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秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第七章 心狂硝子 ~ I Am You,You Are Me
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第一一五話 秋桜畑

 昼の光が真っ盛りの時刻。

 私達は秋のコスモス畑に向かっていた。文からの上空情報によると、後、五分でそこに着くらしい。

 メリーの状況がまずいって言ってたんだから急がなきゃ!



 ━━━━



「マエリベリーお姉ちゃん……大丈夫?朝だよ? ……生きてる?」

 私は今まで何を?こいしちゃんに引っ張られてからの記憶が全くない。

 東から来る眩しい光の空の中に星が輝く。

「うーん? ……生きてるわよ……」

「よかったぁ! 私、色んな場所探してたんだけど中々見つからなくて……だから、多分安全なこの花畑で休憩してたら、マエリベリーお姉ちゃん、起きなくって。もう暗かったから野宿する事にしたの!」

 こいしちゃん、私のためにそんなに頑張ったのね。

 寝ていた体を起こしてすぐに私の頬をくすぐったのは風と細い緑色のものだった。

「コスモス……」

 上を見上げると、見事に大きく育ったコスモスの花が見えた。花畑って事は誰か管理者がいるのよね?だったらその管理者に会って挨拶しなきゃいけないわね。こんな綺麗な花畑の中で野宿しちゃったんだもの。

「綺麗だよね! お土産物に一本持って帰ろ!」

「え、ちょっと大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫!こそっとね、ちょっとだけね……」

 こいしちゃんは一番綺麗で背の高い所に咲いているピンク色のコスモスを豪快に引きちぎった。そして次のコスモスへ。

「マエリベリーお姉ちゃんねー」

「何?」

 自分で取ったコスモスの花びらを撫でて、無邪気に笑った。どっちも不純物が一切ないわね。

「私が間違えちゃったから気、失っちゃったの」

「間違える? 何を?」

「んー? 私の能力が強すぎてマエリベリーお姉ちゃんの気を失わせたの。何でそんな事しちゃったのかなー? うんー……」

 こいしちゃんは軽く握った手を顎に当てた。更に首を傾げたわ。

 コスモスは茎の根本を持っていたから、弧を描いと撓うわ。

「ちょっとちょっと? 私、よく意味が分からないわ。貴女の能力って何なの?」

 変な所をつい見てしまうのが私の癖。でも、現実に引き戻すのは簡単な事だから、そんなに悩んでいる事じゃないわ。

「あ、ごめんねごめんね!」

 小難しい顔はいきなり別の顔に変わってにこやかな笑顔になった。思わずこっちも笑みが零れそうになるほどよ。

「私の能力はねー、『無意識を操る程度の能力』だよ!」

「無意識を操る?」

 何だか分かるようで分からない能力ね。意識を操るならばまだ分かるけど。無意識だけ操るっていう事なのかしら?

「そう! だから、こんな事も出来る!」

「消えた!?」

「マエリベリーお姉ちゃんがそう思ってるだけなの。私はマエリベリーお姉ちゃんの無意識を操って、私を見る意識をなくすの」

 こいしちゃんは私の目の前から……違うわ。

 こいしちゃんが見えなくなったんじゃなくて、私がこいしちゃんを見る事が出来なくなったんだわ。考えてないとどちらも一緒に聞こえるけど、本当は違う。だって、こいしちゃんは今、私の目の前に居るんだもの。そうでしょ?

「なるほどね……」

「言うとね、あの時、この力が強すぎて周りに及ぼすどころか、腕を握られて直接繋がったマエリベリーお姉ちゃんは完全な無意識になっちやったの」

 子供には理解の難しい事をこいしちゃんが言った。それを聞いて背筋が寒くなったわ。だって、無意識って熟語の並びを見たら''意識が無い''って事になるのよね。私はこいしちゃんに腕を引っ張られた直後に意識が無くなった……って事になるのよね?

 もしかしたら私の能力もいずれこいしちゃんみたいに? ……蓮子、も?

 変な事を考えちゃったわ。

 こいしちゃんはにこにこしているのに、何故か気まずく感じた。話題を変えましょうか。

「ねえ、私ってこいしちゃんに会った事ある?」

 そう感じたのはこいしちゃんの発言だった。ちょっと違和感ある発言だったし……。

「覚えてくれてるの!?」

「いや、そんな気がするっていうだけで、あまり覚えてないのよ……何せ、夢で会ったのかもしれないし……」

「夢? ……でも、マエリベリーお姉ちゃん、私と遊んでくれたよ? 私、覚えてるよ? 確かにホンモノだったよ?」

 私は今までに見た夢を振り替えってみた。歪んだ鏡、逆さの城、神霊集いし寺、空を飛ぶ宝船、その前は? 結構の前に見たような……あの時かしら……。

「んー……何となく思い出したような……」

「本当に!?」

「ええ……確か……私からこいしちゃんの方に来たんだっけ」

 思い出してきたわ。夏に行った旅行の時だわ。

 皆は覚えているかしら? 覚えているのならいいわね。皆側と私達側の時間の流れが違うから、皆が覚えていても私達が覚えていないってケースが多いのよ。分かるかしら?

「そう、その通り! 覚えてるじゃん!」

「やっぱりあの時なの?」

「そうだよ! 姿は違うけどね」

 そうだったわ。まだ逆転したままだったわ。縛られていないから、つい、ね。

「早く会いたいわね……」

 陽はもう既に顔を上げていた。やはり眩しい。

 ふっとこいしちゃんの手元を見たら、強く握られて萎れちゃっているコスモスが細々しく生きているわ。

 背後に誰かいる気がする。見えない幻像がそうさせるのかと思ったけど、見える現実だと考えを変えたのはここにある土とそこに生える草を踏む音だったわ。

「何をしているのかしら?」



蓮子サイドがあんなに長くなるとは思っていませんでした。

メリーサイドはちょっとしかないですねw

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