第27話 王都どきどき夢
「友達?」
僕は首を傾げながら、尋ねると優希は笑顔で「イエース♪」と返してきた
だったらどうして、僕を見たんだろ? 僕に何か関係があるのか?
「ねえ、優希。その友達は、どんな人なの?」
「あ、そういえば言ってなかったわね、名前はリリー
旅団に入る前までいっしょにいた女の子
金色で青い瞳に、無口で無表情で小さくてお人形さんみたいに可愛い子
この世界に来て、右も左も分からない私の手を引っ張ってくれた」
「どうして、いなくなったの?」
うーん、と腕組みし唸る優希。旅団に入る前までというのは気になる
旅団入りしたから、いなくなった訳ではないよね?
「確か、金色の瞳の人物を捜してるとか言ってたわね
で、アスビスに着いてから1週間経ったら。宿屋に置き手紙を置いていなくなってたわ
旅団入りを祝福する言葉と目的を優先したいから出てくって内容の」
それから優希は最近までの出来事を教えてくれた。
優希は、それから旅団のみんなと依頼をこなしたりしながらリリーの情報を探したけど見つからなかった
だから、旅団に入って2年経ってからマーカスさんに抜ける事を伝えるとマーカスさんから推薦状を貰い王都へと行くように勧められ軍に入隊した
だけど、リリーについての情報はそれっぽい人物を見た程度しか入らなかった
犯罪経歴とか無かったし、仕方ないかと少し諦めてた時に例の化け物の出現で向かった先にいた僕を見つけた
僕が捜してる人物なんじゃないかと、予想してるらしい
「―君が、リリーの捜してる人か分からないけどね。でも、金の瞳ってこの世界の住人ではなかなか居ないから」
「そうなの? 捜せば見つかりそうな気がするんだけど」
「生憎だがな、俺の知る限りはいないな
俺も、ユウキから聞いて調べたしな」
ハルトが、僕の疑問に答えてくれた。そっか、居ないんだ。だったら、なぜリリーはそんな人物を捜してるんだろ?
捜すくらいだから、存在するはず
でもなんでだろ、誰かから捜すように言われてるのか?
うーん、と悩んでも何も浮かばない
「いいのいいの、私はシアだって事に賭けるわ。もし、リリーを見つけたら私が会いたいって言ってたと伝えて」
「うん、わかった。優希の友達だもんね。僕も会ってみたいし」
「ありがとー♪」
「うわわっ」
優希が、僕に突然抱きついてくる。その衝撃で背中から倒れてしまった。痛いっす
優希の髪や肌から甘い香りがして、ドキドキする
それに柔らかな感触が伝わる。僕が女の子になったからって、まだ他人には慣れてないんだって!?
「ハ、ハハ!?ハルト、何とかしてっ!」
「知らん」
目があったハルトに助けを求めるも、頬をかいてそっぽを向いてしまった。う、裏切り者めっ
「ありがとー、シア」
それから、解放されて僕らは色々と話をした。
お昼までご馳走になり、サボっている優希をハルトが仕事をさせに行くために連れて行ったから、僕もマイクさんに宿屋への大まかな行き方を教えて貰いなんとか戻ってこれた
宿屋の宿泊している部屋に入り、ベッドに飛び込む
まだ、二人は帰ってきてないみたいだ。優希に会えてはしゃいだのだろうか? なんか目蓋が重い
僕は、もう大人だっていうのに、あ、今の僕は
まだこどもかぁ
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『ん? シアか
まだ夜更けには速いがどうした?』
頭に響くような声がした、マクシミリアンだ
ああ、じゃあここは夢か
昨日と同じくマクシミリアンの姿は無いのに声だけがするのはどういうわけなんだろ?
「ちょっと疲れて寝ちゃったんだよ」
『まったく、子供か。貴様は』
「僕、16歳だから。まだ子供だと思うよ?」
『なんと、16だったか。もう少し幼く見えたぞ
それならそうと見えるように、振る舞わぬか』
ぐっ、なんなんだ。マクシミリアンに小言を言われてる。そりゃはしゃいだりするのはどうかと思うけど、仕方ないじゃないか。友達との再開だったんだしさ
「気をつけるよ」
『うむ、そうせよ』
「ところで、マクシミリアン?」
『なんだ?』
辺りをぐるりと見回すけど、やっぱりマクシミリアンの姿はない
「君の姿か見えないんだけど、どうして?」
『ふむ、我にはシアの姿は見えておるが。気にするほどの事か?』
「僕もマクシミリアンの姿が見てみたいな」
『そうか、我を見たいか
変わっておるな、シアは』
そうかな? 相手は見えてて自分だけ見えないのは不公平だと思っただけなんだけどな
実際に、マクシミリアンの姿が見てみたいのもあるけどね
『やめておけ、我は貴様らに魔物と呼ばれる類いだ』
「えっ? 魔物、だったんだ。でも見てみたいな。どんな姿なの?」
やれやれと溜め息を吐かれた。なんだよ、僕は変な事は言ってないぞ
『貴様への配慮のつもりだったが、どうやら余計な気遣いだったか』
「ありがと。でも僕は会ってみたい、マクシミリアンに」
あれ、景色が歪んでる。時間切れ?
速すぎるよ、って、ああ、そうか。疲れて寝ただけだもんな
『会ってみたい、か。分かった、今は王都だったな』
「う、うん」
『明日、向かう。その後、また雑談をするとしよう』
明日、か。分かった、待ってるけど大丈夫なの?
『心配するな、シアの願いを叶えるだけだ』
「じゃあ待ってるよ、約束だからね!」
僕の言葉に、微かに笑った気がした
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「シアくーん、起きてー」
「寝かしてやれや、マーカス」
なんか、聞こえる
うっすらと映る視界には、2人の人影が見える
「いやいや、シア君も行くんだしさ」
「アイツらの気紛れだろが、もとはといやテメエがアホな事を抜かすからだな」
「アホな事じゃないよ、デイビット
僕にも、娘みたいなのが出来たと言っただけじゃないか」
マーカスさんが、アホな事を言ってる
はっきりとしてきた視界、上体を起こし欠伸をする
アレ? なんで、2人がここにいるんだろ?
「やあ、シア君。ただいま」
「お帰りなさい、なんで、ここにいるんです?」
「ん? ああ、伝えたい事があってね」
「伝えたい事?」
「うん。シア君、明日はかつての仲間と会ってくれない?」
はい? え、なんで?
何があったら、そんな事になるんだよ。マーカスさんはなぜか照れている
「コイツが、おめえの事を娘みたいなのが出来たって言いやがってな。興味津々でよ」
なんてこったい、僕がマーカスさんの娘扱いになってるのか!?
「で、どうかな? 来る?」
ここで行かないって言ったら、明日にまた余計なことを言いそうだな
マクシミリアンは、時間を指定しなかったし、良いよね?
「分かりましたよ」
「よし、決まりだ。では、食事にして明日に備えようか」
僕はマーカスに連れられるまま、部屋を出た
明日は、マーカスのかつての仲間やマクシミリアンと会うのか、なんだか緊張するけど
なるようになれ、と僕は考えるのを放棄したのだった




