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この世界で  作者: 甘栗
25/73

第25話 夢ときどき王都

一部、修正しました(12/14)

 自室じゃなくて何もない場所に、僕はいた

寝間着じゃなくて白いワンピースを着ていた

ここは僕の夢

彼が言うには、『現実と幻の境界線上にある世界、僕だけの世界』らしい。僕だけの世界とか言われるのは恥ずかしいが夢だからだろうか?

夢にしては、意識がはっきりしてる。何て言ったっけ? 明晰夢だっけ?


 ここは、何もない場所だけど、寂しいとは感じないし居心地も悪くない。辺りを見回してみるも、真っ白な景色が広がっているだけだった

いつもなら突然やって来るはずの彼が現れるような事はなかった


「そうだ、せっかくだし探索してみようっと」


ここに来た事はあるけど、調べたりした事はなかったしちょうどいいかもしれない

そうと決めたら行動あるのみだ、右も左も分からない場所をまっすぐに歩く


歩く度に、足元は波紋を広げている。水があるわけじゃないのに不思議だ

歩いていても景色は変わらない、白一色の世界のまま


「なんもないのかな?」


呟いた言葉だけが、静寂の中に響いた。ここには何もない

そもそも、進んだのかも分からない

それでも、何か見つからないかと歩いてみるも相変わらずの光景だけ

僕は、上を見上げてみる。頭上もやはり白一色だった

僕だけしかいない、あとちょっと進んでみて何もなければ次回に持ち越そう。明日は、王都に行くんだし

とりあえず、進もう



『誰かいるのか?』

「!? 誰っ!?」


突然だった、地鳴りのような声が頭の中に響いた

辺りを見回すけど、誰もいない


『ほお、人間か? いや違うかもな

まあ、良い。小娘、ここになぜいる?』


聞こえてくる声は間違いではないらしいけど、なんか人間である事を否定された。ひでえ

僕は人間だよ

うーむ。なぜ、と聞かれても困る。ここは僕の夢で、僕の世界だって言われた。


『………なるほど、夢か。違いないな

現実であり幻でしかないようだからな、この場所は。しかし、貴様の世界とな?

ならば、小娘よ、名はなんと言う?』

「シアだよ、シア・ポインセチア

貴方は?」

『我か? 我はマクシミリアンだ』


マクシミリアンと名乗った声は、色々と質問してきた

僕がなぜ、ここにいるのかや僕の世界と誰から聞いたのか? 等々

質問に対して僕は、彼から言われた事を教えた


『……なるほど、其奴が知っておるのか』

「うん、ごめんね。彼から言われただけだから」


俯く僕に、苦笑した後に構わんと言ってくれた

励ましてくれた、のだろうか?


『やれやれ、せっかく我以外の物を見つけたというのな

じきに夜が明けてくるとは、シア。退屈しのぎには良い相手だ、また明日な』

「え? うん、いいけど

ここに来れるか分からないよ」


自分の意思で来た事は無い、いつも、気付いたらここにいるのだから


『いや、貴様は来れるさ。ここが貴様の夢ならばな』

「うん、そだね。ありがと、マクシミリアン」

『待っておるぞ』



目が覚めた。はっきりとは意識が覚醒してないのか頭がぼーっとする

 そのまま、ベッドから降りて窓の外の景色を見る

うっすらと朝陽が差し込んできて、濃紺の夜空が青に変わろうとしていた。


「ふぁ、なるほど……たしかに、じきにだね。マクシミリアン」


夜明けは夜明けだけど、僕がいつも起きる時間よりはかなり早かった

僕は、寝間着をゆっくりと脱いでクローゼットを開けて、この世界で最初に身につけてた服装に着替える

着替え終え、部屋を出ていきそっと玄関から外に出た


「ふぁ、今日から2日間、王都」


たった2日だけど、優希に会えるのだ

嬉しさで胸がいっぱいだ

空は、先程よりも青さを増していき、空に浮かぶ雲が顔を覗かせ出した太陽の光で輝いている

って、詩人か僕は

元の世界では、こんな事考えたりしなかったのにな

後ろから、足音がしたので振り返るとデイビットさんだった

普段の服装(タンクトップに下が、灰色のズボン、腕を皮のグローブを)だけど、金槌を持っていない


「よお、はえぇじゃないか?」

「おはようございます、待ちきれなくて、つい」

「そうかい、まあ、王都つってもあんま期待すんなよ」


嫌そうな顔をして、そんな事を言うデイビットさん。あれ、まともな会話をしたのって今回が初じゃないだろうか?


