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この世界で  作者: 甘栗
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第59話 交戦を開始する

思わず、息を呑んだ。マーカスさんが呪文を唱えたかと思ったら、何処からともなく現れた瘴気が死体を飲み込んでいき、肉が骨が溶けて混ざり合っていき、あの魔物へと姿を変貌していった。身体が震えている。頭の中を多くの感情が過っていく。マーカスさんは、満足げな表情を浮かべている。その間にも、殺戮が続き、魔物が劈くような咆哮を上げて、所々で悲鳴があがっている。


「……なに、これ?」


なんでこうなったんだろうか? あそこにいる人が、わたしの知らない人だったならどれだけ良かっただろう。わたしはただ今、目の前で繰り広げられる悲惨な光景に目が離せないでいる。ただじっと目の前の光景だけに


「さて、話半分だったが、これでミリアの話は真実だったと証明されたがどうしたものか」


リントさんの声が何かを言っている。そうだ、ミリアさんに雄輔、それにジョージさんは無事なんだろうか!?


「マーカスに、あの鎧を身に着けた連中、それに例の魔物、か。……死人が魔物に変わり、ああなっちゃうなんてね。ありゃま、これはまた厄介なことで」

「ハサンを襲撃だなんて。マーカス、貴方はいったい何を考えて……!?」

「それより、隊長。あの鎧連中に覚えはありますか?」

「いいえ、私も彼らを見たのは初めてです。彼らは、何者かは私も分かりません」


ダメだ、ここでじっとしていてたら分からない。捜しに行かなきゃ。無事だといいけど。部屋を出ようとして腕を掴まれた。くっ、いったい誰が!?


「シア、何してるの?」


リリーだった。リリーがわたしの腕を掴んでいる。どうしてとめるの? わたしは、三人の無事を確認したいだけなのに


「リリー、離して。行きたいの」

「それは出来ない。貴女が危険な目に遭うかもしれないから」


わたしの言葉を小さく首を横に振り拒絶する。でも、行きたいんだ、行かしてほしい。そうねえ頼んでも彼女は折れなかった



「シア、どこに行く気だお前は?」


ハルトが声を荒げる。その声に反応してみんなの視線がわたしに向けられる。リントさんがわたしの前に立った。


「わたしは、ただミリアさん達が無事か知りたいんです。行かしてください!」

「そうか。心配になる気持ちは分からなくなる。このまま、ここに居続けて安全とは限らないしな」


その言葉を聞き、リントさんを見る。一度、窓の方を見てこの場にいる全員を見回した。


「リント、私は納得できない」

「だろうな。本音を言えば、同意見だ。だが、どうせ見つかるさ」


そう言って、リントさんは扉を勢いよく開け放ち、出て行ってしまった。足音が聞こえた後、何かがガシャガシャと鳴る音が聞こえてくる。何の音なんだろうと耳を澄まして聞いてみる。何かぶつかり、壊れる音がしてきた。リントさんは大丈夫なの?


「音が…止んだか。隊長、俺が先行して様子を見てきます」

「分かりました。ハルト、くれぐれも気をつけるように」

「了解」


シンシアさんと会話をし、わたし達を一瞥した後にハルトも部屋を出て行った。 先程の音って、たぶん、鎧の動く時に鳴る音だよね? つまり、あの連中は既にここまで来ている?


「シア」


と、突然にシンシアさんに話しかけられた。シンシアさんは以前会った時とは違い別人のように見えた。


「なんですか?」

「マーカスの目的は不明ですが、現状では戦力差があります。まともに交戦するのは危険でしょう。なので、我々は何としても逃げて、この事を軍に、国に報告しなくてはなりません」


それは、わかる。上手く逃げれればそうするのが妥当なんだろう。でも、そうしたら、マーカスさんはどうなってしまうのか。これ程の事をしてるんだ。お咎めがない訳がない。何も言えず、ただシンシアさんの顔を見つめるだけしか、わたしにはできなかった。


