇佐見さんの方が適切だと思いますからね。
「分かった。じゃあまた放課後ね」
「じゃ」
「今日も頑張りましょうね」
私達はそれぞれ先攻が違いますので入口で一度別れます。私は国語学を先攻にしてますので、分かれ道を右に曲がります。他の三人は左へ曲がります。ハーンさんと宇佐見さんは同じ方向ですからね。
三人の楽しそうな後ろ姿が羨ましく思えてきます。あ! 病んでませんよ? 決して病んでませんから!
早速私は第一講義室で講義を聞く事になってます。しっかりと聞かねばなりませんね。
「……病み、ですかぁ……それに合わせ、何かを持っている子供……やはりハーンさんは……」
しかし、いざ始まると、ハーンさんの話が気になります。それを言い訳に集中出来ないと言うのは恥なので切り替えをしようとしますが、なかなか頭から離れないものてす。中々講義が聞けていないので頑張って聞くのですがね。
色んな事を考えていると、ふと鳳凰さんのお話を思い出してしまいました。よくありますよね。考え事をしていると違うものを思い出してしまう事。そのせいで思い出したくない時に思い出してしまうと憂鬱になりますよね。困ったものですよ。
結構、講義内容もぽかんと聞いたまま終わる始末です。
すると、私が次の講義室へと向かおうとしましたが、進行方向から教授が走ってきました。
「あ、岡崎教授。どうなさいましたか?」
岡崎教授はここ、京都大学の教授です。担当は宇佐見さんの先攻と同じ物理学でも、岡崎教授は比較物理学を教えているのです。実は、私よりも年下なんですよ。
「あ、あぁ……ちょっと人探しだ。じゃ」
私が呼び止めると、動揺して止まりました。しかし、そのまま私が歩いた道を遡って走っていきました。職員室は反対側なんですがね……。
━━━━
「岡崎教授がかぁ……珍しくはない行動だけどね」
場所も時間も変わり、放課後の秘封倶楽部部室です。宇佐見さん、ハーンさん、出雲さんはいます。
さっき起こった事を順を追って話したところです。
「そうですが……ちょっと変だったんですよ」
「どう変だったの?」
「何だか、その……動揺をしてたのですよ」
「そりゃ急に自分と関わり持たない人から名前を呼ばれたら動揺するんじゃないの?」
出雲さんが言いました。
「確かにそうなのですが……」
「まぁ、言いたい事は分かるよ。こっちも色々とあったし」
「あら奇遇ね。私もだわ」
「皆さんもですか?」
どうやら宇佐見さんやハーンさんも私のような体験をしたようです。本当に奇遇ですね。
「そうみたいだね。なら話そうか? 元から話すつもりだったし」
「話すつもりだったのなら話しなさいよ」
「興味ない?」
「そんな事ないわよ? ほら、早く」
「わ、分かったよ」
どんな事があったのか楽しみです! ただ、嫌なお話だけは勘弁ですね。
私は自分で注いだ紅茶を少しだけ飲みました。ちょっとだけ甘みがあって美味しいです。よく分からないティーバッグを使ってみましたが当たりだったようです。
「確かね……二時限目が終わった後だったかな。メリーの言ってた『何かある子供』を探して、人気のない廊下に行ってみる事にしたんだよ」
「ただ会いたかっただけじゃないの?」
ハーンさん、最近ちょっと思考がひねくれているような気がしますが、私の思い違いでしょうか? にやけていますからそうなのでしょうかね?
「それは絶対に否定できる! まぁ、それよりも続きで。それでね、実際に会ったんだよ!」
「本当ですか!?」
「うん!」
偶然ですね! これで何か掴める気がしました! また会えるかどうかは別のお話なんですがね……。
「でも……その子がメリーの言ってた子供とは限らないよ?」
あ……重要な事が欠けていました。私とした事が……鳳凰さんに会ってから、もうテンションを上げすぎないようにと心に誓ったというのに。
落ち込み過ぎですか? しかし、上げすぎた私にはこれくらいの落ち込みが丁度いいくらいですよ。
「そうですね……どんな子だったのですか?」
「背が結構低かったから、顔はよく分からなかったけど……廊下で後ろからいきなりぶつかってきたんだけど、すっごくあわてて謝ったんだよ。『どうしたの?』って聞いたら、動揺しつつも黙ってそのまま行っちゃったよ」
「つまりは何も聞けず仕舞いね……」
「でも、どっかで見たことあるんだよなー……あの服装」
そこはちゃんと見ていてよかったです。それで少しはハーンさんの謎の他人の夢の正体に近づけます。
今度は宇佐見さんが乾いた唇に紅茶を注ぎました。
「あー、美味し」
「どんな服装だったの?」
「えっとねー、見たのが遠くからだったから、ちょっと曖昧なんだけど……黒い服で白いセーラーの襟みたいのだったよ」
「あ、私が見たのもそんな感じだったわ。もしかしたらその子かもしれない」
ますます近づいてきました! これで確実ですね。後は探し出すだけです!
「本当に? あ、でも何であんなにあわててたのかな?」
「そんな事簡単じゃない」
「へ?」
次はハーンさんが紅茶を飲みました。私も何となく推理が立てられました。恐らくその子供は━━
「岡崎教授に追いかけられているのよ。そんな事、偶然の事じゃないって思わない?」
ハーンさんと全く同じ意見です。
「確かに……じゃあ早く行かなきゃね! でも、その前に。メリーの方は?」
「わ、私? 後でもいいんじゃないの?」
「関連性があるかもしれないじゃん!」
「本当に関係ないと━━」
「言わないとだーめだよ? メリー」
私はこの後の宇佐見さんの行動に驚きました。宇佐見さんはハーンさんの顔に自分の顔を近づけたのです。その光景はまるで、ラブアンドコメディーのような光景です。他人が笑えるような恋が芽生えそうです。
「分かったから! ちょっと、離して……」
「言ってくれるんだね?」
「え、ええ……分かったから……」
ハーンさんの顔はとても赤いです。それを手で覆って、宇佐見さんに見えないように腰を折っています。
「大丈夫……? メリー」
出雲さんが心配しています。声は違いますが若干、宇佐見さんと口調が同じなので字で表すと紛らわしいです。
「ええ……大丈夫よ。えっと……ふぅ」
赤面を直し覆った手を退けて正直を向きました。
「私の方では……本当に関係ないわよ?」
「うん、いいから」
「えっとね……早苗に会ったわ」
「早苗? うん、それで?」
本当に関係なさそうな事がハーンさんの口から出されました。しかし、宇佐見さんは話を続けさせようとしています。恐らく、気になるのでしょう。
「それで、ちょっと呼び止められてね、その後、エニーと蓮子が会った人達と同じように動揺して、何でもないって言って行っちゃったのよ」
「あ……」
「どうしたのですか? 宇佐見さん」
「メリー……一番会っちゃいけない人に会ったね……私の予想だと、すぐに……」
宇佐見さんがそう言ったち直後、部室の扉が激しく叩かれました。宇佐見さんがそう言うという事は、恐らくあの方でしょう。
遅れてすいません。
実は先日、熱がでまして、インフルの疑いがあると言われました。
そのせいで寝たきりですorz
さらに来週の木曜日から土曜日までスキーがあるので、来週の投稿はお休みさせていただきます。
本当にすいませんでした。




