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この世界で  作者: 甘栗
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第46話 出発しよう

 わたしの前に現れた少女は、ジッとわたしを見つめてくる。突然のことにわたしは、何も言葉が浮かばなくてただ立ち尽くすだけしか出来なかった。


「長かった。でも、やっと見つけた」

「……君、は?」

「ほんとに、金色の瞳だ。居てくれた。良かった。」


わたしの言葉には応えないで、花が開いたかのように破顔させて言葉を紡ぐ少女。この子の誰なんだろう? あれ、でも、待てよ。確か、金色の瞳の人を捜してるっていう女の子の事を優希から聞いたような。

 ひょっとして、この子がそうなんだろうか? この子が優希が捜してるリリー? 色々と気になるところはあるけどどうしたらいいんだろうか?


「ね、ねえ、君は誰? もしかして、リリー?」


わたしが名前を口に出した途端に、大きく瞳を見開かして、口を閉ざしてしまった。これは、ひょっとして、警戒されてしまった!? いやいや、でも、出会い頭の第一声が「見つけた」よりかは、おかしくないはずじゃないか!!


「あの、優希は知ってるかな? 彼女から聞いたんだよ。」

「ユウキが?」


慌ててわたしは優希の名前を口に出した。それを聞き、小さく口が動く。


「そう、ユウキが。そっか。ええ、私はリリーよ。リリー・ベーヴェルシュタム。貴女みたいな瞳の人を捜してる」


やっぱりこの子がリリーなんだ。なら、何から聞いたらいいんだろうか?


「わたしはシア、シア・ポインセチアっていうんだ。よろしくね」

「シア・ポインセチア。うん、覚えた」

「ところで、リリーはどうして金色の瞳の人を捜してるの?」


腕を組み考えこんでしまうリリー。言えない理由があるのかな? うーん、でも、気になるし。捜してる理由も教えられずに捜してるなんてことはないとは思うんだけど


「父さんに、必要だから捜してほしいと言われた」


 ポツリと呟いた。思わず、わたしはリリーの顔を見た。リリーの瞳はわたしを見据えてくる。お父さんに言われたと言ったのか?


「どうして?」

「確認したい事があるんだって言ってた。とにかく、貴女には来てもらいたいんだ。いいかな?」


確認したい事、か。理由は明かせないってこと? うーん、どうしようか。それに、いいかと尋ねられても困る。朝にはここを出発して港町に向かう予定なんだから。付いてきてもらうことは出来ないのかな?


「リリー。ごめん、わたし達は朝にここを出発して港町に向かう予定なんだ。だから、今すぐにはリリーとは一緒に行けないんだ」


リリーは、ふむと呟いてぶつぶつと言っている。


「港町に向かう。なら好都合? いや、でも、そこからまだ予定があったら? シアの目的を優先する? ああ、でも………」


ええと、なんて声を掛けたものか。取り敢えず、わたしは自分の提案をしよう


「考え中のとこ、ゴメンね。取り敢えず、わたしと一緒に来る?」


チラリと一瞥し、また考えこむリリー。ムリとかかな? だったらどうしようか。


「分かった。一緒に行く」

「え?」

「一緒に行く。港町にはどのみち行く必要があるから」

「いいの?」

「うん」


リリーはコクリと小さく頷いて、小さな手を差し出してきた。その差し出された手と彼女の顔を何度も見てしまう。そんな挙動不審なわたしに小首を傾げてしまった


「握手。イヤな人?」

「ううん、イヤじゃないよ。ええと、よろしくね」

「うん。よろしく」


握手を交わしてから、朝になったら二人に紹介するから泊まってもらい、わたしの部屋に案内しようとした時だった。物陰から突然、誰かが飛び出してきた。


「!?」

「――シッ!」

「危ないっ!」


その人物は、ローブを纏い顔には仮面を被っていた。距離を詰めながら何かをわたし目掛けて投げてくる。鈍く光るソレが迫ってくる。突然のことに反応が遅れたわたしにリリーが飛び掛かってきた。そのままの勢いで尻餅を着いてしまった、


