第32話 森の中とゴブリンさん
マクシミリアン達に見送られてから、森の中を魔物が飛び出してこないかを警戒しながら、進んでいく
今一番出くわしたくないのは、『ドッペルゲンガー』。次に『レッドスライム』だ
レッドスライムは、スライムと名前が着いてるのが単純に理由だったりする
だって、某大作RPGのような可愛らしいモノじゃなそうじゃないか、レッドスライムって名前からして
どう考えてもゲル状の方な気がする
やだよ、取り込まれるのは。それだけは勘弁したい
「なんか、寂しい感じがする」
夕陽に照らされた木や地面は朱く染まっているからかもしれない
感傷的になってる場合じゃない、ブンブンと首を左右に振り気持ちを切り替える……つもり
後ろを振り向けば、まだあの城が見えてる。これなら、危険になったらまだ逃げれる
がさがさ、と前にある茂みから音がする。立ち止まり槍を構える
茂みを音をさせながら出てきたのは、まるで血でも浴びたかのように赤黒い毛皮をした狼だった
これが、『ブラッドウルフ』か
ブラッドウルフは、僕を見て剥き出しの牙を見せて荒い息を吐いている。やる気満々らしい
と、ブラッドウルフが天高く雄叫びをあげてから地を蹴り迫ってくる
落ち着いて、動きを見て攻撃しないと危険だ
ブラッドウルフが、口を開き噛みつこうと跳んでくる。それを僕は槍を振るい、柄を狼の顔にぶつける
「キャウン!?」
吹き飛ばしても、態勢をすぐに立て直したか
しまった。そのまま口の中を突きで当てればよかった。反省
今度は、夕陽を浴びて不気味に光る爪で襲い掛かってきた
それを、躱したらマズイな。速さはアッチが上だし、そのまま次の攻撃を許してしまう
ならもっかい柄を横顔にぶつける、吹き飛びすれど致命傷にはならない
槍なんだから、リーチを生かしたいけど
魔法を使うにもアッチが速いから危険だし
「グルルルッ」
唸りながら、僕を睨んでくる。餌にいいようにやられて不機嫌といった所か
喰われるつもりは更々ないけどね
最初に雄叫びをあげてた。仲間を呼ばれたかもしれない、なら、一匹の内に始末しないとキツくなる
少し、構え直す。いくら強くても、アレなら
ブラッドウルフが、駆けた。何の迷いもなく口を開き、その瞬間に僕は、槍をぶん投げた
「ッ!?」
槍は、口の中に突き刺さっている。突然の事に戸惑いを隠せないようだ
いくら強くても口の中とかは鍛えれないハズで
柄を握り一度奥まで突き刺してから、大きく見開かれた瞳を無視する
「槍、返してっ!」
まあ、投げたの僕だけど……槍なら使い方として間違ってないはず
柄を掴み勢いよく引き抜く、ブラッドウルフの口の中から鮮血が溢れ、身体を震わしている
動きもぎこちなく見える、槍の柄をぶつけて地に伏せさせる
起き上がろうとはしてるけど、上手く立てないようだ
とどめは刺したいけど、遠くから鳴き声がするし増援がくるかも?
走って、その場を後にする事にした
かなり走っている気がする。一応、増援とかは来てないようだ
あの場所に留まってたら危なかった。狼だし、匂いで追われるというのもあり得るけど
立ち止まり、近くにある樹に背中を預けて呼吸を整える
微かに遠吠えがする、まだ離れた方がいいな
ところでこの樹が魔物だったら、終わりだけど
一回、蹴ってみる。無反応、大丈夫っぽい
道とか気にしないで走ったせいか、城は影も形もなかった
「群れだったらヤバかったって」
この一言に限る。本当に
で、迷ったな。コレ
うーん、どうしたものか。いや、テキトーに進むしかないよね
その時だった、目の前で走ってくるゴブリンを見つけた
ゴブリンか、この世界に最初に来て以来だな見つけるの
なんか、慌ててるけどなんかあったのかな?
