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秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第七章 心狂硝子 ~ I Am You,You Are Me
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第一二〇話 道具屋の伊弉諾物質

 私は魔理沙の家の近くにあるちっぽけな家を訪れていたわ。時刻は三時二分丁度よ。月の石を出してみると魔法の森入口とか何とか。魔理沙の住んでいる森は魔法の森って言うのね。

「こーりーん! こーりーんこーりーんこーりーん!?」

 魔理沙が誰かの名前を連呼したわ。扉は叩かないのね。てっきり魔理沙なら普通にするものかと思ったわ。

「誰? こーりんって」

「''森近霖之助''って奴さ」

「何故こーりんなのですか?」

「店の名前が''香霖堂''だから」

 あ、ここ店なのね。全く気づかなかったわ。道具の専門()って言うものだから、家に住んでいるかと思ったわ。

「店の名前が人のあだ名ね……分からなくないわよ」

「だろ? だからこーりんなのさ」

「大声で言わんでも分かる」

「おぉ、吃驚した。いきなり出てくるなよ」

 店の扉から格好いい男性が出てきたわ。魔理沙のマフラーも格好いいけど、この男性もいいわね。この人が通称''こーりん''って方なのかしら?

「君が大きな声を出すからだろ。で、何の用なんだい? また故障かい?」

「今日は違うな。今日はこっちだ」

 魔理沙が後ろにいる私達に親指を立てて指してきたわ。

 髪形も身形もガーリッシュなのに性格とか口調はボーイッシュなのよね。まぁ、その辺りが魔理沙の個性なのよね。

「うん? 誰かい?」

「こーりんから見て左から、マエリベリー蓮子エボニーだぜ」

 魔理沙は早口で紹介したわ。は、速いわね。聞き取れたの? 後、名前も間違えずに言えたわね。

「速い速い。ゆっくり言ってくれ」

 やっぱり速かったのね。凄く速かったんだもの。早口言葉が軽く十回言えそうね。私なんて日本に来たばかりなんかは全く言えなかったんだから。両親は日本に縁があったみたいだから、少し教えられたけどね。

「こーーりーんーかーらー━━」

 魔理沙がさっきの四倍くらいスピードを落として喋り始めたわ。初めの読点が出るまで何分かかるのかしら?

「今度は遅すぎる。普通のスピードで言ってほしいのだが」

「分かったぜ。これでいいんだろ?」

「ああ。そのスピード」

「そんな無駄なやり取りしているんだったら私達の方から言えばよかったような気もしないけど……」

「それ、私も思ったわ」

 いつの間にかつまらないコントをしている二人組を見ている気分になったわ。

 溜め息をついて上を見上げると昼の星が木々の隙間から姿を出し、三時十分二十三秒を示しているわ。

「ああ、すまないすまない。もう魔理沙じゃ話にならないからお願いするよ」

「ちぇ……」

「えっと、私は宇佐見蓮子。で、マエリベリー・ハーンにエボニー・セテントライト」

 うーん。やっぱり私の口が''宇佐見蓮子''って言うのはしっくりこないわね。

 その私の口はまた喋り出すわ。

「それで、私は『月を見て今いる場所が分かり、星の光を見て今の時間が分かる()』を持っているんだ。今は違うけどね」

「今は?」

「うん。でも、説明が長くなるから後でね」

「は、はあ……」

 確かにあれの説明は立って話すには長すぎるわよね。三十分はかかるんじゃないのかしら?

 自然に決まった順番通りにいけば、次は私が言う番ね。そして私の次はエニーよ。

「私は『結界の境目を見る()』を持っているわ。蓮子と同様、今は違うけど」

「私は『風の声を聞く』のです! しかし、何だか音の声も聞こえてくるのですよ」

 え? 私、それは聞いてないわ? 霖之助さんと一緒に聞きかなきゃいけないわね。

「何だか不思議な人がいるんだね、現世でも。私は森近霖之助。香霖堂の店主さ。さぁ、中に入って話を聞かせてもらおうか」

「うん」

 私達は一通りの自己紹介を終わらせて香霖堂って言う、変な名前の店の中に入った。

「あー、こーりん。今思い出したんだが、私のミニ八卦炉が故障した」

「故障はしてないんじゃなかったのか?」

「してたんだぜ」

 店の中で急に会話が始まっていたわ。どうやら、魔理沙の持っているミニ八卦炉っていうのが壊れたみたいよ。それを道具の専門家、森近霖之助に頼んでいるわ。

「はぁ……ちょっとごめん。話を聞く前に修理をさせてもらっていいかな」

「ええ。いいわよ」

「すまないね。魔理沙」

「はいはい。しっかり直してくれよな」

「分かってるさ」

 魔理沙はミニ八卦炉だと思う物を霖之助に渡したわ。霖之助はそれをじっくり見ながら店の奥の部屋へ入っていった。

 この店には色々な物があるわね。

「ねえ、メリー。これって結構前のパソコンだよね? 何でこんな所に?」

 蓮子の指差した所には分厚くて、壊れているようにしか見えないパソコンが棚に置かれているわ。

「あー、それは霖之助がどっかから拾ってきた物さ。使い方が分からないから色々調べているらしい」

「へー……」

 真っ暗な画面には''非売品''って墨で書かれた紙が貼られている。側面にも何やら沢山紙が貼られているわね。多分、それが使い方についての事が書かれているんだと思うわ。エニーはそれをまじまじ見つめてはメモをしていってる。メモする必要があるのかしら?

