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この世界で  作者: 甘栗
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第42話 状況は更新された

あれから、暫く経ってからようやく目的地、アスビスはもうすぐそこといった辺りまで辿り着いた時の事だった


「そこの者たち、今すぐ止まれッ!!」


前方から、力強い声で制止するように訴えてくる。その制止するように訴えてきた人物は、手に大きな槍を持ち、甲冑を着ていた

わたしは、優希と顔を合わせるも優希は首を横に振ってくる。知らないようだ


「……山にある砦にいる軍の連中だ。確か、周辺の警備も任されていたのは覚えているが、ここら辺まで出張るのは珍しいな」


リントさんが、そう小さな声で囁いてくる。山の砦と言ったらクレインさんがいたな。あの人もいるんだろうか?

それを聞いていたオッサンが兵士の前までぐいと歩みでた


「なんかあったのかい? こんなとこでよ?」

「ああ、奇妙な魔物が出たと報告を受けてな。それで警戒態勢を敷いている。お前たち、何か知らぬか?」


ここにも、あの魔物が出たと言う事なのか? でも、そんな事は一切聞いてなかったけど。それともつい最近になって現れたとかなのかな?


「いや、知らねえな。悪いな、役に立てなくてよ。」

「そうか、わかった………む?」


男がわたしの方を見て、視線が止まった。何かあった? わたしは、悪いことしてないはずだけども

 そのまま、男がわたしの前まで歩いてきて立ち止まった。思わず身構えてしまう


「おや、お前もいたのか。また依頼か何かか?」

「あ、えっと、はい。その帰りだったんですが、町には戻れますか?」

「ああ、町に行ってよいが何が起こるか分からぬぞ」

「そうですか。あの、ところで、クレインさんはどうしてますか?」


恐る恐る挙手をしながら、尋ねてみる。片眉を釣り上げ、がしゃりと鎧が音を経てて腕を組んだ


「む? あの人は周辺を見回りに行っておるからな、戻ってくるのは日没前になる」

「わかりました。ありがとうございます。お務め、がんばってください」


そう言って、ぺこりと頭を下げる。すると「うむ」とか「むう」と頭上から変な唸り声がして気になって、チラリと見上げる

 なんか頬をぽりぽりと掻いて明後日の方向を向いている。どうしたんだろうか? 不思議に思いジッと見ていたら視線が合ってそっぽを向かれてしまった


「行くなら行くといい、私は忙しいのでな」

「あ、はい。ありがとうございます」


シッシッと手で払われる。訳が分からないけど、みんなが進んでいくのでその後についていく。ほんと、なんなんだろうか?

前に行った時は、兵士一同してわたしの事をぶつぶつと言ってたのに


「まあ、がんばってくださいとか言われて言われ慣れてなくて照れたんじゃないの?」

「そう言うもの?」

「ええ、そう言うものよ」


クスクスと笑いながら言う優希の言葉に、なんとなくそう言うもなんだろうと思う事にした。ミレイナちゃんがやれやれと、小さく呟いて溜め息を吐き呆れた表情を浮かべて見てきたのは気のせいだろう




ついに、着いた拠点のある町、アスビスに。町の喧騒は相変わらずなもので、行き交う人たちも同様にだ。魔物が周辺に出たと言うわりには特に変化は見当たらない。なんなんだろうか? 軍が嘘の通報を受けたとか?


「それ、ないと思うし」


隣でポツリとミレイナちゃんが呟いてきた。なっ、読心術か!?


「分かりやすい」

「そんなバカな」

「さて、拠点に行こうか。団長なら何かしら知ってる筈だ」


それだけ言ってリントさんが、先に行ってしまった。オッサンにハルトはその後に黙ってついていくし


「さて、私たちも行こうか。」

「はい、ビルマさん」


久しぶりに歩く拠点への道に何とも言えない気持ちになる。やっと帰ってこれたという安心感と、また優希やみんなと別れるのかと思い寂しさが入り交じった感じだ

 ふと何気なく目を細い路地に目をやると、小さな女の子がわたしを見つめていた。暗がりからのせいか、はっきりとは分からないが見た感じ幼い子供のように見えるけど、わたしは立ち止まり、見つめる。視線はわたしを捉えている。瞬きをあまりしないでただ、ジッと見つめてくる。小さな口が開き、何か言っているが聞き取れない


「ねえ」

「シア、どうしたの?」


肩を叩かれる、振り向くとアレンがいて、わたしの見ていた方を覗いている


「いま、女の子が」

「ほおほお、誰もいないみたいだけど?」


その言葉に思わず路地の方を向き直すも、そこには誰もいなかった。あれ? いま、確かにそこにいた筈なんだけど。うーむ。


「猫か何かでしょ。行こう行こう」

「あ、うん」


確かにいたんだけどな、それにあの唇の動きは、『見つけた』と言っていたんじゃないか?


