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この世界で  作者: 甘栗
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第64話 隠者との邂逅

割れる音が聞こえて、周りを見渡してもどこかか割れてはいないようだ。その事に首を傾げる。なんだったんだろうか? 気のせい、かな?

それより、ボクの前で少女、リリーはここが故郷だと両手を広げながら言った。リリーが生まれ育った場所か。なんだろう。ここにある建物、何処かで見た覚えがあるような?


「ついてきて、会ってほしい人がいるの…いい?」


リリーが、ボクの手を掴み小首を傾げてくる。ダメがどうかと聞かれたらダメじゃないけど。そもそも、この村の事なんか知らないんだから、ついてくしかないと思う


「ああ、構わない。私たちはそのつもりだったはずだが?」


と、リントさんがボクが口を開く前に言った


「そう、だったね。うん、そうだった。みんな、来て。案内する」

「あー、すまぬが。ワシは村の中で待たせてもらうとしようかの」


と、カインさんが挙手しながら言うと、リリーがジッとカインさんを見つめ出した。二人がそのまま見つめ合っていると、リリーがハアと小さく溜め息を吐いた。


「ぬ? ダメかの?」

「ううん、わかりました。じゃ、行きます」

「カカ、すまぬな。彼奴にはよろしく言っておいてくれ」

「……むぅ、そう言うぐらいならくればいいのに」


そう言って頬を膨らますリリーを見て自然と頬が緩む。突然、視界が暗くなった。何事かと周囲を見渡すと翼を大きく広げたレジナルドがボクを見下ろしている


「レジナルド、どうしたの?」

「シア嬢」

「此処に来る道中で、お主から久しく会わぬ奴の魔力の残滓を何故か感じたのだ。彼奴、マクシミリアン姿はなかったにも関わらずな」


ボクから? それは、夢の中で会ったからだろうな。でも、マクシミリアンと夢の中で会ったからだと言っても信じてもらえないだろう。自分でもよくわからないんだし。それより、レジナルドはマクシミリアンの事を知っているんだ。


「レジナルドはマクシミリアンの事を知っているの?」

「ウム。嘗てはよく戦ったものだ。彼奴程に強き龍は他におるまいよ」

「そうなんだ」

「それで、シア嬢。彼奴とどの様な関係だ?」


どんな関係って言われても、困るな。知人、なんだろうか? ボクとしては友人が良いんだけど


「知り合い、かな? ちょくちょく小言を言われるけど」

「彼奴とか?」

「うん、そうだよ」

「そうか、して。シア嬢から感じたものについては?」

「えーと、あはは」


だから、どう説明したらいいかわからないんだってば!!


「フム、言えぬか。ならばいい、すまなかったな」


それだけ言って、レジナルドは飛んで何処かへと行ってしまった。どうしたんだろうと首を傾げる


「シア、行こっか? アレンが退屈してる」

「ええ〜、ミレイナだってしてたじゃないか」

「そんな事ない」

「あるよー。そんな事ある」

「ほれ、おめえら。ちゃっちゃと行くぜ?」

「「うるさい、オッサン」」

「オ、オッサン!?」


ミレイナちゃんとアレンの言い争いを止めようとしてオッサンが凹んでしまった。オッサン、哀れ。南無


それから、リリーの案内で村の中を進んでいく。何だろう? 全然、村人とすれ違わないけど。と言うか、村の中にいるのに凄く静かだ。普通なら一人くらいなら出くわすと思ってたけど、これってどう言うことなの?


「静か、だね」

「うん、アレンの言う通りかも。なんか静か」

「そう?」

「そうだな。まるで誰も居ないみたいに静かだ」

「そう? うんと記憶違いでなければ、みんな。どこかしらにいると思うけど」


リリーはボクらが疑問を口にするまで特に気にしてなかったようだ。ひょっとして此処ではこれが普通なんだろうか? どこかしらにいると言ってたけど、通り過ぎる家やら教会やらの中からも人の声とか聞こえてこないなんて、なんだか寂しい場所だと思えてきた


と、暫く歩いた後に視界に大きな建物が見えてきた。なんだろう? 白い建物で他と違い扉の部分が透明で、中の様子を見る事が出来る。中の様子を窺うとカウンターがあって、その前に並べられた椅子ある。その奥に通路が見えるけど、これって、ひょっとして病院とかかな? でも、こんな現代的な建物がなんであるんだ?