あっ、目が合った。視線を逸らす
「キィ!?」
こっち見んな、僕の背後に回るな、どっか行け
「キィキィ、ゴブ~」
「揺らすなっ、ゴブとか情けない声で鳴くなっ」
「ゴブ~、キィキィ」
ゴブリンが前を指差してくる、前になんかあるの? 仲間割れでもしたの?
前を向いてみた、赤いなんかがいた。なんか寒天みたい、いやゲル、そう。ゲル状、ああ、コイツが『レッドスライム』か
頭痛がする。なんで、ゴブリンがレッドスライムに追われてるんだよ
指差すな、くそ、このゴブリンめっ
「倒せと?」
「ゴブッ!」
頷いた。グッと親指を突き立てていい笑顔だ
さよなら、僕はその場を後にしようとする
「キィ!?ゴブゴブ~」
「自分でなんとかしてよ!? ヘマしたら僕の尊厳に関わりそうだろっ!?」
「キィキィギィ~」
くっつくな、やだよ。捕まったらどうする気だよ!?
その間にレッドスライムは、僕らの方へとゆっくりと近づいてきてるし
あー、もう、仕方ないなっ!!
「冷気を纏いて、眼前の敵を裂け――『アイスエッジ』」
氷の刃が、レッドスライムを両断し、分裂した。
なんで!? くっ、なら今度は!!
「雷よ、降り注ぎて、敵を射抜いて――『サンダーレイン』!!」
二体に分裂したレッドスライムに幾つもの雷が落ちると、レッドスライムは爆発した
なんだったんだ?
ゴブリンを見ると、遠くで手を振っていた
しかもかなり距離が離れている。あのやろー、楽しやがって
と、ゴブリンに近づこうとした時だった。足がなんかニュルニュルした物を踏んだ
「えっ?」
足下を見る、赤いゲル状のを踏んでた。ちょっ、いつの間にもう一匹いたの!?
レッドスライムは、踏んづけた片足を取り込んできた。バランスを崩して転んでしまった
すると、もう片足を取り込まれてしまった
「ちょっ、やめっ、て」
レッドスライムはそのま、下半身を飲み込んでしまった。っ。なんか生暖かいっ!?
「キィキィ!?」
ゴブリンが、慌てたように叫ぶ。いや、逃げようと足掻いてるから!!
そこで立ち止まってないで、助けてよ!?
「ひゃっ!?」
袴の中に入ってきてる。ちょっ、何して、んっ、気持ち、悪いっ
ジタバタと足掻いてみるも、ダメだった
そうこうしている間に、僕は上半身まで飲み込まれてしまっていた
ゲル状の一部が熱を持っているのか、胸や股に当たる位置が熱くなっている
その熱を持った位置だけ、忙しなく動いてくる
その際にゾクゾクとした変な感覚に襲われ、身を捩らせて、その初めての感覚に涙が出てしまう
「離せっ、この」
足掻いても、身体に力が入らず、成果が出ない
うう、こんなのに汚されるなんて嫌だ、嫌すぎる
最悪だ、初めてをこんなんに取られたくない、でも、力が入らないっ
「っあ、はぅ、ちょっ、助けてっ」
「イイゾ、ワカッタ」
「!?」
太い腕がレッドスライムの中に突っ込んできて、僕を掴むとムリヤリひっぺ剥がした
……僕、助かったの?
「チョットマッテロ、ソオオイ!」
レッドスライムを手に持った大木で潰してから、僕をゆっくり降ろしてくれた。僕は、脱力からかその場に座り込んでしまう
よかった。奪われなくてすんだ……じゃなくてまずは
「ハァハァ、あ、ありがとう」
「キニスルナ、オマエ、ナカマヲ、タスケテクレタ。ダカラ、オンガエシ」
その言葉にゆっくりと顔を見上げて、ギョッとした。デカイ、とにかくデカイゴブリンが立っていた
そのゴブリンの周りには、標準サイズのゴブリンが五匹も居る
デカイゴブリンは僕の頭を何故か軽く叩き、言った
「スマーーイル」
僕を助けてくれたソレは、ゴブリンロードと呼ばれる魔物だった。
つい、少しやり過ぎたかなと反省しております。
すみませんでしたm(__)m
ご意見、ご感想がありましたらお願いいたします
一部、追記・修正しました(1/7)




