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この世界で  作者: 甘栗
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第49話 さらば、戦友よ

 さっきまでは僕の周りを舞うように漂っていた光が、仮面の敵を指差すと、残光を描きながら駆けていく。それらを敵は、身を捩らせて躱したり、大剣を使っては防いでいく。仮面の奥の瞳で僕を睨んでくるのを感じ取った。瞬間、弾幕の中を駆け抜けてきて、一気に距離を詰められてしまった。

 マズイ、そう思った時に既に切っ先は僕の眉間へと迫ってきたが、僕と迫り来る大剣の間に魔法陣が割って入ってきてその攻撃を防ぐ。火花を散らしながら魔法陣とぶつかる刃。大剣で何度も斬りかかってくるけど、それを魔法陣が壁となり防ぎきった


「あら、思ったより硬い壁ね。こんな事も出来るなんて正直、驚いたわよ、お嬢さん」

「この、よくもッ!!」

「しかし、こう狭くてはいずれやられてしまうか」


彼女は、距離を離して、上を見上げる。そこには、光が、僕が開けた穴があった。光が敵を倒すべく、迫っていく。それらを先程と同じように躱しながら地を蹴り、跳んだ。


「逃がすかあァアア!!」

「なっ!?」


逃がす訳にいかないと光が束なり、荒れ狂う奔流のように上空にいる敵を飲み込み、そのまま天高く飛んでいく。

 轟音を鳴り響かせて、建物が大きく揺れる。新しく出来た大穴を眺めては、わたしの周りに集まってきた光に身を任せる。すると、足が地面から離れて浮き出した。ゆっくりと上へと上がっていく。飛んでいるというのに、普段なら感動したりするのに胸中には敵を倒さなきゃという気持ちでいっぱいだった


大穴を通過し、ゆっくりと床に足をつけ、周りを見回してみる。

ここは、気を失うまでいた礼拝堂のようだった。扉の近くで倒れていた何がゆっくりとした動きで立ち上がるのが見えた


「いた!」


僕の言葉に呼応して、光弾が彼女にぶつかり吹き飛ばしていく


「ぐあぁ!?」


無様に転がり、壁に当たり止まった。その手には剣が握られている。まだ倒せていない


「これは、どうやら覚悟を決めるべきか。だが、私だってそれなりに、修羅場は潜ってきた。負けるつもりは、ないッ!」

「まだ無事、なの?」

「はぁああ!!」


剣を肩で担ぐように持ち、走り、雄叫びを上げて襲いかかろうと迫ってくる。それを僕は、光を収束させて放ち迎撃した。光にまた飲み込まれ、壁に打ち付けられるのを見た


「……何の音だッ!?」

「リント、あれはシアじゃないかしら?」

「シア、なの? この宙に浮いてるのは魔力?」


みんなの声がする。そっちを振り向こうとした時に、わたしの視界を黒い影が遮った


「私を、ムシ、するなッ!!」

「――ッ!?」


思わず、息を飲み、身体を捩らる。頬を掠め薄く切られたのか血が跳び、幾つか金色の糸が宙を舞う。その糸が自分の髪だというのに気付き、相手の顔を見る。仮面には所々にヒビが走っていて、すぐにでも壊れてしまいそうだ、赤い髪がフードが外れたのか露になっている


「……ハァ、ハァ。どうした? 終わりか?」

「う、ウアアァアア!!」

「シア、落ち着け!!」

「リント、ユウキ、逃げなきゃマズイ気がする!」


リントさんが叫び、何か言ってくるのを無視してもう眼前へと迫ってきた大剣を後方へと跳び、躱してから天高く右手を掲げる。足元に浮かび上がる魔法陣。右手へと集まってくる碧い光、強い輝きを放ち出したソレをわたしは降り下ろした。


「………すまない、マーカス。皆、私はここまでだ。」


降り下ろした光が、敵を飲み込み、教会を破壊した。急激に倒壊していく中をわたしは、ただ立っている事しかしなかった。身体中を襲っていくこの脱力感のせいで、身体が言うことを聞いてくれない。スゴく瞼が重い。うう、終わったの? ヤバい、もうダメかも。でも、このまま寝たら死ぬってぜったいに、あ、もうだめだー





教会をリリーに言われるがままに、飛び出した私達が見たのは音を経てて崩れいていく光景だった。シアは、どうなったのだ? まさか、あの能天気娘はあの中にいるのか?