「着いた。この中に居ると思う」

「ここはいったいなんなんだ?」

「あの人の仕事場。昔からだいたいここに引きこもって何かしら作業してる」


リリーが扉の前に立つと、扉が勝手に開いた。


「なに!?」

「ほおー、すごーい」

「なんと、興味深いじゃないか!?」

「なんじゃこりゃ」


みんな勝手に開いた扉に驚いている。そんなに珍しいかな……あ、珍しいのかもしれない。ここ、異世界だし。そのまま中に入るリリーにボクは着いて行く。


「リリー。この村はなんなの?」


先を歩くリリーの隣に並びボクは尋ねた。異世界にあるはずのない自動扉。ここの照明もさっき、ボクらが中に入ってから点灯したりと、ここではおかしい。そう思い、ボクは尋ねた。リリーは何と答えてくれるのだろうか?


「なにって、私の故郷。外部との接触を避けた者達の暮らす場所。隠者の巣窟とか言われてたりするね」

「外部との接触を避け?」


外部との接触を避ける? 隠者の巣窟? ダメだ、サッパリ分からない。でも、外部との接触を避けるってどこかで聞いたような気がする


「そう。多分、あの人、ううん、父さんの方が詳しい」

「その人が、金の瞳の人を捜ように言ったんだ?」

「そう、だいぶ昔に言われて捜してやっと見つけた……ふう、長かった。思ったより長い時間がかかっちゃった。でも、それも、ようやく終わり」


リリーは感慨深そうに天井を見上げる。今日までの事でも思い出しているのかな? と、リリーが一つの扉の前で止まり、コンコンとノックした


「父さん。いる? 私、リリーだよ」

『おお、リリー! よく無事だったね。お帰りなさい。さ、中に入りたまえ」


その言葉を聞き、リリーが扉を開ける。机や床中にばら撒いたかのように本やら服やらスパナとかが散らかっていて足の踏み場がまるで無い。壁にはビッシリと何が書き殴られた紙が貼られている。うわぁ、これはヒドイ。そんな部屋に椅子に座ってこちらを見ている人が一人だけいた。黒髪で、青い瞳、ヨレヨレの白衣の下に白いワイシャツに黒のベスト、ズボンを履いている。うん、いかに医者とか研究者とかいった感じの服装だ


「リリー! ああ、会いたかったよ。僕の愛しい娘よ! ああ、君が無事なようでなによりだ!」

「わっ!? 父さん、やめて、恥ずかしい」


リリーを見るや否や、瞳を大きく見開き、突然、駆け寄りガバッと抱きしめた。リリーはジタバタと足掻いているけど振りほどけていない


「リリー、お帰りなさい」

「た、ただいま」

「何だか、我々はおいてけぼりだな」

「あ、はは。そうですね」


リントさんの言葉にボクは苦笑いをしながら答える。リリーの抱きしめている人がこっちに気付きゴホンと咳払いしてリリーから離れて、ボクを見て止まった。どうしたんだろうかと疑問に思っているとまるで何かに吸い寄せられるかのようにボクの前まで歩いてくる。ジーとボクの顔を見てくる。


「あ、あの。なにか?」


と、ボクの顔を反らせないように両手で押さえ込んで覗き込んでくる。この人の瞳の中に映るボクの顔は突然の事に怯えているようだ


「金の瞳。なるほど、コレは確かに本物だ。コレは生まれつきかね?」

「ア、ハイ」

「おお、そうかそうか」


マズイ。何だか分からないけど、危険だ。心臓がドクンドクンと早鐘を打ち鳴らしている。身体に熱が帯びる。見れば、瞳の中に映る自分の目が淡い輝きをーー


「父さん!」

「っ、シアから離れろ!」


リントさんが、リリーの父親をボクから引き離して間に立った。見れば、相手は驚いたのか目を見開き固まっている。


「シア、大丈夫?」

「うん、アレン。ボクは大丈夫。かなり驚いたけど」

「びっくりしたね」


暫く呆然としていたが、ハッとしてボクに頭を下げた


「さっきはすまなかった。許してほしい」

「あ、いえ。突然過ぎて驚いたたけですから」

「いや、あのような失礼な振る舞いをしたんだ。謝罪させてくれ。本当に申し訳なかった」

「あ、あの。許しますから。頭を上げてください」

「……ありがとう」


謝罪を受け入れたのに、リリーの父親とボクの間にリリーとリントさんが立っている。それを見て彼は苦笑いをしている


「なあ、大将よ。アンタは誰で、此処はどこなんだ?」


オッサンが小さく挙手しながら尋ねる。彼は苦笑いを止める。真剣そうな表情になると彼は答えた。静かに、だけどハッキリと


「そうだったね。これは失礼をした。僕の名前はオラヴィ。この村はその昔に外部との接触を断ち静かに暮らす事を選択した者達、魔族を自称した異界人の作った名も無き村だ」

随分と間が空いてしまい、申し訳ありません


少しでも読んでいただけたら嬉しいです

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