第6話 拠点へ行こう
11/9 『街』から、『町』に変更しました
「良いんだな?」
リントさんが確認してくる、良いも何もない
ひょっとしたら、助けられて、そのまま放置だってあり得たのに、誘ってくれた
それに、助けてくれた恩を旅団の中で返したい
「…わかった、私たちの拠点のある町まで案内する
ここから、三日掛かるが」
「あ、はい、わかりました」
三日、か
どんな場所なんだろ?
想像出来ない、とにかく頑張るぞ
くー、と音を鳴らし僕のお腹が空腹を訴えた
顔が、恥ずかしさのあまり熱くなる
二人は、僕を見てぽかんとした表情だ
「リント、まずは―」
「―ああ、食事にしよう
私も、腹が減ってきたとこだ」
「…す、すみません」
突然の事だった
ミリアさんが、僕を抱きしめてきた
柔らかな感触が、僕の顔に伝わってくる
これって、まさか!?
「可愛いわ、もう、サイコー!!」
「ミ、ミリアさん!?」
むムムむ、胸、胸がっ!?
僕だって、健全な男、ハッ、男じゃなかったや!?
今は、女だった!?
「もう、ちょー可愛い♪ウフフ♪」
「……すまない、可愛い娘を見ると暴走するんだ
普段は、マトモなんだが」
じたばたと暴れながらも、視線で助けを訴えようとしたら、リントさんからそんな言葉が出てきた
つまり、助ける気はないと
「……きゅー」
抵抗も虚しく、僕は、力尽きた
「ゴメンなさい、ちょっと自重が利かなかったわ」
「……いいんです」
クスクスと笑いながら、ミリアさんは謝ってくる
現在、宿屋の人に作ってもらった食事を部屋で食べている
ちょっと無理を言ったらしいけど
テーブルの上に置かれたメニューは、スープとサンドイッチ×2だった
リントさんは、さっさと食べ終えて出ていった
何故か、僕の隣に座っている
なんか、 疲れた
「でも、ありがと
旅団に入るって決めてくれて」
「むぐむぐ…いいんですよ、もぐもぐ、ごくん
お礼がしたいから」
「そう、優しいのね」
僕は、スープを飲む
美味しい、味の感想で余計なものはいらない
ただ、ただ、美味しい
それで、充分だ…と思う
「でも、シアちゃん?」
「もぐもぐ?」
「貴女、両親はどうしてるの?」
その言葉に、サンドイッチを食べ終えた僕は、止まる
…わからない、から
僕は、彼の提案に死にたくないから乗っただけ、帰ったら死神に消されるらしいから
「…分かりません、気づいたら
外にいて、説明した通りです
家族や僕の住んでた場所が何処にあるのか分かりません
僕が誰なのかは分からない」
「そう、失礼なこと聞いたわね
何か困ったことがあったら、頼ってね」
「ありがとう、ございます」
食事の後、僕らは宿屋の外に出た
途中、宿屋の人やお客さんと思える人にじろじろ見られたけど
なして?
やっぱり目立つの?オッドアイが?
「可愛い娘がいたら、誰もが見ちゃうわよ」
いやいや、ミリアさんを見てたんだ
だって、美人だし
そうだ、きっとそうだ
先に出ていったリントさんが、外で荷物を背負って待っていた
「来たか、では行くぞ
準備は?」
「ないわ、さっさと行きましょ?」
「…分かった、シアのことは任せた」
「ええ、任されたわ」
なんか、仕事が出来る人みたい
いや、会社とかでバリバリ~って、違うか
「そうだ、シア」
「?」
「君の落とし物だ」
そう言って、懐から取り出して渡してくれたのは刃の先が欠けたナイフ
あ、ゴブリンから奪ったヤツだ
無くしたと思ってたら、リントさんが持ってんだ
「拾ってくれたんですか?」
「あぁ、一応は君の荷物だからな」
それを受けとる、これは僕が初めて生物を殺す時に使ったモノ
無くす訳にはいかなかった
ナイフの柄を握りしめる
「ま、布で刃を巻いて隠しておけ」
手渡された白い布でぐるぐるに巻きつける
「じゃ、改めて出発よ
道中で、色々と教えてあげる」
「…いいの?」
「もちろん♪
だって、これからは仲間でしょ?」
「仲間、仲間か
ハイ!」
「あ、やっと笑ったわね
なら、行くわよ」
こうして、その場を後にした
これから、三日間歩くけども
魔法とか教わりたいな、無理かな?
