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この世界で  作者: 甘栗
24/73

第24話 かつて存在したモノについて

「おや、あの時のお嬢さん。久しぶりだね

どうかな、少し話をしないか?」


 男性は、僕を覚えてたらしい。それだけじゃなくて会話をしないかと提案してきた

この人に対しては、良い印象を持てない

いつかのアルフさんに近い感じがしてる。なんか近寄りがたい雰囲気というかなんというか

断りたい。なんだか恐い。

 僕が何も言わずに立ち尽くしていると、男性は溜め息を吐いた


「無理にとは言わないよ、君の時間は君だけの物だからね」

「わ、分かりました。少しだけなら」


僕は、男性の隣に腰かける。男性は口だけは笑みの形を作っているけど目が笑ってない

ヤバイ、怪しまれてもいいから走ってこの場から逃げれば良かった


「ありがとう、さて、私はガルシア。種族は人間

しがない、小説家だ」

「……僕は、シア・ポインセチア

冒険者で、旅団『月宵草の輩』の一員です」


 小説家、だったんだ。冒険者かと思ったけど、冒険者だとしても不自然だ、武器を持ってないようだったし

いや、魔法を使う事も考えられる。でも、小説家ならやっぱり変だ。だって、一人で外を歩くのは危険だ

 魔物は、団体行動する相手は住処に近づかない限りはあまり狙わない。

だけど、一人だとその限りではない。危険度が羽上がる、いつ狙われるか分からない状態なのに


「ああ。

噂のその場に留まる旅団か、では、あの時は依頼かな?」

「依頼ですよ、えーと、ガルシアさんはあの時なんで、一人で歩いていたんですか?

護衛か、馬車を使わなかったんですか?」

「ふっ。馬車はまだ出せないとの事だったし

護衛を雇う気はないからだ」


護衛を雇う気がない? よほど自信があるんだろうか?


「昔から運がいいからね」


ニィッと口が歪み、笑みの形を作っている


「運、ですか?」

「そう、運、しかし、愛読者には恵まれなくてね

新しい小説のネタ探しの旅をしている」

「……はぁ」

「君は若いようだから、知らないだろうね

旅団の誕生の以前は『ギルド』という冒険者を登録し管理、依頼斡旋を目的する組織があったのを」


 ギルド? ゲームやってた時に見聞きする名前だ

でも、かつてという事は今は無い組織ってこと?

