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この世界で  作者: 甘栗
29/73

第29話 舞台裏で

今回は、シア達は出番なしです

いきなり、なんちゃって3人称で始まります


それは、シアが連れて行かれたその日の夜の事だった。


目深までローブを被った小さな人物は、身長を見た限りは12、3歳くらいだろうか?

夜の喧騒の中を淡々とまっすぐに目的地を目指して歩いている。

町外れに存在する『月宵草の輩』の拠点の前まで辿り着いた


「ここに、いる?」


小さな口から零れた言葉は、夜闇に掻き消されていった

フードが風に煽られて、外れる

顔が露になった、その人物は金色の髪をした幼い少女だった

フードを被り直すこともせず、じっと目の前の家を見つめる

長かった。ようやく自分の目的が終わると安堵の表情を浮かべる


「ああ、お嬢さん。お疲れさま

残念ながら、お目当ての人物はいないよ」


突然、自分に掛けられた言葉に僅かに驚きの表情を浮かべたがすぐに表情に出さなくなる

何処から聞こえたのか、それを探そうと周囲を見回す


「いない?」

「くっくっ

いや、君の前にいるよ?」


正面から掛けられた言葉とその言葉通りに自分の前に立つ人物の姿を見つけて、2、3歩後退り身構える少女

 正面に立つ男性は、愉快そうに嗤いながら少女を見ていた。

少女には、見覚えのある人物で会いたくない相手でもある男、ガルシアだ


「やあ、久しいね。リリー」


リリーと呼ばれた少女は、答えずに睨む。身長差から見上げる形になっている

その様子を見て、また嗤う


「なんで、いるの?」

「ふむ、私は私のやりたい事の為だけに居るだけだよ? 君のように誰かのお使いなんかではなくてね」


これである。ガルシアは出会う度に自分の目的の事を『お使い』と言う

反論しても、どこが違うのかと返してきてキリがない

それよりも、気になる事が聞こえた気がして尋ねる


「いない?」

「ああ、居ないよ」

「なぜ?」

「昼頃にカイン氏が、友人と一緒にさらっていったからね」

「カイン、さんが?」

「くくく、そう。君のよく知るカイン氏が」


質問に答え、ニタァと口角を吊り上げるガルシア

せっかく手に入れた情報も無駄になってしまい、溜め息を吐く

なら、ここにいても意味がないと踵を返す

と、背後から声が掛けられる


「無駄足だったね、災難だったね。だが、何処に向かったか分かるのかな?」

「……また捜すだけ、貴方には頼らない」

「そうか、だが、アテがあるのかな?」


その言葉に答えられずにいると、ガルシアが自分の影の中から現れる

悪趣味だと、内心で毒づく

おちょくって愉しんでいるのだ、この男は。分かっていても、腹が立つ


「昔から、君はそうやって頑張っていたね

だが、結果が伴った事があったかな?

いや失礼、なかったね。がんばり屋さんのリリー

目的の人物を、いつもあと少しのところで失う哀れなお嬢さん」

「うるさいっ、あの時のは貴方が原因

いつもわたしの苦労を戯れで邪魔して嘲笑うくせに!」


堪えきれずに感情を爆発させるが、ガルシアは嗤うだけ

それを見て、カァと頭に血が昇りより苛立たせる


「ふむ、確かにな。いやだからね――」


ソレの誘いに乗ってはいけない。そのせいで、酷い目にあった。なにより、師からそう教わっている

協力させると、とんでもない事になるのだ


「私もね、彼女に興味があるからね」


ソレは、嗤いながら手を差し出してくる

その手を取ってはいけない。だが、しかし


「良かったら、手伝ってあげようか?」


相手の顔と手を交互に見て、どうしたらいいか戸惑ってしまう。協力してもらうべきなのか悩んででしまう

自分は、相手の顔を知らないが、ガルシアは知っている

だが、その結果、また面倒事に巻き込まれるのは勘弁したい


「ああ、あの少女はシア君というんだがね。彼女は面白いな、初対面の時から私に警戒心を抱いていたね。

あれは、面白かった。私の書いた小説を押し付けたいくらいに、ね

おっと、他意はないよ。だがまさか、カイン氏まで現れるとは。面白いネタになりそうだ」


今日はよく喋るな、と頭に過った考えを振り払う

ガルシアの言葉に反応してしまい、考えが纏まらない。

やはり、関わると録な事にならない。


「決めた」

「ほお?」

「確かに貴方が協力してくれれば、楽かもしれない。でも」

「ふむ」

「支払う対価が釣り合わない。却下」


リリーの言葉に、ガルシアは拍手をした

その行動に、怪訝な表情を浮かべる

拍手の音が高くなっていく、いくら町外れとは言え、うるさい

ニタァと、口が吊り上がっている。嗤っている


「うるさいんだけど?」

「失礼、君の成長に私なりに感激したつもりだったのだが」

「不快極まりなかった」

「それは失礼、では行くといい

彼女は、国境沿いにある森の奥に居るだろう」

「そう、分かった。でも感謝はしない」

「それでいいさ、行きなさい。」


大人しく引き下がるガルシアに警戒しながら、リリーはその場を後にしようとした


「老婆心だがね、そのローブは悪目立ちでしかない。目立ちたくないなら、着ない事だね」

「う、うるさいっ」


ガルシアの指摘にムッとなり、被るのをやめてその場から去った

ガルシアは、リリーが居なくなるのを見届けると、拠点の入口前に座る


「指摘に対し、怒るのは変わらないか

くっくっ、さて。リリーとまだ動かない旅団、どちらが速いかな?」


愉しい、ガルシアは素直にそう感じている

自分の知り合った者達は、どうしてこうも愉しませてくれるのだろうか?

ここまで、愉しいと自分も行動に移したくなるじゃないか

 ガルシアは、分厚い雲に覆われて星ひとつ見えない空を見上げて、大嗤いする


「まだまだ、始まったばかり。そうだろう、シア君?

くっくっ、クク、クーハッハッハー」


その翌日、町外れで悪魔が笑っていたという怪しげな噂が出た

3人称は、厳しかったです。

以前、優希の話に出たリリーが出ました


ご意見、ご感想がありましたら、よろしくお願いいたしますm(__)m


投稿日は、クリスマスなのに。暗い気がします

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