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この世界で  作者: 甘栗
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第68話 戯れるは悪意を持って

ガルシアさん。ボクは、この人と初めて出会った時から不気味な感じがする人だと思っていた。

なぜ、この人はこんな所に居るんだろうか? 予定にない事って何のことだろうかとか気になることがあり過ぎる。今もニヤリと口元に笑みを浮かべ、ボクを見ている。


「ああ。あア‼︎……出来の良い人形であろう君と戯れる事が出来るとは、なんと私はツイテいルんだロウか!? おお、オオ!! しかしだ。誰もがこの私を望まぬのだろう! そうだろう、そうであろうとも。私自身もこの様なことをするつもりは当初は毛頭も無かったのだから!?」


ガルシアさんは両手を広げて、天井を見上げて声を張り上げる。先程よりも、笑みが深くなっていく。この人は、何を言っているの? 突然の行動に、ボクは立ち尽くしてしまう


「だが、許してほしい。どうか、許してほしい!! お恥ずかしいことに、この私は我慢強くないのだ。あんな出来の悪い醜悪なモノだけが、目の前の人形と戯れる姿を眺めていて、私は既にダメだったッ。限界だったのだ!!」

「な、何を言ってるの!?」


ポツリと、ボクが小さく漏らした言葉が聞こえたのか、ガルシアさんが此方に視線を向けてくる。思わず、目と目が合ってしまう。それだけなのに、背筋が震え、一歩、後ろに下がってしまう


「ククク……キヒヒ。おや? ああ!これは失礼。つい興奮してしまった。なにせ、ヒト…君みたいなのと遊ぶのは久しぶりなものでね」


そう言い終え、だらりと腕を下げ一歩、また一歩とボクに近づいてくる。ゆっくりと、なんて事ないかのように自然と。そして唐突に、視界から消えた。いったい何処にと思ったら後ろから肩を掴まれた。


「ッ!?」


ガルシアさんは、ボクの耳元に顔を近づけると息を吹きかけられた。その行為に身震いし、鳥肌が立つ。咄嗟に背後にいるだろう男に後頭部からの頭突きをして、振り解く。くぅ、頭痛い。っていうか、何をするんだこの人は!? アレか、変態なのか!?


「姿形は少女のソレだが、内に宿した魔力は……いやいや、素晴らしい。ここまで濃密な蜜を宿したモノはそうそう居ない。さァ、もっと楽しませておくれ。 」


彼は鼻を抑えながら、ヘラヘラと軽薄な笑みを浮かべながら、そんな事を言ってくる


「ガルシアさん、いったい何がしたいんですか?」

「何、か。先程も言っただろうが遊びさ……さ、続けようか。君は如何したら、あの素晴らしい力を見せてくれるのかな?」


あの言い方は、ボクの力に興味があるってことなの? でも、ボクの事を『人形』と言っている。彼は何者なんだ? やっぱり何か知っているのか、それすらわからない。


「突っ立って、考え事とはな。シア君、イケナイな、それは油断のし過ぎだ。ほら、これで目でも覚ますといい」

「あぐっ!?」


また一気に詰め寄られて、お腹を殴られた。拳がのめり込み、そこから鈍い痛みが走る。殴られたお腹を抑え蹲る。


「まだダメか? ふむ。蹲るのは構わんがな、遊びにならんだろう? だから、しっかりしたまえ」

「いっつ!?」


髪を掴まれ、無理やりに立たされたかと思うと障子のある方へと投げられてしまう。

障子にぶつかり、破りそのまま奥の部屋へと転がっていく。髪を引っ張られたせいかズキズキと頭が痛む。ここで倒れていたら、また一方的にやられるだけだ。何とか立ち上がって反撃しないと


でも、どうやって? 何か、武器があればいけるんだろうか? そう思い、キョロキョロと部屋の中を見回してみると、あった。この世界にはあまり似つかわしくなき武器が飾られている。まだあの人の姿はこの部屋にはない。手に取るなら、今しかない。フラつきながらも立ち上がり、ソレを掴んだその時だった


「出てくるのが、遅かったからね……此方から来たよ」


そんな事を言って、そんなボクを嘲笑うかのように、姿を現した。そして、ボクが手にした物を目にして、ニヤリと口角を釣り上げる


「ほぉ、この様な辺鄙な所にそんな物があるとはね。魔族だからこそ、なのか? なんと都合のいい事だ。が、まぁ、何も感じぬということはただの刀か」

「でも、武器だ。貴方を斬るくらいは出来るはず!」

「ふ、む。確かに。出来るかもしれないね……成る程、『人形』の中にも素手ではまるで脆く弱いが武器を手にした途端に、強さを見せたモノもいたな。君もそうだったのか」

「『人形』って、何のことですか? ガルシアさん、貴方は何を知っているの?」

「『人形』は人形さ。クックック、なに、君の知らない事を知っているだけさ…さぁ、その手にした刃で私を斬ってみせなさい」


ボクは、地を蹴り、ガルシアさんへと向かって駈けながら、鞘から引き抜き刃を外気に晒させる。そのまま、ガルシアさんへと上段から斬りかかる


「そうだ。それでいい」


振り下ろし抜 た刃から肉を断つ感触が伝わってくる。傷口から噴き出す血を体に浴びてしまいつつ、戦慄する。斬られても尚、目の前の男は平然と、先程までと同じく笑っている


どう言うことなんだ!? なんで笑っていられるの!? 身体が大きく揺れて、倒れそうになるのを堪えて、ボクの手にする刀の刃を掴み出した。握られた右手から鮮血が刃を伝い零れ落ちていく。床に赤が、濡れて、その朱を滲ませて、広がっていく。その紅を見て、ドクンドクンと鼓動が高鳴っていく


「ほおら、捕まえた」

「なっ!? くっ、この離し放て!」

「ハッ、そう言われて、馬鹿正直に放す奴などおるまいよ」


刀を掴む手は力強く、ぐいっと引っ張り寄せようとしてくるのを足に力を入れて何とか踏ん張る。つか、直接、刀を掴むとかなんだよ!? なんで、平然としているの!?


