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秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第七章 心狂硝子 ~ I Am You,You Are Me
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第一〇六話 鳳凰の風起こし

「あー……えーと。わけ分からない事言っちゃってごめんなさい」

「いや! 大丈夫だよ!」

 暫く経って、やっと話す気になれた。

 鳳凰が言った言葉の予測はたった。ただ、何でそうなるのかが分からないんだけどね。

「そっか、よかった。それで、帰り道の事なんだけど」

 そうだった。私達、帰らなきゃいけないんだった。早くしなきゃ。

「どうやって帰るの?」

 メリーの言葉ではっとして周りを見たけど、辺りは闇色。境界の中は黒いのが多いからあったとしても同化して、きっと分からない。

「簡単だよ。切り裂かれた道を見つけるんだよ。それまでの道のりが大変なだけであって」

「簡単じゃないじゃん……」

 見つけるのは簡単でも、それまでが難しかったら難しいに決まってるじゃん。

「じゃあ、そんな君達にヒントを与えようか」

 鳳凰はそう言って大きく羽ばたき、大きな風を起こし私達を叩きつけた。

「ちょっと! 何処に行くの!?」

 私は鳳凰が風を吹き付けながら上っていくのを見た。ヒントを与えると言いながら逃げるのら許さないからね!

「ちゃんとヒントは伝えておいたから、後は頑張って!」

 そのまま見えなくなった鳳凰。何も言ってないよ!?

「ちょっと!? ちょっとぉぉぉ!?」

 怒りたい気分である。誰かに当たっていい?皆に当たっていい?

 そんな怒りで溢れていたから、エニーの表情は認識出来なかった。

「宇佐見さん……ハーンさん」

 エニーが私達の名前を呼んで、やっと分かったよ。鳳凰の目的が。

「何か聞こえた?」

「はい! 三つあります!」

 風だよ。鳳凰が起こしたのは風だった。だから、風の声を聞く事の出来るエニーには風の声が聞こえた筈なんだよ。

「何なの?」

「まず一つ目は『他の目に映るもの』」

 他の目に映るもの……私達の事かな?

「二つ目は『夜空に映るもの』」

 私は空を見た。疎らの星、一つの月が浮かんでいるのが分かるわ。今のメリーの()……?

「最後の三つ目は『現世の己が居た筈の場所』」

 現世の己が居た筈の場所? よく分からない話だね。

 でも、場所って言うんだから、これもメリーの()だね。

「です!」

「空に映るもの……」

 星と月をずっと見続けていたメリーは首を痛めていた。上の見すぎには注意だよ、メリー。早く帰りたいのは分かるけども。

「どうだった? メリー」

「何故か月が宇治駅前を示しているわ。時間は八時四十八分二十九秒」

「宇治駅……? 何で?」

 ここは鳳凰の住んでいる場所なんじゃ?全く違う場所なのに現世の場所?

「知らないわ。私も吃驚したもの」

 ま、そうだよね。知ってた。

「そっか。それでぇ、最後の『現世の己が居た筈の場所』。分かるようで分からないなー」

「普通にそのままで解釈でいいじゃないのですか? それで駄目でしたら他を当たりましょう。取り敢えずは行動ですよ」

 エニーの発言は正しいと思う。何せ今、夜だし、何も居ないとは限らない。周りに妖怪やら何やら居たら大変だよ。私達食べられちゃうよ。

「そうだね。じゃあ……本来居た場所、鳳凰堂を探そうか。メリーよろしく」

「はいはい」

 神界っぽいで結界(現世)探し。いつもと違うっていうのもいいね。

 メリーは三歩前に出て、また空を見上げた。

「ここはー……同じく宇治駅前ね。八時四十九分三十秒」

「でも何故宇治駅前になるのでしょうか? 私達は鳳凰堂から来た筈ですよね?」

「さっきの風でいつの間にか飛ばされてたんじゃない?」

 取り敢えず適当に言ってみたんだけど、何故かエニーは納得してしまった。

「……鳳凰堂はあっちよ。行きましょ」

「どうして分かったの?」

「貴女よりは周りを見るからね」

 偉そうにしているメリーさんが地味に怖く見えた。夜空から見下ろしてくるヴァンパイアみたいにね。

「うわー……きついお言葉」

 私とエニーは先々と進むメリーについていったよ。メリーはまるで私がやるように、ぶつぶつ何かを言いながら歩いていた。

 まさか、知らない内に秘力が? となると、私ももうすぐだね。

「……着いたわ。丁度ここよ」

 意外に維持は出来てたみたいで、口調はメリーだった。

「ここ?」

 メリーに追い付いて傍に寄ってみたら、ちょっと嫌な予感がした。


 ━━がたっ


「「「えっ?」」」

 下っ! 下がっ!? ないっ!!

 前にもあったような気がするけど、いつの時だっけ? そんな事より下に穴がっ!

 私達は勿論、落ちた。

「ひゃっ!?」

「ぬぁっ!!」

「あわぁわ!!」

 結構落ちるかと思ったけど、地面が近かった。

「こっここは!?」

「ええとー、鳳凰堂の……外?」

「そう……みたいね」

 風が当たってくる。鳳凰の本当の風なのかな。

「ん……明日行こうか」

「木曜なのに?」

「大丈夫だよ! 夜に行けば!」

「また楽しみの始まりですね!」

「もう、戻ってもいいと思うんだけどなぁ」

「まだ時間かかりそうな気がするわ」

「えぇー……」

 鳳凰の風はギャップがありすぎた。ああ見えても、いい事しているね。



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