「あ、ありがとう」

「お礼は後、立って」


わたしから離れて立ち上がるリリー。その後に倣うようにわたしもなんとか立ち上がった。軽くお尻打って、ちょっと痛いけどそれどころじゃなそうだし


「避けたか、だが――」


そう言って袖から短剣を取り出してくる仮面の人物。誰なんだ? なんで襲い掛かってくるんだ? 身構えた時


「――おい、人の家の前で何をしている?」


リントさんが、家の中から姿を現した。仮面の人物はわたしたちとリントさんを見て短剣を握る手をだらりと下げる


「やれやれ、新手か。長いこと動いてなかったから俺も腕が鈍ったかね。今日は装備が心許ないし退散するか」

「逃がすとでも?」

「思わないよ。でも、今回は逃げさせてもらうわ。あばよっ!!」


そう言って、リントさん目掛けて短剣を投げつけるリントさんがソレを躱した時にはもう姿は見当たらなかった。


「外から喋り声が聞こえたと思ったら、襲撃に遭うとはツイてないな」


肩を竦ませてから壁に突き刺さったり、落ちている短剣を拾っている。その様子を呆然と立ち尽くして見守るわたし。


「どうした?」

「何してるんですか?」


短剣を指差しながら、恐る恐る尋ねる。リントさんはああ、と呟いてから笑顔で答えた


「武器として使うのさ。武器代の節約になって幸運だよ」

「……」

「ま、これはさておき。そちらの娘さんは?」


リリーの方を見て尋ねられた。リリーが軽く自己紹介してからわたしが優希の友達だと付け加えるとやや黙りを決め込み家の中に入れてくれた





「で、我々の道中に付き合うから、その見返りに、そちらの都合に付き合え。そう言う訳だな?」

「うん。」

「なぜ?」

「損はさせない」

「それはこちらが決める事だ」

「じゃあ、どうすれば納得する?」

「そちらの隠している事を明かしてもらいたいね」

「それはムリ」

「なら、この話はなかった事になるが?」

「ふむ、そう」


家の中に入ってから、リビングに招いてから二人はこの調子で問答を繰り広げている。リリーが同行すること自体は反対ではないらしいけど、理由が分からないから理由を尋ねるリントさんと、それを拒むリリーの構図と口を挟めずにいるわたしであった。口を挟んだところで、何と言っていいか浮かばないけど



「じゃあ、逆に質問。貴方は私の同行は嫌?」

「嫌かどうかは内容によるな」

「私は魔法はそれなりに使える。足手纏いにはならいよ?」

「む。そうきたか」

「しかもタダで同行する。報酬はいらない。どう?」

「タダ、だと!?………ぐ。だが」


そのまま唸るリントさんと、どこか勝ち誇ったように見えるリリー。どうなるんだろ?


「おはよう。なんの騒ぎかなぁ?」

「あ、優希。って、うわっ!?」


優希がリビングに入ってきた。わたしにそのまま背後からもたれ掛かってくる。背中越しに優希の温もりを感じる。いやね。優希のスキンシップだとはわかるんだけど、未だにわたしは慣れなくて、かあと赤くなって俯いてしまう


「ふふ。赤くなっちゃって、可愛いなぁ」

「ゆ、優希!? あ、あっち。あの子」

「ほいほい?」


わたしは、リリーの居る方を指差す。その指差す方を見て、止まっ


「リリー?」


優希の声に反応して、こっちを向くリリー。優希とわたしを交互に見てから、小さく微笑んだ


「久しぶり、ユウキ。元気?」

「え? ええ、元気よ。リリーは?」

「問題ない」


ゆっくりと優希はリリーに近付き、ガバリと抱き付いた。そして、そのまま頬擦りしている


「うわぷっ!?」

「リ~~リ~~~♪」

「うわっ!? ユウキ、やめて、恥ずかしいからっ」


離そうとして暴れるリリーとガッチリとホールドして離そうとしない優希。呆れた様子でその光景を見ているリントさん


「うりうりー♪」

「ユウキ、話を聞いて」

「心配したんだぞ~、このこの♪」

「あ、そっか。悪かった。ごめん」

「まったくよ。もう」



優希が、落ち着くまで取り敢えずそのまま見守ることにした。そして、落ち着いてから仮面の人物の襲撃とリリーの同行の件を伝えた。優希はリントさんが用意した紅茶の入ったカップに口をつけからリントさんに尋ねる。


「襲撃、ね。リントはどう見る?」

「さあね。判断しづらいな、奴さんがシアを狙う理由はあまり浮かばないが」

「予想でいいわ、私達の置かれた状況を踏まえての」

「ふむ、なら。………いや、憶測で物は言えないな。君はどう見る?」

「私?」


優希の言葉に、リントさんが「そうだ」と応える。ええと、目の前の人は優希だよね? なんか、別人みたいに真面目だ。リリーは黙って紅茶を飲んでいるし


「そうね、マーカスからの軽いちょっかいかなぁ?」


マーカスさんから? そんな事あり得るのだろうか? ダメだ、信じられない。違う、まだマーカスさんを信じたいから認めれないんだ


「根拠は?」

「なんとなく。貴方が来て挟み撃ちになったら逃げたみたいだし」

「いい加減だな」

「でも、分かってるのは襲撃者はまた来る。そうよね、シア?」

「う、うん。今回は逃げるって言ってたし、多分ね」

「なら、味方は多いに越したことなし、リリーを加えて置いても損はないわよね?」

「………分かった。君に任そう」

「任されたわ」


つまり、リリーは同行してもいいの? リントさんを見ると肩を竦ませた


「君を信用するかは道中で判断する」

「分かった。信用されるようがんばる」

「はい、では、準備して出発するとしましょ? なにせ、襲撃者が来る可能性があるわけだしね」

「了解した。シア、早く荷物を準備しろ」

「はい!」


わたしは、リントさんに返事をしてから慌てて部屋へと荷物を取りに戻るのだった



そして、場所を変えて現在はこの町唯一の出入り口である門の前に来た


「はい、準備は完了したわね?」

「うん。私は何もないから大丈夫」

「こちらも完了している」

「う、うん。大丈夫」


優希が確認を取り、それぞれが応えると満足そうに笑みを浮かべる


「では、出発しましょうか! 向かう場所はご破算、ゴホン……もとい港町『ハサン』へ」



ちょっと引っ掛かりを覚えたけど、大丈夫だよね? と、とにかく気にしない、気にしないぞ。気にしたら負けだよね?


そこでミリアさんと再会するんだから

やっと町から出発します。状況は更新されたのです。


もし少しでも読んで頂けたら幸いであります。



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