分からないや
で、現在
拠点への道中。
僕は、二人に魔法を覚えたいと言った
「初歩的なモノなら、私も扱えるけど
シアちゃん、その前にいい?」
「なんですか?」
「貴女の魔力は、人にしては高いわ
エルフか魔族の魔力と同じくらいにね」
「そう、なんですか?」
「ええ、だから教える前に釘を刺すわ
魔法が暴発したら、危険だってことを」
危険、か
うう、それは大変そうだ
ケガじゃすまなさそう
「あらら、そんな怯えないで
きちんと覚えれば、大丈夫だから」
や、脅したのミリアさんじゃないか!?
非難の視線を向けると、口元を手で隠して、うふふと笑った
「魔力とは、魔法を用いて、世界に干渉する力だ」
リントさんが呟いた
それに僕は、思わず見つめた
足取りは相変わらずで、僕の方なんか見てない
「魔力は世界に対して払う対価でもある、何をしたいのかを訴える詠唱句
詠唱句を唱えて、それを起こすのに相応の魔力を払い、初めて発動される」
世界に干渉する力、詠唱句…あ、呪文か
「払う対価が、多ければ効果も強くなるが、術者が耐えきれずに暴発する場合もあるがね」
「エルフの中には、無詠唱――つまり、詠唱しないで魔法を扱える人もいるらしいわ」
「……へえ、そうなんですか」
「ま、私達人間でも、無詠唱は可能な筈とは、旅団長が言っていたがね」
旅団長、旅団のトップでつまりはリーダーさんか
どんな人なんだろ?
「旅団長さんは?どんな人なんです?」
「エルフの男性だよ、いい人だよ
逢えばわかる」
「はあ」
「ついでだ、団員は私とミリアは人間
団長がエルフ、もう一人いるんだが」
「何かあるんですか?」
「そいつはドワーフなんだがね、彼は…まあ、逢えばわかる
とにかく、今はその四人だったが、これからは君も含めて五人になるな」
そのまま何事もなく、三日が過ぎた
その間、魔法やこの世界の歴史について教えてもらったけど、歴史についてはサッパリだった
魔法は、魔力を込めすぎたりで発動しなかった
イメージも大事らしい、そう言う事は早く言ってくださいよ
その間、色々と自分の身体は女の子なんだと理解させられた…まあ、アレの日はまだ来てないけど
着替える時に見たりとか、慣れないな~
「ようやく見えてきたな、シア」
「…えーと、イメージイメージ
って、なんですか?」
「あそこが、私達の旅団がある町ー『アスビス』だ」
大きな壁に囲まれた町、前から見るとかなりデカイ
町の入り口は門となっていて、そこからしか入れないのだろう
なんというかな、ドキドキする
「さ、行きましょ?
私達の旅団に」
「はい」
町の中は、活気づいていて行き交う人々や、露店商の人たちで、ごった返していた
その間を、ミリアさんにはぐれないようにと手を握られていた
子供じゃないんだけど…って、今の僕は16歳だったっけ
大通りを右に曲がり離れて、さっきよりは人通りの少ない道にきた
「このまま、行ってあの奥に見える家が拠点よ」
指差す場所を、見た
その家の周りだけ家はなかった
もちろん、道は整理されていたけど
そこから離れた場所には、家が存在してるのに
「旅団長の気まぐれよ
あそこが廃墟で格安だったから、って、理由で買ったらしいけど」
なんだ、大した理由はないんだ
てっきり、あまり人がいなくて落ち着くとか
一般人と自分達の線引きとかか、と思った
「では、行こう
もう一息だ、それで辿り着く」
その言葉に、ハッとなって頷く
ヤバい緊張してきた
ミリアさんを、見ると笑顔で頷いてきた
繋がれた手が、暖かくて安心する
僕は、深呼吸し、歩く
ついに、着いた
拠点である、場所に
もう空は、夕陽の朱で染まり出していた
先に話を進めたくて、急展開となってしまいました
まだまだ暴走しますので
これからも、よろしくお願いします
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「ついでだ、団員は私とミリアは人間
団長がエルフ、もう一人いるんだが」
「何かあるんですか?」
「そいつはドワーフなんだがね、彼は…まあ、逢えばわかる
とにかく、今はその五人だったが、これからは君も含め六人になるな」
→今は、四人だったが、これからは君も含め五人になるな
です。ご指摘くださり、ありがとうございました。(14/06/14)