表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第七章 心狂硝子 ~ I Am You,You Are Me
100/148

第九三話 秘力の効果

「それで結局どうなったの?」

 私達はエニーよりも早く着いたから、部室で待ってるよ。相変わらずの高い声。

「キーパーが驚いてたからゴールしちゃったわ」

「なんじゃそりゃ」

 メリーの声は私の声。メリーよりも低いんだ。

「そっちは?」

「んー、まあまあ?」

 本当はまあまあどころかじゃないんだけどね。さっき話してくれてた事みたいになりそうだったんだ。っていうか流された。意識がふっ飛んだよ。それで気づいたらここに居たんだ。何仕出かしたかなぁ? まずい事だけは勘弁。

「そうなの?」

 今でも見える空間の皹が気になって仕方がない。この好奇心でどれだけメリーを引っ張ったかも、今になって思い出せない。

「うん。あ、それで━━」

 話がここで打ち切られたのは、この後、入ってくる人が来たからと思ったのは、当たり前だけど、その人が入って来たからだったよ。

「ただいま来ました、宇佐見さん! ハーンさん!」

「あ、いらっしゃい」

 はい、逆転。正直、誰も来てほしくなかったな。仕方ないけど。

 扉に背を向けて話していた私はエニーの方を振り向いた。一瞬見ただけだったんだけど、メリーの表情が驚きな表情になった気がする。逆転したからじゃないと思うんだけど……。

「えーと、こっちが宇佐見さんで、こっちがハーンさん……はいっ、すみません!」

 見た目で判別出来ない私達に戸惑わないよう、エニーは指を差して確認した。やっぱり難しいよね。これぞ、''大同小異''なのかな?

「いやいや、全然大丈夫だよ。それで……あれっ……」

「どうしたのですか? ハーンさん」

 エニーがこちらに歩みながらメリーに訊ねた。

 確かに、メリーの様子がおかしいね。どうしたんだろ?

 あぁ、なるほどね。そういう事だね。要には、私の言いたかった事をしたんだね。

「試した結果はどうなのかしら?」

 全てを察した私は、やはりメリーの声、口調で聞いた。直るなら直したいけど……いや、もしかしたら?

 メリー、ん。私の顔はこくんと頷いた。

「結果?どういう意味ですか?」

 私はわけを分かっていないエニーを置いてきぼりにし、メリー……いや、私の姿をしたメリーの目に手を近づけた。

「えっ、ちょっと? 何するの? 蓮子」

「今、ハーンさん、何と……?」

 今更メリーの事を察したエニーは戸惑っている。何たって、私達の事情を全て知っているエニーにとって、メリーが''蓮子''と呼ぶ事は予想外だもんね。

 私は試したくてしょうがなくて、エニーに構っていられないよ。何を試すかは、まだ秘密!

「私も試すのよ。きっと、大丈夫な気がするから」

「な、何を?」

「その内分かるわよ」

 さぁ! 私が私に触る瞬間っ! 皆さん、カメラの準備!

 誰も撮る人いないよね。分かってたよ。

 私は緊張しながら、私の目へとどんどん距離を積めていく。これで違ったら恥ずかしいなぁ。どう言い訳しよう?

 そして━━



 ━━━━



「はぁー! 秘力って凄いね!! 自分でも初めて知った事だよ!」

 私はメリー……何回間違えれば済むのかな?

 そう、自分の目に触れてみたんだよ。自分の()が深緋だったからね。もしかしたらっ!って思ったら本当になっちゃった!

 あ、分からない人に最初から説明しようね。

 まず、メリーが急に意思が変わったって言った事から疑問が浮かんだんだよ。でも、結縁が言う秘力の効果とは違うし、秘力のせいではないって思ったんだ。でも、あの時……そう、エニーが来てすぐに、自分の()の色が変わった事に気づいたんだ。秘力って、念じれば出てくるから、メリーにも出来る筈なんだ。これで分かった。多分。きっと、秘力のせいなんだ。

 そして、もう一つ自分の()の色が変わった事で、何となく思った事。それは、メリーも私と同じ事を考えたっていう事。まだ曖昧だったから、聞いたんだ。『試した結果はどうなのかしら?』ってね。結果オーライ。

 待って。私、メリーの目に触れて、メリーの見るものを共有したんだよね?幻像だけど。取り敢えず、''目に触れる''……。

「なるほどね、はいはい。分かったわ。となると、結縁の言ってた事が嘘になってくるわね」

「本当だね……」

 神にも分からない事ってあるんだなぁ。もしかしたら、よく分からなかったのかな?

 取り敢えず、秘力の効果は絶対にあれじゃない。

 何だか、謎を破りたくてうずうずしてきた! 今は、メリーに体を持っていかれているから、自分で試す事が出来ないけどね。

「ハーンさんも不思議ですが、宇佐見さんも不思議ですね……」

「ま、そこも私達の楽しいところだけどね」

 本音で言った。蓮子さんは嘘ついた事ないんだよ。

 でも、そんな事より……。

 稀に見える不思議なビション。今、見えている。これが、あの時メリーの見てたものなのかな? 何だか……五色の羽が舞い降りているのが薄々分かる。白、黒、赤、青、黄……何処かで見た事ある。確か……。

「さて……何処に行くのかしら? 蓮子」

「あ、うん。今日は稲荷大社に行くよ」

 考えていた事が打ち破られてしまった。今は活動の事を考えるべきか。

「稲荷大社? 伏見の所ですよね? 何故ですか?」

「神様に相談」

 神様っていうのは、竺紗の事だよ。結構便りになるんだよ。

「? ……あーなるほどですね。でも、今、神無月の中旬ですが、大丈夫なんですか?」

「あっ……」

 そうだった。竺紗は八百万だった。しかも、信仰も戻ったから、神議にも行ってるだろうし……あー!!

「どうするの? 蓮子」

「取り敢えず、情報かなぁ……」

「そうですよね。私、情報沢山集めてきますよっ! 行ってまいります!」

 エニーは凄い速さで外を出た。これぞ、電光石火かな?

「私達も行きましょうか」

「そうね。秘力、戻してもいいわよね?」

「大丈夫でしょ?」

 私達は人前に立つ度に逆転を繰り返しながら、鏡探索をした。すると、私達のそこそこの親友、早苗がね、

「大鏡なら知ってますが……」

 有力情報が手に入りそうな予感がしすぎて、時間を忘れていた。今は五時過ぎくらいなのかな? 今、探索するのは無理かも。ただ、夜ならば……。

「何処っ! 何処なのっ!?」

 この後、早苗に質問攻めになってしまった。ごめんね、早苗。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