 私はその棚の下にある小さなスペースに目を落としてみたら、一つの石を見つけたわ。

「こっちには……イザナギオブジェクト?」

「え、嘘。見せて」

 小さなスペースから石をとり出してみたわ。途中、私が被っている蓮子の帽子が落ちそうになったけど、なんとか堪えたわ。

「それがイザナギオブジェクトなのですか?」

「ええ、まあ、拾ったのとほぼ一緒ね。前引き出しの中に入れてたのにいつの間にか消えていたのよ。何でここにあるのかしら? 魔理沙は何か分かる?」

「それは初めて見るな。またどっかで拾ったんじゃないのか?」

「うーん、そっかぁ……」

 魔理沙は現世にありそうな椅子で寛ぎながら答えたわ。

 やっぱり気になるわね。エニーの変な能力、まして周りにある物よりも気になるわ。

 私は石とにらめっこした。

「ちょっと貸して、メリー。試したい事があるの」

「いいわよ」

 蓮子に石を渡してみたら、蓮子はちょっと反応をして私の手に戻したわ。

「……あぁ……なるほどね。ありがとう」

「何を見たの?」

「あれ? 何がしたかったか分かったの?」

「貴女なら言いそうだからよ」

 好奇心旺盛の蓮子は試したい事は何でも試すのよ。やってみなきゃ分かんないよっていう思考の持ち主よ。

「そう? やってみたかっただけだったんだけど、ちょっと気分悪くなっちゃった。前のメリーみたいになるところだったよ」

「っ! 電波の何処が悪いのよっ!」

 多分、今の私の顔は赤いでしょうね。色んな意味で。

「いやいや……誰も電波は悪いなんて言ってないよ。言ってないけど……本当に気分が悪くなったんだよ。おかしくなりそうなくらい。まぁ、電波になるのも悪くないけど、ね?」

「っもう……」

 私はまた石とにらめっこしたわ。その時、丁度霖之助がこっちに来たわ。

「お、出来たか?」

「ああ。ちょっと混ぜた奴の具合が良くなかったみたいだったから、また混ぜ直しておいたよ。ちょっと変わったかもしれないから何かあったらまた来てくれ」

「分かった」

 石から目を離して魔理沙の方を見ると、魔理沙はミニ八卦炉を上投げしてキャッチの繰り返しをしていたわ。またその仕草がボーイッシュね。

「さぁ、話を聞かせてもらおうかな。そこに座って」

「ありがとう」

「ありがとうございます」

 私達はこの幻想郷に似つかわしくない不自然なソファに座り込んで、魔理沙はそのまま、霖之助は向かい側にある古い木の椅子に座って、ようやく話が出来る体勢になったわ。

 話しましょうかしら。



 ━━━━



「なるほどね。心狂いの鏡……ちょっと見てこよう」

「ねえ、エニー?」

 全部話し終わって霖之助が顎に手をつけて奥の部屋へ入っていったわ。その間にエニーの事を訊ねてみようかしら。

「何でしょうか?」

「さっき言ってた''音の声が聞こえる''っていうのはどういう事よ」

 魔理沙がこの質問に興味を持ったみたいで、背凭れに寄りかかっていた背中が起き上がったわ。

「確かに。どういう意味なんだ?」

「私もよく分かりません。地底に向かう途中で知ったものなので……」

「私の推測だと、私の目に触れたからだと思うんだ」

「あの時?」

「うん。あの時」

「あの時か?」

「あの時」

「……あの時って何だ?」

「ちゃんと聞かない方が悪い」

 この始末だとは思ってなかったわ。蓮子にしてはらしくない発言ね。ちょっと驚いたわ。

 またうぷぬしのめんどくさい症かしらね。

「こーりん、あったのか?」

 こーりんこと、森近霖之助が奥の部屋から戻ってきたけど、首を横に振って残念そうな顔をしてたわ。

「ないな……すまない。心狂いの鏡というものはない」

「そっかぁ……幻想郷にもないなら何処に行けばいいのかなぁ……」

 私はまだイザナギオブジェクトを持っているわ。ちょっと聞いてみようかしら。何処で拾ったのか。

「ねえ。これって何処で拾ったの?」

「イザナギオブジェクトの事かい? 何処で拾ったっけね……現世で拾った覚えはあったけど、どうやって手に入ったかどうかは分からないなぁ……しかも、用途の分からない石だし。よかったらあげるよ」

「いいの? なら貰うわ」

 元々、私の物だしね。蓮子、まさか私がこれを桂川に投げ捨てただなんて思ってないかしら?

「なぁ、マエリベリー」

「何?魔理沙」

「お前の聞いた声ってどんな声だったか分かるか?」

「え……んーと、ちょっと低かったかしら」

 魔理沙は口元を片方だけ上げてにやりと笑ったわ。何か心当たりでもあるの?

 場の空気が一気に変わったわ。

「よーし! なら探しに行かなくちゃな! まずは探し物の専門家に協力願いを出さなきゃな!」

「えっ? どういう意味なの!?」

「私に心当たりがあるって意味!行こうぜ! あ、お代はまた今度な!」

「ああ……」

「魔理沙、待ってよー」

 魔理沙はそのままの勢いで店の扉を開けたわ。私達もそな後に続いたわ。

 魔理沙って蓮子みたいね。いつも引っ張ってばかりよ。



極「メリー、あれは流石に説教レベルだからね?メリーだからしないけど」

メ「あ、ごめんなさい」

蓮「やっぱり納得いかないね……」

極「まぁ、ね。エニーの事も楽しみにしながら、このつまらない小説を読んでいってくださいな」

蓮「ねえ、うぷぬし」

極「何?」

蓮「ネタ、尽きた?」

極「……また会う日まで」

メ「図星みたいね」

極「二人共……酷い」

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