第一二六話 また夢の話
明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いいたします!
今年はメリー年!
十一月の放課後の中庭は冷たい。しかも日陰。エニーはもう家に帰っている。
「んー……ここだった筈なんだけど……」
「私も一緒に探すよ。何を落としたの?」
「子供よ、何かある」
「子供!? まさか誘拐したの!?」
メリーがそんな趣味だったとは、一つも思ってなかったよ。
何かあるっていう子供をあちこちで探すメリー。壁の影を覗いたり、振り返って辺りをじっくり見回したり……何をしているかがさっぱり分からない。いや、子供探しをしているのは分かるんだけど……。
「違うわ」
「じゃあ何なの?」
「見たのよ。ここで」
「な、何の話? メリー」
もうメリーの話す事が分からなくなった時、やっと私に通じる言葉が出てきた。
「夢で子供が攫われてたのよ」
「……夢? それ、話した?」
そう、メリーがちょっと狂って話が通じなくなった時に、唯一通じる言葉は''夢''。この言葉さえ出てきたら後の話も簡単になる。
「あれ……話さなかったかしら?」
「全く聞いてないよ」
「あれ……本当に?」
「言ってない。さあ、話して。夢で何を見たのか」
「え、ええ……」
まだ惚けているメリーはちょっと首を傾げてからはっとして一息ついた。気づくの遅すぎ。
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目を開けたら見覚えのある風景だったわ。夢だからかしら? いや、違う気がするわ。
感覚から感じて夢であるこの世界は私の通う大学、京都大学の校門よ。紅い雲が空を覆って校舎も紅く見える。あぁ、きっと現実が夢に変わってきているのだわ。もう後戻りが出来ないのかもしれないわ。
ちょっと溜め息をついたら悲鳴が聞こえたわ。
「いやーーーっ!!」
今まで聞いた事のない声よ。誰かしら。いやいや、そんな平気でいてる場合じゃないわ。悲鳴が聞こえたなら、私にも危険が待っているだろうし、悲鳴を上げた人にも危険が訪れているわ。
私は悲鳴が聞こえた方へと向かっていったわ。何故か思うように足が運ばないけど、全部夢のせいにしておくわ。
悲鳴が聞こえたのは中庭よ。あんまり人気のない中庭だけど、そこから悲鳴だなんて……嫌な事しかないのでしょうね。
「来ないでっ!! 来ないでーっ!!」
目を凝らして見たら、遠くに人と黒い影がいたわ。どうやらあの人の悲鳴みたいで、今あの黒い影に襲われているみたいよ。
中々勇気が出なくて足が一歩も出ない。これは夢のせいではないわ。単なる恐怖心。
「助けてっ!! そこに居るんでしょ!」
あっ! 何で!? 今まで動かなかった足が誰かに引っ張られていくように前に進んでいくわ。何というか、その時の気持ち、前みたいのじゃないけど心が変わったような感じよ。
動き出した足は走ってその子に向かっていたけど、黒い影は手みたいなのを出してその子に触れようとしたわ。
「いやっ……ぃゃあぁぁぁぁ!!」
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「これで終わりよ。どう?」
前回までの夢と比べると激的に変わっている。
「んー……何だかいつもと違うね」
「でしょ? いつもは見た事ない世界ばかり見るけど今回はここ周辺の人なら、誰もが知る場所なのよ。ここが一つの疑問」
「それはメリーの予想であっているんじゃないの?」
見たのも今の京大みたいだし……メリー……。
あ、変な事考えちやった。何でもないよ!
「そう思うでしょ? でもちょっとだけ違うみたいなのよ」
「どういう事?」
「何だか……ちょっとだけよ、本当に微かによ。一定の人にだけ境界が見えるのよ」
「一定の人? 例えば?」
「病んでる人かしら……」
「病んでるってぇ……まさか心の傷とか?」
病んでる人についてあるものと言えば大抵傷である。その場所もほとんどが同じ、心なのである。
「んー……そうかもしれないわ」
「メリーも強まってる証拠だね」
「はぁ……正直昔のままがよかったけどね」
さっきまでのメリーとは思えない発言をした。''正直''なんだから、さっきのメリーの行動は無闇に引き起こしていたのかな?
「何言ってるの? それ覚悟で秘封倶楽部に入ったわけじゃなくて?」
と言っても、私が無理矢理入らせたんだけどね。ま、引き受けてくれたには変わりはないっか。
「……それもそうね。今日はいいわ。また明日探しましょ。エニーにもちょっと手伝ってもらってからやったらきっと早く終わるわ」
「その子に会って何をするの?」
「考えてなかったわ……何かしましょ。例えば、夢の事とか」
「あっ」
ちょっと何か変な事に突っかかっちゃったよ。こうなると考える他ないよね。
「どうしたの?」
空を見ると、私にしか見えない星々が五時十九分四十二秒を告げて、私達の日陰を見ると私達に隠れるように東へ伸びていく。冬が近い証拠だね。
「いや……何か変だなって」
「何が変なの?」
「メリーが見た夢は本当にメリーの夢だったの?」
「どういう意味よ」
「言葉のまんまだよ」
何処に突っかかったかって? 色々あるけど、恐怖心が勝手に解れた事とか、夢に出てきた子に助けを求められた事とか。よく考えて解釈していけば……仮定が立てられる。
「……そうねぇ……いつもとはちょっとだけ違ったかも」
「やっぱりねぇ」
「何がよ」
「帰って話さない? ちょっと寒くなるし、相談相手は多い方がいいし」
夕日がちょこちょこ地に沈んでいく。
これ以上寒く、暗くなると困る。懐中電灯も忘れたから早く帰らなきゃ。
「そうね。分かったわ」
メリーは西の空を見て察してくれた。私、寒がりだから。後、『相談相手は多い方がいい』って言ったのは次回分かるよ。何となく分かるだろうけどね。
私達はほぼ無人の大学から家へと帰った。さ、私のマイホームはどうなっている事やら。
極「メリーさんの羊♪ 羊♪ 羊♪ メリーさんの羊♪」
メ「それ以上言うとどうなるか分かってるわよね?」
極「ひぃ……」
ちょっと書き方を変えました。分かりましたかね? ''?''や''!''の後にスペースを空けました。これで少し見易いかと思います。