「ったく、手の掛かる!」

「リント、待って。あの中に飛び込むのは自殺行為よ」

「なら、見殺すのか?」

「落ち着いて。シアは、たぶん無事だと思うわ」


ユウキが、私の腕を掴み止める。この状況で無事だと? そんな訳がないだろうに。


「リント、私もそう思う」

「………」


崩れ、倒壊した教会は土煙を揚げている。そんな中で人影が浮かび上がるのを見た。シアか? 私は足元に気をつけながら近づいていく。人影が段々と姿を現した


「お前は!?」

「……やれやれ、困った娘だ。敵の前で、倒れて、眠るだなんてな」


動かないシアを抱えたローブを着た赤い瞳のイヌミミの獣人が、仕方ないなと言って笑うと、ゆっくりと私にシアを差し出してくる。それに素直に応じると彼女は、その場に倒れる


「何故、シアを助けた?」

「……私の戦友に、纏う空気が似ていたから、かもね」

「もはや、共に歩む事は、出来ないわね。伝えて、誇って頂戴、ウルブズの戦士を仕留めた事を、それが、別れの餞別よ、と」

「………考えておこう」

「お願い」


それだけ言うと、ゆっくりと瞳を閉じた。私はシアを抱えたまま、見下ろす。


「リント?」

「ああ、シアは無事だった。行こうか」

「……わかったわ。リリー、もうひとガンバりできる?」

「ん、わかった」


私達はその場を離れる事にした。シアが無事なら、今はいいとしようか




………あれ、わたし、どうなったんだっけ? 確か、仮面着けた人が襲ってきて、それから。ダメだ、お腹を刺されまくったのは覚えてるのに、そのあとが所々が思い出せない。


「目が覚めたか?」

「あれ、リントさん?」

「今回は焦ったぞ、まったく、君という奴は」



わたしはリントさんに負ぶられている。その事実に慌て降りようとするも力が入らない


「うう、ごめんなさい」

「気にするな、今は休め」

「……はい、ありがとうございます」

「いいんだ、気にするな」


なんだか、リントさんが優しい。申し訳ないけど、今は、この優しさに甘えよう。ありがとうございます。それと、おやすみなさい


「おやおや、お説教は無しなのかな?」

「茶化すな、ユウキ。……そうだな、今回の事で分かった事があるんでね」

「ほお? と言いますと?」


ニヤニヤと笑みを浮かべて寄ってくるユウキを無視して先に進み、夕焼けを眺める。そうだな、良い機会かもしれないな。それに私のワガママでもあるしな


「私の過去にあった事を話そう。そう思っただけさ」

「………え?」

「シアに、話す。そして、いや、なんでもないさ」

「リント、貴方はそれでいいのね?」

「ああ、もう決めたんだよ」


もう決めたんだ。これは私のワガママでしかない






「……まさかと思ってきてみれば、案の定か。彼よりも速く着いて交戦に入るも失敗と言った感じかな?」


僕が魔法で転移してきた時には、廃村にあった教会が見るも無残な姿を晒す中に彼女は眠っていた。所々に傷があり、血で赤黒く染まったローブ、彼女の愛用していた大剣は柄のみの状態で落ちていた。


「マーカス、どうした?」


彼が、僕の背後に立つ。僕は振り返らずに挨拶をする


「遅かったね

いや、正直こんな展開になるとは。シア君がこれ程とは驚いたよ。」

「シア? あの白龍が連れて行った娘か?」

「ああ、そうさ。アイリーンを殺したようだ」

「なん、だと!?」

「シア君が連れてかれてから話したろ? 何か特殊な魔法を使うと。アイリーンはそれに返り討ち、ってとこか」


ヨイショ、立ち上がり振り向く。彼は握り拳を作り震えていた。小声で何かを呟いている。


「アイリーンは、なんで俺より先に来れたんだ?」

「ああ、アイリーンにはここまで転移魔法で飛んでもらってね」

「そうかよ」


あらら、怒ってるよ。参ったね


「同志を失ったのは痛いが、それだけだ。そう、それだけなんだ。まだ計画は実行可能だ」

「………分かってる。分かってるさ」

「なら、いい。それに国だってあそこまでバカデカイ光の柱の出現に興味を示して調査に来る」

「どうだか。もし、それが真実だとしてもコイツはどうすんだよ? 置いてくのか、弔わないのかよ?」


弔うねえ、そうだね、連れてくべきだけど、アイリーンならこう言うだろう


「……彼女は、戦場で死んだ。戦って散ったんだよ、ウルブズの理念を汚す事は僕らには出来ない」

「ちっ、ああ、そうかい!!」


あらら、行っちゃったよ。手の掛かるなぁ、まったく。僕はアイリーンに敬礼してから、魔法を使い焼却する。許せよ、戦友よ


しかし、軍は何かしら動くかな? ユウキが同行してるみたいだし。ふむ、状況は更新。プランの見直しを検討しなくてはね。

戦闘描写は考えるのは楽しいと感じるのに、いざ文章にしたら難しいです

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