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秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第七章 心狂硝子 ~ I Am You,You Are Me
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第一一三話 覚りの目

 緋い光線は丈夫そうなのに、並べられた家々の壁に当たると粉々に砕かれて、欠片が飛び散った。その量は半端じゃないよ。欠片は流星群のように散らばり、二人の敵に襲いかかった。

「く……これが''不可能弾幕インポッシブルスペルカード''ねぇ。私も欲しいわ」

「どうよ、そこの鬼と嫉妬娘。凄いでしょ?」

「ああ、凄いね。流石天人と言えるところだな」

「……ちっ」

 酷く激しい弾幕は地面を削り砂埃を立たせた。砂埃と化した弾幕は三人の足を消した。

「今のは何なの? 前に見たのとは全然桁が違うんだけど」

 前に見たっていうのは、前にここに来た時に魔理沙がスペルカードの弾幕を見た時の事だよ。あの時は星屑の弾幕だったっていう事もあっただろうけど、美しさの技っていう感じだったんだ。

 少なくとも、天子の撃った光線はそれに強さと混雑が混ざったような技に見えた。

「名付けて''不可能弾幕インポッシブルスペルカード''。今でも逃走中である異変の根本的黒幕の確保用に作られました。……そろそろあの天邪鬼の道具も、魔力切れになりますね」

「天邪鬼?」

「はい。貴女方達は小槌魔力異変の事を知っていますか?」

「うーん……覚えてないかも」

 一度誰かが言ってた気がするけど、しっかりとは覚えていない。覚えるのは得意な方なんだけどな。

「小槌魔力異変と言いますのは、去年の秋に起きた異変の事を指しまして、天空の逆さ城から突如打出の小槌鬼の魔力が湧きでて、あらゆる道具や弱く妖怪にも立ち向かえない妖怪達に大きな影響を受けさせた異変です。総領娘様の持つ緋想の剣には全く歯が立たなかったみたいですが」

「大きな影響って何?」

「大きな影響と言いますのは、道具であれば付喪神化にし、妖怪であればいつもよりも好戦的になり、強さも一層増すと言ったようなものが主です」

 質問は衣玖が全部的確に答えてくれた。

「しかし、何故そのような異変があったのですか?」

「下剋上よ」

「下剋上? 弱い人が強い人の上に立ったって言うの?」

 下剋上は今の社会でも起こり得る事だよ。こんな平和そうなところにも、下剋上争いがあるんだなー。

「ええ。私も影響されて、ついうっかり鬼に挑んだのよ。……まぁ、その下剋上は失敗に終わったけど」

「……その黒幕が逃げているって事は大変ね。しかも、去年でしょ?」

「今では奴が何処で何をしているかは誰も知りません。異世界に行ったとも噂が立っていますが」

「へぇ……」

 間が空いたつもりだったけど、間は潰された。まだ戦闘は続いていたからね。

 拳と剣がぶつかり合って、衝撃波が生じた。

「いつになったら終わるのかしら。鬼って倒す方法が分からないって言ったわよね?」

「誰かが止めない限り……終わりませんね」

「じゃあ、止めましょうよ」

「下手に動いたら巻き込まれます。鬼ですから。それにあれもいますし」

 あれって……扱い酷いね。多分嫉妬の事だと思うけど。

 止める事が出来ないなら、どうやって終わらせるの?

「爆符『ペタフレア』!」

 私がそう思った矢先に、太く、強力な光線が地面に叩きつけられた。その光線は熱く、周りの水分を全て蒸発させたように感じた。

 そんな光線があったというのに無事でいられたのは、天子が巨大要石を出して楯代わりにしたからだよ。

「あっぶな!! ちょっと! 誰よ! こんなやばいの撃ったの」

 もし、一秒でも遅れていたら大惨事じゃ済まされなかったかもね。

 でも、私でも視界に入ってこなかったから、対応出来た事が凄く感じる。

「折角止めてやろうと思ったのに、感謝はないの?」

「ないね」

「ひっどー!」

 要石が邪魔で誰が話しているかが分からない。もう、攻撃は止まったみたいだし退けてくれるかな?

 私は見えないと分かっていても、背伸びをして要石の向こう側にいる人を見ようとしている。エニーも一緒だよ。

「落ち着きなさい。私達は貴女達を刺激するつもりはありません」

「本当にぃ?」

「はい。なのでその岩を退けてもいいですよ。」

「あっそう……」

 要石を退けた、というより消した、が正しいかもしれない。

 消えた要石によって塞がれていた熱風が押し寄せてきた。それと同時に、地面に丁度降り立った三人の人が現れた。

「で、何なのかい?」

 握り締めた手を解いた鬼の人は降り立った三人の一人に聞いた。

「はい。その方達は貴女達を倒しに来たわけではありません。人探しをしているのです」

「人探し? 誰を」

「貴女の大切な人。そうですよね?」

「えぇっ!? な、何で分かるのよ!」

 そうだった。逆転している事を忘れていたよ。ずっと心情を語っていたから逆転の存在が綺麗に消えていた。

「すみません、自己紹介を忘れていました。私は古明地さとりと言います。こちらは霊鳥路空。そしてこちらは火焔猫燐です」

 さとりと空と燐ね。二人は呼びやすいけど、燐って中国人にいそうで呼び辛いね。

 いやいや、そんな事よりも聞く事があるよ。

「それで━━」

「何故分かったかですよね。私は心を読む事が出来るのです。なので、貴女達が来た意味を知る事が出来るのです」

「へぇ……」

 心を読む……嫌われても当然な事だね。この鬼や嫉妬の人よりも怖いかもしれない。

「そうかもしれませんね」

「わ、分かったの?」

「心が読めますから」

「そ、そうよね……」

 だったら、私達の事も分かったりするの?

「ええ。貴女とその人の事情も含め、思った事は分かります」

「貴女、何言ってるのよ」

 レティに言われてはっとした。さとりは私の聞こえる筈のない声を''視ている''。恐らく、あの''目''でね。

「あ、すみません。では、言いたい事を言います。雑談する暇もないでしょうし」

 さとりは全部分かっていた。ここで書かれていない想いも読んできた。

「そうしてくれると嬉しいわ」

「……残念なお話ですが━━」



投稿してから四ヶ月。長かったような短かったような……。

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