「っ!? こ、この」


このままでは、力負けして、また一方的にやられるだけだ。それ位だったら、即、放棄した方がいい。そう判断し、刀を手放すと、ガルシアさんが後ろに仰け反り、バランスを崩しかけている。そんな相手に詰め寄り握り拳を作り彼の顔面へと殴り込む。見事に当たり、彼はそのまま、倒れた。


「オッ!?」


倒れた隙に、素早く部屋から出て、外へ飛び出す。庭へと降り立ち、振り返る

すると彼はいつの間にか廊下にいて、刀を刀身を掴んだままにし、その手から朱を垂らして、ただ静に笑みを浮かべて、ボクをジッと見つめてくる。


その姿を捉えただけなのに、背筋が震える。頭の中で警鐘が鳴る。危険だ。あの男は危ない。早く、早く倒さなくては、そんな考えが頭に過った時だった。ガルシアさんが刀の柄を握るとボク目掛けて、思い切り投げつけてくる。つい、反応が遅れてしまったが、身体を反らして躱そうとするも陽の光を浴び、白銀に輝く刃が、ボクの横腹を掠めて、地面に突き刺さった。


「くっ!?」


軽い熱が走り、横腹に出来た傷から血が流れてる。ドクンと心臓の音が耳に届く。足元を碧い光が走っていくのが見える。また、ボクの中から何かが抜け落ちていく。それが何なのか分からないがのが悲しいけど、今は、目の前の敵をどうにかしないといけない


「オオッ!? そうだ! それでイイ!!」


ボクの周囲に起きている変化を見て、眼前にいる人物は狂った様に笑う。碧い光が掌に集まっていく。

その時だった、廊下からドタドタと慌ただしい足音が聞こえてくる。音はこちらへと向かってきている。ガルシアさんも、その音に気付いたのか、怪訝な表情を浮かべて音のする方を向いた。


「シア‼︎」


ボクの名前を呼んだのは、一見すれば女の子と見間違えるような姿をした少年、アレンだった。真剣そのものといった表情で彼は手に持つ弓を構えて、矢を引き絞り、ガルシアさんへと放った。


「……」


彼は無言のまま、左手を飛んでくる矢へと突き出している。やはりそのまま手の甲へと突き刺さった。その突き刺さった手を掴み、引き抜いた。傷口から飛び散る鮮血などお構いなしに


「うわ、ウソでしょ!?」


アレン彼は驚愕のあまり、そう漏らす。ボクもそう思う。ガルシアさんはじっと引き抜いた矢を眺め、捨てるとゆっくりとアレンへと歩きだす。


「クククク、弓か。中々にいい腕だと思うよ。少年」

「それは、ありがと、ねっ!」


言い終えると同時にアレンは二発目の矢を放つ。ガルシアさんの眉間目掛けて飛んでいく矢を今度は右手を犠牲にして防ぐ。ゆっくり確実にアレンとの距離を縮めていくガルシアさんへとボクは駆ける


「ガルシアさんッ!!」


ボクが呼んだのに反応して振り返る。その顔に歪な位に笑みを貼り付けている。一瞬過った恐怖に耐えて、ボクはガルシアの顔面へと碧い光を放つ


「ーー!!」


光の奔流は彼の頭を飲み込み、そのまま、走っていく。アレンが、慌てて庭へと走るのが見える


「シア!? 危ないでしょうが!」

「ご、ゴメン……だ、大丈夫?」

「うう、なんとかね」


アレンに近寄り、声を掛けると非難めいた視線を向けられてしまう。その事に苦笑いで返し、ガルシアさんを見ると、頭があるべき位置に無くなっていて、そこから勢いよく血が噴き出ている。その光景に思わず目を背けそうになる


『フム……真逆、そこの私が殺されるとはね。成る程、素晴らしいな。素晴らしい力だ。クククク、流石はあの者が造った人形だ』


何処からか声がする。どこから!?


「シア、あそこ!」


アレンが指差すのは塀の上だった。そこにそこで鮮血を撒き散らしいる筈のガルシアさんが立っていた。嘘だ、だってガルシアさんはそこで死んで、頭の無い身体が、飛び散る血が、黒い靄へと姿を変えて、ゆっくりと消えていく。その異常な光景に唖然として立ち尽くしていると彼は嗤った


『今回はここまでか。他の邪魔者も来たしな。クックク。シア君。君とはいずれ、また出逢うだろう。その時はこの私とも遊んでおくれ』


そう言い残し、彼は消えた。ガルシアさん、また出逢う。その言葉が酷く恐ろしく感じたのは初めてだ。


「シア、無事か?」

「大丈夫? シア。アレン」

「無事なようだが、何があった?」

「おうおう、お前らさっきの音は何の騒ぎだ?」


リントさん達が、ボクらの元まで駆けつけてくれた。みんなの顔を見て、安心して力が抜けたのか、その場にボクは座りこんでしまう


ああ、でも、みんなに先ほどまであった事をどう説明しようか?

大変長いこと間を空けてしまい申し訳ございませんでしたm(_ _)m



少しでも読んで頂けたら幸いであります

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