第九話 未来伏見稲荷大社
朝の夏の日射しが地面を暑く照らす。
「ふぁー」
「どうしたのよ。凄い眠そうだけど」
稲荷駅から降り、稲荷大社へ向かう途中、私が大きな欠伸をしていると、メリーにそのことを突かれた。
「どうしたのって……今日の朝まで起きていたんだよ? そりゃあ眠いよ」
「反動遅っ。眠いならあのときブラック飲んどけば良かったじゃない」
「それが急になって眠くなっちゃってね」
ついついと笑っているうちに目の前には完全に色が剥げて木目が見える鳥居が堂々と立っていた。
「へー、思ってたより大きいね」
「やっぱり変わっていないわね。少しは塗ったらいいのに」
「少しだけでも困るけどね」
「……さぁ、本殿に参詣しましょうか」
私達は桜門を潜った先にある本殿に向かった。
しかしメリーは手水舎には行かずそのまま本殿へ向かおうとした。
「あれっ、手水舎には行かないの?」
「それが水出ていないのよ。なんでかは知らないけど」
「ふーん。残念だね」
「そうね。着いたわよ」
昔、重要文化財に指定されていた本殿も、管理者がいなくなり酷くボロボロだった。最後に建て直したのが何時なのか、それくらい酷かった。
「二拝」
「二拍手」
「「一拝」」
私達はボロボロな本殿にあの夏野菜が枯れた事について拝んだ後、稲荷山を観光する。だけど━━
「メリー……」
「何?」
「疲れたっ!」
まさか稲荷山を巡るのに二時間以上掛かるとは知らなかった。先に言ってほしかったよ。今は末社を巡った後に待ち構えていた千本鳥居の中を通っている。
「早っ! 入ってから五分も歩いていないわよ!?」
「えー…」
時計を持っていない今、三分が三十分に感じる。それほど足取りが重い。
「しかもこれから登り坂にもなるのに……あのときのやる気は何処に飛んだのよ」
「だってここ少し暖かいんだもん。余計に眠くなる。あーねむっ」
「そんなに? まぁ……そう思えるかもしれないけど」
ここは植物が合成化した二十年ほど前からずっと放置されている神社のため、木々が鳥居と鳥居の間を埋め尽くして涼しいはずだけど今日は運悪く湿度が高い。だから並みに暖かいのだ。その暖かさがあって私に眠気が襲う。
余計なお世話だよ。
「うーん……メリー、あとどのくらい?」
「もう少しよ」
「具体的に」
「……二分くらい」
私はそれを聞いて溜め息を突いた。あと二十分も歩く事になるのかと思いながら。
━━━━
一方稲荷山の麓、本殿の方では一人の少女いた。
「うーん? 確かに来たと思ったんだけど……もう行っちゃったのかな?」
少女は手を顎に当てて考えこんでいた。
「んー。それともまだ千本鳥居の中かな? うん、きっとそうに違いない! ならあそこで待とうか」
そして少女は一瞬にして消えた。




