第一一九話 秋の桜の花弁なくして、無音なし
話数の標示を変えました。
全部変えるの辛かったです……。
それと同様に、現七六話から話数がずれていたので、編集し直しました。
やはりこれも辛いですね……。
「何でこんな事しなきゃいけないのよー……」
「仕方ありませんよ、総領娘様」
天子や文達がただの土になったコスモス畑に手入れしているところを遠くで見つめている。
あの勝負は白星だったんだけど、それなりの代償が待っていたんだ。それがあれ。
「本当手伝わなくていいのですか?」
「ええ。荒らした人だけがやれば十分よ」
「は、はい……」
エニーが遠くで愚痴を言う天子達を見ながら眉を寄せた。
「そういえば、蓮子。何でこいしちゃんの事分かったの?」
「何で?」
「いや、だって。そんなふうに言ってたから」
「そうだっけ?でも、知らない事はないよ?」
あの時、メリーを攫ったさとりの妹である無意識の妖怪がいるって聞いてたから、メリーの言った''こいしちゃん''はその子だって思ったんだ。
「そうなの? 何で?」
「何でって……あの後、メリーを追いかけて地底に行ったんだよ? でも、入れ違ったみたいだからさとりから情報を得たんだよ。その内容が''私の妹が貴女の大切な人を攫った''って。だから」
「そうなの?」
「うん。あ、幽香さん」
「何かしら?」
メリーの返事をスルーして、ずっと私達の会話を微笑ましくして聞いている幽香を呼んだ。さん付けにするのは明らに見て怖そうだから。因みに、幽香さんに自己紹介、私達の事情を話しているよ。あの時の反応は薄かったね。その証拠にあの笑顔である。
そうそう。実は、こいしちゃんと戦っていた時の幽香は本気じゃなかったんだって。『じゃあ、何で倒れちゃったりしたの』ってメリー聞いたら『ちょっと油断しただけ』と、意地を張って言った。
「幽香さんは花を大事にしてそうな感じだけど、何の花が好きなの?」
半分敬語で半分ため口で聞く。敬語とか慣れてないもん。仕方ないじゃん。
「どの花も好きよ。花にはね、それぞれ意味があるの。その全ての意味を知れば、どんな花も好きになれるのよ」
「じゃあ、つまりは幽香さんが全部の花が好きなのはその意味を聞いたからなの?」
「そうなるわね。でもずっと昔からよ。貴女達が想像を絶するくらい前」
「具体的に言えば何年でしょうか?」
「具体的ねぇ……分からないわね。昔、魔法を覚えようと魔法使いとかにつけ回してたのは覚えているけどね。完全覚えた後かしら?」
「凄いですね……」
忘れるほどの長生きさんなんだ……百年以上は生きてるのかな? それとももっと?
天子達が何だか騒いでいる。見た感じ、足でも踏まれたのかな?
「そういえば貴女達って誰かに似てるわよねー」
幽香が急に話を切り替えて、変な話になった。どうしたらそんな事を話そうと思うのかな? ま、別に悪くはないけどね。天子の有頂天話より増しかな。
「そう? 誰に?」
「誰かしらねー」
わざとらしい。
幽香は暴れている天子を上から見つめた。明らかに何か知っている顔だよ。
「隠してるでしょ。誰なの?」
「誰にも言うなって口封じさせられてるの。だから教えないわー」
「えー、ひっどー」
口封じするほどの大物なのかな?
私達はただただ、不思議に思うだけしかなかった。
「さて、話す事もないからあの人達をいじめてこようかしらね」
「いじめるの……?」
「ええ。私は弱い者いじめが大好きよ」
要にはドS? だからあんなに怖い笑顔なのかな? そう感じるだけ?
幽香は日傘を持って天子の方へと歩いて行った。
「どうしますか? 私達も比那名居さん達の手伝いをしますか?」
「うーん。あの人達じゃ何か仕出かすかもねぇ……」
「さっきも酷かったものね」
あの天子の荒振りは酷かったね。スペルを何度も唱えたし、その威力が半端なかったしね。ちょっとあれには耐えられなかったよ。爆風が特に。
「じゃあ行きますか?」
「うん。そうだね」
「おーい」
だけど、事はそう上手くいかないものだよね。誰かが私達を呼んでいるのを聞いて思った。
声は後ろから聞こえてきたから振り替えって見てみたら、空から箒に股がった魔法使い、魔理沙が降りてきた。
「久しぶりだな! 蓮子、マエリベリー……誰だ? よっと」
ふわりと着地をして箒から飛び降りた。今は肌寒い季節だから、マフラーをしている。ちょっと格好いい。
「ああ、私の友達だよ。エニー……いやいや。エボニー・セテントライトだよ」
「初めまして!」
名前を間違えても聞かなかったようにスルーするエニーの心が広すぎて素晴らしい。メリーとは大違いだよ。
「うん……? 蓮子か?」
あ、魔理沙には何も言っていなかった。何せ、今会ったばかりだからね。知らないのも当たり前だね。
「あー! これはかくかくしかじか……」
「ほう……なるほどな。つまりは、こっちが蓮子でこっちがマエリベリーだな?」
「うん」
この小説で初めて''かくかくしかじか''が便利だと思ったよ。言葉の力は大いなる。
「それでその……心狂いの……鏡って言ったか? それを探してほしいのか?」
「まぁ……正確に言えば、それがある場所かな?」
「どっちも同じだろ」
私も思った。自分で言っておきながら意味を分かっていなかったなんてね。
「霧雨さん。今思ったのですが、何故ここを通ったのですか?」
エニーの言葉に共感した。何でなんだろう?
「ちょっと魔法の研究に飽きてな。気分転換に一っ飛びしてたら茶色い畑が見えたものだからな、不思議に思って来てみたらお前達が居たってわけさ」
「へー……」
って事は、偶然なんだね。でも偶然でもよかった。なるべく早く戻らないとここに来た意味もなくなるし、私達おかしくなりそうだよ。
「ま、そんな事は置いてな。まだ陽は高いな。ならば今日中にぱっぱと済ませるぜ!」
「今日中に? 大丈夫なの?」
「大丈夫に決まってるだろ? 何ったってこの魔理沙様だぜ?」
「どうだろうなー」
魔理沙は焦りの顔が隠せなくなった。自業自得だね。仕方ないよ、魔理沙。
「と、とにかく! 早く行こうぜ!」
「何処に?」
「道具の専門家が居るんだ。そこに行くのさ!」
随分と焦ってるね。ちょっと冷やかしすぎたかな?
遠くで悲鳴が聞こえてきた。幽香のいじめは酷いねぇ。
「そうなの? ここから近い?」
「歩けない距離ではないが、少し時間がかかるな」
「そうですか。なら行きましょうか! 思い立ったが吉日ですよ!」
「お、おう。行こっか!」
私達は鏡を探す前に小手調べとして、再び心狂硝子についてを学ぶ事になった。
また天子の悲鳴が聞こえてきた。
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「あー……行ってしまいましたか……」
「また今度、探しましょうよ。文さん」
「そうですね。まずは早くこれを片付ける事ですね」
「その通りです」
土しか見えなくなった地面に種を蒔くだけの作業なのですが、これだけの広さがあると時間がかかるものです。
文は不思議な外来人の取材が出来なく残念がっています。
「やっと会えたと思ったのですがねぇ……ちゃんと考えて行動せねば……」
何かを思う文だった。