遅れて拠点の前に着いたけど、みんなが入口の前で立ち止まっていた


「なにか、あったの?」

「……ああ、この貼り紙を見ろ」


ハルトが指差す扉に貼られた紙を見る。なんだろ、えーと


「『我思う故に、我在り』?」


貴方は、どこの哲学者だ。


「違う。その下だ」


その言葉に従って、下を見ると文字が書かれていた

『ちょっと出かけるから、またねん♪

追伸、シア君へ。家出はダメだぞ。パパエルフより』


頭を抑える。からかうのは大概にしてほしかったです。マーカスさんッ


「出かけると言ってるが、リント。場所は分からないのか?」

「すまないが、私が出る時には何も言ってなかったよ。まさか、依頼報酬を支払わせるつもりだったのが勘づかれたか?」

「ふむ、捜すしかないか?」

「さすがはマーカス。はっちゃけエルフの異名は伊達では無かったか」



それぞれが貼り紙を見ながら、言いたい放題に言っている。居ないのか、ミリアさんも、デイビットさんまで


「ああ? 珍しいな、ウチに客だなんてよ」


その声は、紛れもなく知っている人物で


「お、嬢ちゃんもいんのか。よく帰ってきたな、オイ」

「デイビットさん!」


デイビットさん、その人だった。手には大きな袋を持ち、背中に背負った大きなハンマーは

あのハンマーは初めて見たが


「デイビット、後の二人は?」

「ああ? 依頼だよ。ってか、ユウキまでいやがんのか」

「ええ、私がいたらイヤかね?」

「イヤじゃねえさ、メンドイだけだ」

「ねえ、依頼は何をするものなの?」

「…悪いがよ、言えねえな。言いたくないな」


えっと、デイビットさん? なんかあったのかな、なんか目付きが鋭い。突き刺すような冷たい感じだ


「そうか。すまないが、こちらの旅団には世話になってね。謝礼金を支払いたいんだが?」

「あん? チッ、分かったよ」


そう言って、手に持っていた袋を投げてきた。リントさんの前に落ちる袋の中には幾つかの鉱石が入っていた


「ソイツを売りゃ金になる。それでチャラにしてくれや

あとよ、リントに嬢ちゃん」

「どうした?」

「暫く戻れねえから、お前らは」

「――主には、幾つか聞きたい事があるのでな、教えて貰うぞ、デイビット!!」


頭上から声がしたかと思ったら、上空から誰かが降りてきた。その人物の顔を見るや、デイビットさんが舌打ちをした


「……テメエ、カインか」

「うむ、ワシじゃ。さて、デイビットよ。聞きたい事があるぞい

マーカスは何処におる?」

「チッ、メンドイな。じゃあな

カイン、状況は更新したんだよ!!」

「ヌシ、何を言うておる?」


そう言って懐から取り出した物を地面に叩きつけた。ソレからはもくもくと白い煙があがり、視界を遮った。かつかつと地面を蹴る音だけがした



「むっ、しまった!?」


煙が晴れた頃には、デイビットさんの姿は何処にも見当たらなかった

代わりに、立ち尽くしているカインさんだけが居た


「状況は更新された、じゃと? 彼奴ら、いったい?」

「あ、あの。カインさん?」

「おお、シアか。久しいのお」

「あ、はい。それで何かあったんですか?」

「うむ、あったのじゃよ。故にマーカスとデイビットを捜しておる。ようやく見つけたが、カッカッカ。まんまと逃げられたわい」


そう言って大笑いするカインさん。


「あの二人に関係がある事なのか?」

「む、然りじゃ。彼奴らめ、そう逃げられては疑わしくなるというのにのお」


リントさんは、カインを見据えて警戒している。


「さて、ワシの名前はカインと申す。ワシが彼奴らを追う理由じゃが」

「理由は?」

「うむ、ワシもミリアなる娘に言われただけで真偽は分からぬが」


ミリアさんが? ゆっくりとカインさんが口を開いた。その言葉にわたしは、驚愕した

 だって、そんな訳がない。信じられる訳がないじゃないか



「……あの妙な魔物、アレを彼奴らが怪しげな術で生み出しておるのに加担しておるそうじゃ」


そんな事、信じられる訳が

久しぶりの更新であります。

少しやっつけ感がしますが、ずっとこんな話が浮かんでて他の内容が浮かびませんでした。


少しでも、読んでいただけたら幸いであります。

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