「それよりもまずは、ミリア達を捜さないとね。でしょ?」


と、優希は普段と変わらない感じでわたしの肩に手を置き、言った。そう、だね。今はそのことに集中したい。


「グルルルゥウウオオッ!!」


遠くから咆哮が聞こえる。その後に続くように悲鳴がする。ッ!? なんだろう、眼が、胸が熱い。ギュとキツく目を瞑り、胸を抑える。どうして、わたしとアレに何か関係があるのだろうか? 思えば、アレと会った時にお腹を刺されて、思いきり高い所から叩きつけられたりしたけど……ダメ、わからない。


「ユウキ、シアの周り、微かに光り出してる」

「あらま、ホントね。抑えが効かないのかな? 兎に角、私達も行きましょうか。隊長、それで構いませんか?」

「え、ええ。それより、この子は大丈夫なのかしら?」

「今のところは大丈夫なはずです。まあ、例の現象の前触れ、みたいな感じです」

「…そう」

「シア、移動するわよ?」

「う、うん。分かった」


疼く。ダメだ、治らない。目を開き、立ち上がり廊下に出ていく。周囲に用心しながら進んでいくと階段から通路までが壊れていた。その先にある玄関で二人の姿を見つけた。その足元には倒れて動かない鎧を着た人が二人。どちらも血を流し床に赤い血溜まりを作っている


「来たか」

「この二人は?」

「偶々、扉を開ける音が聞こえたのでもしかしたらと思い大慌てで降りたところを鉢合わせてね」


だから戦闘になったとリントさんは言って、肩を竦めてみせた。隣でハルトが溜め息を吐いているけど、どうしたんだろう?


「ハルト、何かあったの?」

「まあな、俺が駆けつけた時に一人に気を取られていて後ろから迫る奴にやられそうだったんだ。あの時、咄嗟に俺が割って入らなかったらどうなっていたやら」


それって危なかったんじゃ?


「そうだな、助かったよ。私自身、こんなとこで死ねないのでな…君は、大丈夫か?」


ハルトの頭を強引にワシャワシャと撫で回してから、私に尋ねてきた。正直なところ、まだ治らないけど気にしている場合じゃない


「はい。大丈夫です」

「そうか…また、眼が光っているがその事については今は言及しないでおこう」

「はいはい、お父さんが娘が心配なのは分かったから、ミリア達を捜しましょ?」

「むっ、誰がお父さんだ」

「あら、違ったかね?」

「もう、好きにしてくれ」


ゆ、優希。こんな時もからかわなくてもいいんじゃないかな? 思わず、苦笑いしてから。ふとリリーを見た。リリーは、船着き場の方をただジッと見ていた。気になることがあるんだろうか? 気になるといえばあの手紙の内容だけど。と、突然にこちらを振り返った。何だか諦めたように見えるのはなんでだろうか?


「待ち人来ずか。ま、あの人らしいといえばらしいか。ハァ」

「まだいたぞ。集合されたし」


奥、船着き場の方から四人現れわたし達を見て叫び、フルフェイスの兜を被り武器を構えてくる。手前にいる一人は大きな盾を持ち、槍を前方に突き出している。後方にいる三人は剣のようだ


「増援がくるかもしれません。早く突破しなくては」

「ど…して?」

「シア? 」


ジリジリと距離を縮めてくる。どうして、こんな時に邪魔をするんだ? 疼く。心臓が高鳴っている。熱が身体中を駆け巡る。熱くて仕方ない。


「あの娘。様子がおかしいぞ」

「待て、あの娘の容姿。あの方から聞いた特徴と一致する」

「それに、あの修道女の格好をしたエルフはまさか?」

「ちっ、あちらはやる気のようだな」

「どう…て、邪魔する…?」


どうして、邪魔するの? ボクは貴方たちに用なんか無いのに。邪魔しないで!!空に光が軌跡を描き、魔法陣が現れる。彼等はそれを見ても歩みを止めない。なら、倒すしかない


「空に魔法陣!? 対象を発見した。これより、戦闘に入る!!」

「各個撃破せよ! あの娘は危険だと聞いている!」

「ボクの、ボクの邪魔をしないで!!」


ボクの叫びに応える様に空から光を落とす。碧い燐光が漂う。倒す。倒して、三人を捜すんだ

申し訳ありません。遅くなってしまいました。

少しでも読んでいただいたら幸いであります。

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