「ああ、でも、連中に会うのは嫌じゃねえわな」

「かつての仲間の人達は、どんな人達なんですか?」

「会えば分かるから、我慢しろや

ったく、その瞳といい、好奇心といいルミナみたいだな」


ルミナ、誰だろうか?

デイビットさんは目を細めて優しげに笑い僕の頭を2、3回叩いた

反射的に頭を抱えるけど、痛みはなかった


「ルミナは、マーカスの惚れた女で人間さ

いつも、前線にいては周りを振り回してやがる、そんな無茶苦茶な女だった」

「そう、ですか」

「おいおい、へこむなや。ほれ、中に入って飯を作るから待ってろ」

「あ、はい」


家の中に戻り、デイビットさんが用意してくれた朝食を食べ終えた時にやっとマーカスさんが出てきた

ビシッとした黒基調の服とズボンに身を包んでいる

胸元に、星を象った勲章を着けている

あれは、なんだろう?


「懐かしい服着てきやがったな、オイ」

「まあね、王都には軍服で行くのは僕の中での決まりだ」

「おめえしか、そのカッコでこないじゃねえか」

「いいんじゃない? こういうのは気分さ」


軍服、かつての戦争の時のこの国の軍人が着たもの

それを、マーカスさんが着ている。何も言葉が出なくて、じっと見つめる

マーカスさんが、僕の視線に気づき近寄ってくる


「ははん、僕に惚れた?」

「あ、や、惚れてないです。……カッコよかったのに台無しですよ?」

「ありゃ、残念」


あり得ないから

いつものやり取り、良かった。なんか別人みたいに思ったけどいつものマーカスさんだ

ほっと、一息を吐いた


「さて、術式は昨日の内に設置したし、さっさと行こう」

「飯食えや」

「おっと、こいつはすまない」



朝食を済ましたマーカスさんの後に続き、荷物を持ち庭に着いた

見た限りでは、術式は見えないけど、どこにあるんだろ?


「さて、デイビット、シア君

僕の傍から離れないようにね」

「はい」

「わかってらあ」


言われた通りにすると、周りをぐるりと囲むように魔法陣が現れた


「えっ?」

「さあて、始めるかな

我が呼び掛けに応じ、彼の地へと我らを誘え、『ワープ』!!」


魔法陣が詠唱に反応し、まばゆい光を放ち、僕らを包んだ

 だが、しかし。僕は1つだけ思った

名前は、そのまんまなんだね、と


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


視界が暗い

思わず目を閉じてたみたいだ、恐る恐る目を開けると拠点の庭ではない場所にいた

何かにしがみつきながら、キョロキョロと辺りを見回して見るけど、見知らぬ場所だった

周りは大きな建物ばかり、遠くからはガヤガヤと喧騒が聞こえる

後ろは白一色の壁のみ


「ここ、は?」

「王都の中だよ、シア君

で、僕らは路地裏にいるのさ」


上からする声に見上げてみると、マーカスさんが

見下ろしてくる

なんか、普段より背が高い気がする。僕が縮んだのか!?

ぎゅうと腕に力をこめる、なぜかマーカスさんが、にやついている


「いや、役得役得」

「ゆっくり自分が何にしがみついてんのか、確認しな」


デイビットさんの言う通りにしてみる、黒い布? いや、違うこれは服だ

確か、マーカスさんが、って、あ

見上げてみると、マーカスさんがにやついている

つまり、なんだ。僕はビックリしてマーカスにしがみついてたのか

やっと状況を理解して、僕の顔が熱くなる

そのまま、マーカスさんから離れた僕は


「~~~~~っ!?」


声にならない悲鳴をあげた


「落ち着いたかい?」


しばらく、その場に体操座りをしていた僕にマーカスさんが、話しかけてくる。それに応えるべく頷く

恥ずかしい、なんだって、あんな事に


「ふむ、君は悪くないさ

不可抗力だよ、では。宿を取ったら自由行動にしよう」

「……だな、嬢ちゃん。行くぞ」

「あ、う、はい」


返事をするも、恥ずかしさで行動不能になって動かない

マーカスさんに手を握られ、引っ張られながら宿屋に向かう事になったのだった


「ありがとう、ございます」

「いやいや、パパエルフだからね♪」


その言葉がトドメとなり、僕は考える事を放棄した

さくさくと、王都に入っちゃいました

自分で書いといてなんですが、マーカスさん、すげえや


ご意見、ご感想がありましたら、お願い致します

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