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秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第七章 心狂硝子 ~ I Am You,You Are Me
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第一一八話 折れる茎に弾幕

「マエリベリーお姉ちゃん! やった! やったよ!」

 飛びっきりの笑顔の背景にはコスモスがへし折れて、風が吹いても全く動かないわ。

「え、ええ。でも、あの人はどうしたのかしら?」

「んー、多分何処かに倒れているよ」

「大丈夫なの?」

「私とおんなじ妖怪だから大丈夫だと思うよ」

 妖怪は頑丈なのね。あれだけ攻撃を受けても生きていられるなんて。私、人間だからあの一撃が当たっただけでも死んじゃうかもね。恐ろしいわ。まぁ、そんな羽目、夢で何回も会っちやっているけどね。

「へー……後で『復讐よ!』みたいにならないかしら?」

 一番心配なところよね。一番困る事でもあるわね。

「確かにー……早く逃げよっか!」

 凄く悪い事をしたのにこんなに平気でいられるのは驚異的ね。

「え、ええ」

 それでも、死ぬよりも増しだけど。あれ? 私、あの人に謝りもしないで逃げちゃうの?

 私はこいしちゃんに引っ張られてこのコスモス畑から出ようとしたら、声がそれを引き留めたわ。

「ちょっと! 誰なの!? こんなに荒らしたのは!」

「え?」

「貴女達ですね!容赦しませんよ!スペル! 霧符『ガシングガーデン』!」

 誰も荒らしただなんて言っていないのに、勝手に攻撃をしてきた女の子。実際、荒らしたけど。

「えっ!? ちょっと!? ……うぐぅ……」

 こいしちゃんは苦しんだわ。とても唸っている。

 あの子は誰なの? あの人と同じく花を何処となく大切にしている子に見えるわ。でも、あの人と違うところは攻撃方法ね。見た感じ、毒かしら?

 私は何もなってない。その事に驚いたのか、少し動揺しているわ。

「貴女……」

「私?」

「うん、貴女。私の毒が効かないって……どんな免疫力なの?」

「逆に訊ねられても……答えられないわね」

 蓮子の事あまり知らないもの。秘力の事は知ってるけど、こればかりは初めてだから分からないわ。

「そう、なら後で幽香さんにしっかりお仕置きを受けてもらいましょうか」

「ちょっと!? 何でそうなるの!?」

「こんなに荒らされちゃあ、お仕置きも酷いんだろうなー」

「答えになってないわ!」

「だって、毒も効かないくらいなら結構丈夫な筈だよね。だから」

「毒が効かないからって言って丈夫ってわけじゃないの!」

 わけの分からない理屈だわ。免疫は丈夫かもしれないけど、体が丈夫っていうわけじゃないんだから。困ったものよ。

 女の子はどんどん前に進んでいる。私はそれに押されるかのように後ろに下がっているわ。

「とにかく! 罰はちゃんと受けなさい! 毒符『ポイズンブレ━━」

「させるかー! スペル! 気性『勇気凛々の剣』!」

 赤い大玉弾幕が女の子に目掛けて走ってきたわ。不意を突かれた女の子はその弾幕に当たって吹き飛ばされてしまったわ。

 曲線になっていたコスモスの茎が直線に伸びて地面にぴったりとくっ付いた。

「痛ぁ……ちょっと……誰なの?」

 遠くで飛ばされた女の子は起き上がって痛がったわ。

「誰も何も。私は私よ!」

「貴女は誰なのかって聞いてるの!」

 あら、さっきの声、何処かで聞いた事あるわ。何処で聞いたのかしら?

 その声がした方向、あの女の子と対称の方向を向いてみたら、声と同様に何処かで見たことある姿だったわ。

 その人はある程度進んだら立ち止まり、手を腰に当てて威張ったわ。

「あー、そういう事ね。あの偉大なる天人というのは私の事、そう比━━」

「蓮子!」

「ちょっと! 今いいとこなのにっ!」

 威張っている人は放っといて。

 同じ方向から本来、私の声である筈の声が聞こえてきた。やっぱり逆転したままだったわね。目を覚まさせてやりましょうか。

 威張っている人が出てきた所から私である筈の蓮子が飛び出してきたわ。その後に続いてエニーや知らない人も出てきたわ。

「蓮子……」

 何だか蓮子が自分の名前を言っているって気持ち悪いわね。私が言うべき言葉なのに、逆転していると逆に呼ばれる側なのよ?

 蓮子は折れているコスモスの上を走って私の元へ来たわ。後からエニーもついてくるけど、そんな事は気にせずに蓮子の目をそっと触れたわ。私の目なのに自分で''蓮子の目''って言うのは、やっぱりちょっときついものね。

「はい蓮子、お疲れ様」

 何故だか知らないけど、私のビジョンが目に触れる事で共有出来るように蓮子の秘力も共有出来るみたいなのよね。私達、不思議な部分が多いわね。

「おっと……メリー! 大丈夫?」

「ええ、平気。そんな事よりこいしちゃんが……行きましょ!」

 そうよ。突然の攻撃だったから大事な事を忘れていたわ!

「こいしちゃん? あ、うん」

 こいしちゃんを知らない筈の蓮子が分かったような言い方をして、私に引っ張られたわ。

「く、くぅ……」

 こいしちゃんは今でも苦しんでいる。弱った子犬のように小さくなって助けを求めているわ。

「こいしちゃん!」

「マエリベリー……お姉ちゃん?」

「ハーンさん! 宇佐見さん! 危ないです!」

 私と蓮子がこいしちゃんの元に来た途端、エニーが私達を伏せさせようと、倒れてきた。その衝撃で私達は地面に叩きつけられたわ。その直後、爆風が起こり、目に砂が入ってきたわ。勿論、痛いわね。

「総領娘様、私も援護します!」

「うん? 別にいいのに」

「いえ、たまには私も戦いたいものでして。スペル! 雷符『ライトニングフィッシュ』!」

 この感じだと、また爆風が起きそうね。ずっと伏せた方がいいわね。

 その考えは正解だったわ。

「なら私だってやるわよ。スペル、冬符『フラワーウィザラウェイ』」

「何も出来ない人間をいじめるのはよくありません! 椛も行きますよ! 『幻想風靡』!」

「わ、私もですか? 分かりました! 牙符『咀嚼玩味』!」

「え、それは不可能弾幕インポッシブルスペルカードでは……」

 この花畑を吹き飛ばすほどの大爆風が起きたわ。



十一月も終わりますね。


※お話の舞台は十月です。

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