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秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第七章 心狂硝子 ~ I Am You,You Are Me
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第一〇七話 鳥居下入口

 私は奈落のずっと底にあるマントルと薔薇の世界に居る、住民の目の前にいた。居るだけよ。伝えるためには、それだけでよかったのよ。

 もう四日ね。私達入れ替わって。

 私が貴女で、貴女が私の劇は面白くてつまらないものだったわ。今は……面白いのかもつまらないのかも分からない、変な気持ちなのよ。

 それにはわけがあって、一から説明しないと分かりづらいと思うわ。視点を入れ換えながら、全部話しましょう。



 ━━━━



「さて! 終わった終わった!」

「今日も今日やる事が終わったわ……」

「何言ってるの。まだやらなきゃいけない事があるんだから。分かっているでしょ?」

 私達は最近色々と忙しいエニーを部室で待っていた。随分と昨日よりも冷え込んだ日だったけど、そんなに感じなかった。やっとエアコンが直ったらからね。電気関係専攻の人を無理矢理連れ出して直させてもらったんだ。手際よかったなぁ、あの人。『こんなの簡単すぎる』って言って帰っちゃった。流石……。

「勿論、知っているわよ。だからここに居るんじゃない」

 私のようなメリーの()はいつもの深緋。鏡で見るよりも綺麗に見えるね。秘力出してる時って、あんな()だったんだ。

「お待たせいたしました! 本当にすいませんでした!」

 酷く開けられた扉から午後の冷気が暖かい空気の中に押し寄せてきた。

「わぁ。室温が思った以上に暖かかったです」

「あ、いらっしゃい。待ってたよ」

 押し寄せてきた空気と共にエニーが飛び込んできた。エニーは色んなところが冷静なのに、たまに残念が含まれていてね。そこが主なイメージダウン要素。

「待たせてすいません。やる事を全て終わらせるのに相当時間がかかってしまったものなので、結果来るのが遅れてしまいました」

「凄く張り切ってるね……」

「それはそうですよ! 前は宇佐見さんに裏切られて行き損ねたのですから!!」

 またきついところを突いてきたね……。視線が痛いよ。誰か助けて。

「うぐっ……」

「だから、今度こそは行ける! と思ってうずうずしていながら用事を済まそうかと思ったのですが、例のごとくって事ですよ」

「それはお疲れ様ね」

 いつの間にかメリーが敵になってない? 気のせい?

「はいはーい。早く行きましょうかー」

 私は嫌な空間から逃げ出すために荷物を持って、廊下に出ようとした。

「分かりましたよー宇佐見さん」

「ちょ……待って」

 二人は素直に従ってくれた。



 ━━━━



「吸血鬼に月の住民、魔法使いに博麗の巫女ですか。何だかわくわくします!」

 行けるのですよ! 二人が見た、幻想に包まれし世界に行けるのですよ!! 秘封倶楽部でよかったです。この一年と半年ちょっとの中でも一番の興奮です! 下がった後の上げはいいものですね!

 私の興奮した心に鍵をかける事は出来ませんでした。

「でも、危ない所も多いのよ? 夢じゃないから怪我もするのよ?」

「大丈夫ですって! 観光してます! で済まされるのでしょ?」

「いや、そういう所でもないんだけどな……」

「そ、そうなのですか?」

 私から聞けば宇佐見さん達に対し、幻想の住民達は宇佐見さん達をウェルカムしてたそうですが。

「ん、ん……人柄的には大丈夫だよ。でも、何か飛んでくるのが危ないんだよねぇ」

「あぁ、あの弾幕って奴の事ですよね?」

「よく覚えているね。あ、着いた着いた」

 博麗神社に着きました。私ですら知らなかった場所です。……いや、宇佐見さんとハーンさんしか知られる事の出来ない所なのかもしれません。二人は神隠しの段階にいるのかもしれません。風が教えてくれているわけでもありませんが、そんな気がします。

「ここですか……」

 私は立ち止まりました。風が吹いています。私は耳を傾けて声を聞こうとします。


 ━━よおこそ。幻想郷の入口へ。


 そんな声が聞こえてきました。

「あれ……メリー、あれ見える?」

「……ええ、見えるわ。入口なんて、親切ね」

 二人が声を潜め、会話を始めました。何が見えるのでしょうか?

 その回答はすぐに浮かび上がりました。

「境界が見えるのですか?」

「うん。エニーは見えない?」

 目を凝らして見ますが、それらしいものが見当たりません。

「はい……そういえば、宇佐見さんはハーンさんの目に触れると、ハーンさんの見えているものが見えるようになるのですよね?」

「そうだね。じゃあ、触る?」

 二人にだけ見えて、私は見えないのは不公平です!

 私は宇佐見さん達の後ろを歩いていたので、急ぎぎみで前に出ました。

「じゃ、いつでもどうぞ」

 宇佐見さんはハーンさんの目を私に向けました。その目に触れようとしているのは、私の右手です。

「では、いきますね」

 目に触れてしまいました。

 私の手は少し触れただけなのに、静電気に似た衝撃が私の身を襲いました。

「痛!」

「うわっ!!」

 ばちんと音が鳴って、私の右手とハーンさんの目は静電気に似た衝撃により弾き飛ばされました。私は三歩程度後ろに下がり、宇佐見さんはバランスを失い、後ろに倒れこんでしまいました。

 しかし、静電気だけでこんな事が起こり得るのでしょうか?

「なななな、今のは何ですかっ!?」

「いったー……何、今のは……」

「二人とも大丈夫!?」

 ハーンさんは距離が空いてしまった私達を見ておどおどとしました。恐らく、どちらを助けるべきかが分からないのでしょうね。

「大丈夫です……あれが、境界ですか……」

 私は博麗神社の鳥居の中に黒く、不気味なものが見えていました。これがさっきまであったなんて思えません。

 しかし、痛い思いをして何かを得るというのも、悪くはありませんね。呪いと同じようなものですね。

「本当に何ともないの? 二人とも。私には何かが起こったようにしか見えないんだけど」

 実際、起こりましたがね。

「多分大丈夫大丈夫。エニー、見える?」

「はい。あの黒いものですよね?」

「合ってる合ってる。だ、け 、どっと!」

 宇佐見さんは掛け声だと思う、''だけど''を合図に立ち上がり、スカートについた砂埃を払いました。

「何だったんだろう?さっきの」

「今になっては分かりませんね。取り敢えず、行きますか! それからでもいいと思います」

 早く行きたい気持ちが表に出てしまいました。

「そうだね……紫とかなら分かるのかな?」

「紫……八雲さんでしたよね? 確か、幻想郷の創作者である大妖怪でしたよね?」

「あれ、聞こえてた? ってよく覚えているね」

「ちゃんとメモをしていましたからね!」

 私の手帳は一から十まで欠陥なく、びっしりと書いてありますよ。後で見ますか? あ、ちゃんと読める字で書いていますから大丈夫ですよ。

「なるほどねぇ。それじゃ行こっか!」

「また、下を見たら地面がなかったなんてなかったらいいけどね」

「あー……そんな事あったね」

「落ちない事を願いましょうか」

「そうだね。それでは倶楽部活動開始!!」

 私達は黒い境界に向かって歩きました。いよいよ、ですよ!



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