その手の組織が無くなる事ってなさそうなのに


「『ギルド』は、かつての戦争終結まではかなりの規模があったらしい

しかし、戦争終結後に衰退し崩壊した」

「どうして? 依頼を斡旋する組織なら冒険者がいる限りは無くならないハズです」


普通に考えれば、そのハズなのに、現在ギルドは存在しない


「ギルドが斡旋する依頼は、依頼を受ける当人の実力に見合った物だけだ

死ぬかどうかは実力次第

 しかし、戦争で国がギルドに召集を掛け

勇んで参加した、死が隣り合わせの駆け引きを掻い潜り生き延びた者達は、ギルドの依頼では

そこそこ安全な依頼では満足出来なくなっていた

 そんな連中が勝手に依頼を探し、こなしていく。初心者は、そんな連中から直接教えを請い危ない橋を渡り成長する」


 依頼を見つけれればいいけど 、それでは見つからなかったら稼ぎが得られず損するだけだ

法を犯す依頼をして、見つかれば罰せられる


「損得も経験出来て自分で、安全かどうかを見極める勘も身に付くだろう

さて、彼らは彼らで同志を集め、新たな集団を作り、たった1つのルールを作った。『属する国の法は犯さない』と言うね

後は、自分達の旅団に必要なルールを定めて終わりだ

これが、今ある旅団の誕生とされている。ギルドは旅団誕生の5年後に崩壊した」

「……ずいぶんと、詳しいですね」

「ん? ああ、昔に小説の為に調べたからね

しかし、売り上げは芳しくなかったよ」


くっくっ、と喉を鳴らして笑っているガルシアさん。

でも、調べたか、まるで自分で見てきた様に語ってたような


「しかし、君は見ていて飽きないな。実に面白い」

「何がですか?」

「ああ、すまない。私の話に真剣に聞いてあれこれ悩む者なんかいなかったんでね。新鮮だ」


 知らない事を聞いて、悩んだだけなんだけどね

それが新鮮だなんて変わってる? ……帰ろう

僕は立ち上がる、少し風が強くなってきてるな


「僕は、帰りますね」

「ん? ああ、そうか。気をつけて帰るといい」


 会釈してから、少し歩いてから、ふと気になって振り向いた時には、ガルシアさんはいなくなっていた。

何処に行ったのか、辺りを見回して見るも姿は見つからなかった

 いったい、なんだったんだろう? 僕は時々後ろを振り返ってたりしながら、家に戻る事にした


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「お帰り、1週間後までリント達は帰ってこないから寂しいかな?」


リビングで本を読んでいたマーカスさんがテーブルに本を置いて、開口一番にそう言ってきた。べつに寂しくなんかないけど

えっ、1週間後まで? 知らなかった


「それって、どんな依頼なんですか?」

「おや、知らないのかい?」


 首を左右に振る、僕には依頼を受けてるとしか教えてくれなかった。だから、内容は知らない

マーカスさんは、「仕方ないな~」と言って教えてくれた

 内容は、2人と初めて会った村に行き、近くの森に最近出没した魔物の撃退だそうだ


「僕も行きたかったです」

「まあ、諦めなさいな。代わりに僕とデイビットの用事に同行させてあげるから」


 2人の仕事? 僕は気になってマーカスさんを見つめると頭を思いきり撫でられた

振り払うも、頭に手を乗せられる。いいや、諦めよ


「それは、どんな用事ですか?」

「王都に向かうんだよ、かつての同胞達に会いにね」


………はい? 王都に向かう? いやいや、どうやって行く気ですか?

 あ、でも王都には優希とハルトがいるんだよな、行ってみたいけど


「どうやって行く気ですか?」

「ふっふっふ、シア君

僕はエルフだぞう? 転移魔法は習得済みさ」


あ、そうだった

この人はエルフだった、忘れてた

転移魔法なんかあるんだ、すごいな異世界。そんな魔法まであるなんて


「滞在期間は2日、その間は自由にしな

僕らは、同胞と色々あるから」

「分かりました。でも、同胞って?」

「300年前のでけえ戦争の時に一緒に戦った奴らだよ、嬢ちゃんも連れてくのか?」


 デイビットさんが、後ろに立っていた。なんでだろ、久しぶりに会った気がする

戦争を生き抜いた仲間に会うんだ、迷惑じゃないんだろうか?


「もちろん、お留守番なんか退屈だろ?

不服かい?」

「いいがよ、おめえのガキとして紹介すんのか?」

「デ、でデイ、デイビットさんっ!?」

「なるほど、それもアリか」

「マーカスさんも!? やめてください、忘れてたのに」


 なんでまた、ぶり返すような事を言ってくるんだこの人は!!


「まあ、冗談はさておき、王都はここと違って、今は夏だったか?

シア君、なるべく涼しげな服装にしなよ?」

「あ、う、はい」


 今って夏だったんだ、知らんかった。

唐突だけど、王都に行ける。行けば優希に会える

帰ってくるまでの憂鬱さは、それだけでどっかに行ってしまった


「明日の朝一で行くから、庭に集合してね

そこで魔法を使って行くから。それまでに準備はしなよ?」

「はいっ!」


 僕は逸る気持ちを抑えて、準備する事にした

明日が待ちきれない

 

つい浮かんだネタを書いていましたら、ギルドが無い事になってしまいました。orz


えーと、同じような事をしてる旅団があるからいい、のかな(汗)


次回、やっと、町を移動する予定です。24話も書いてるのに、やっとです


ご意見、ご感想がありましたらお願い致します


一部、追記・修正しました(12/13)

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