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この世界で  作者: 甘栗
19/73

第19話 読書をしてみる

騎士からの依頼を終えて、3日後の昼下がり

 僕は、書斎で本を読もうと物色している。

所狭しと本があって、床にまで置かれてしまっている

あれから早朝は、リントさんが特訓に付き合ってくれるようになった

ダラダラしてるよりはいいので感謝してる


「え~と、何か簡単な本はないかな?」


 読み書きができると言っても、難しい言葉はまだ分からないので、遠慮したいところなんだけど

……ない、小難しいタイトルの本ばかり、マーカスさんの買う本だから仕方ない。試しに一冊取って開いてみる。

『魔法と魔力の相互関係』

 うへぇ、難しそう

だけど、うんまあ、試しに読もう。脇に抱えて、本の山が積まれた机の前にある椅子に座り

机に置いてから表紙を開いて、読もうとして止まる

なんとかページを開いて読もうとするも挫折し机に突っ伏した


「むずい、ムリ」


 勉強は、あの2人が分かりやすく教えてくれたから良いけど、これはそれをもっと難しい言葉で書かれてる

タイトルだけ見て、これならイケるかなと思った僕がバカでした

こんな事なら、ミリアさんに「出かけるから、ついてくる?」と聞かれた時についてけば良かった

上体を起こして、ぐるりと周りを見渡す


「……どっかに、絵本とかないのかな?」

「そんな物はここには無いな」


 えっ?今の声はどこからしたの?

辺りを見回しても、誰もいないのに

首筋にキラリと光る刃があった、いつの間に後ろに!?


「ここにある本は君には、まだ難しいんじゃないか

シア」

「え~と、リントさん、そのダガー納めてください」


 「おっと、すまない」と言うと懐にしまった

相変わらずのスーツ姿のリントさんが後ろに立っていた。僕は水色のワイシャツに、黒のミニスカだけど

最近、ミニスカを着るのに抵抗がなくなってきてる。この身体に慣れたんだろうな

って脱線した


「…君がここにいるのは珍しいな」

「読書のつもりでしたけど」


 ニヤリと口が笑みの形になっている、バカにしてないだろうか?睨んでみるも、効果なし

リントさんは、僕の頭を軽くポンポンと叩いてくる

振り払うも、またやってくる。……諦めよう


「そんな事より、自分の例の力について調べたらどうだ?」

「あー、それはちょっと難しいんじゃないかなと」


 マーカスさんに、拠点に戻ってから聞いてみたけど、魔法陣とかは知ってるが、何故、僕が使えるかは分からないと言われた

リントさんに、マーカスさんに言われた事を伝えると、フム、と呟いて腕を組み考えこんでしまった

でも、特典の最初の使用条件は『死にかける事』だった。事実、僕がお腹に穴を開けられ地面に高い所から叩きつけられて、使えるようになった

でも、2度目は、なんだろ?倒さなきゃと必死に考えてたら、勝手に発動した

僕が使いたいと思っても、使えない

自分の意思で使えるようになれば


「考えても、答えは出ないか」

「はい、いったん保留にしようかなと思ってます」


 やれやれと肩を竦められる、というか、リントさんはここで何してるんだろ?

じーと、上目遣いに見てみる。首を傾げられた


「リントさんも、読書に来たんですか?」

「ん?いや、違うが。ここは静かだし、寝ていた」

「寝てた?」

「ああ、依頼を見つけるのもめんどくさく感じてな」


 この人、真面目な人なんだけど突然、こうやって仕事探すの放棄するんだ。知らなかった

自分で依頼を見つけないで、拠点に引きこもってる僕が言えた義理じゃないか

 せっかく、書斎にいるんだから何か読みたいなぁ

辺りを見回してみる、本棚に隙間なく入れられた本

 席を立ち、簡単そうな本を探す

頭の上ぐらいの高さまであるので、見上げなきゃいけない

あれ?あの本はなんだろう、背伸びして手を伸ばす。と、届かない!?なら、爪先立ちでならっ


「んー、くぅー…届けぇ」


 ひょいと、横から伸びてきた手があっさりと、取った

そのままの状態で、横を向いてみると目の前に僕が取ろうとした本を差し出してくるリントさんがいた


「これか?」

「ハイ、ありがとう、ございます」


 状態を戻して、受けとる。やっぱり背が高い人はいいなぁ。みんなして僕より背が高いから、いつも見上げてて首が辛い

じゃなくて、本のタイトル確認しよ。

『恋物語百選』


「……ここにあるのって、確か」

「ああ、そうだ。団長の私物だ」

「じゃあ、この『恋物語百選』も?」


嘘であってほしい、そうであってくれ


「……ここにある以上、団長の私物だ」

「あはは、デスヨネー」


とりあえず席に戻って読んでみる

収録内容の多くは純愛モノ、何故か三角関係や蛭ドラよろしくな泥沼モノまで収録されていた

生々しいよ、昼ドラ展開モノ。誰得ですか?

浮気発覚とかいらないから、恋物語百選というタイトルに合わせてほしい

ん、注意書きだ……これも1つの恋のカタチです。私達、他人がとやかく言う権利は無いはずです

ふっ、なるほど。つまり、僕は本を閉じればいいわけだ…カチンときたわけでは無い、断じて違う


「そうだ、シア

明日は暇か?」


 突然、リントさんが尋ねてくる、明日か

予定なんかないな


「ハイ、ヒマですよ?」

「そうか、なら、付き合え。依頼がある」

「いいですよ」

「詳細は明日に説明する、メンバーは私とミリア、君だ」


 僕は頷いた、家でじっとしてるよりは良いから

なにより、ここに案内してもらうまでのメンバーだから、嬉しかった


「寝坊するなよ?」

「わかってますっ!!」

「不安だな、では。明日起こしに行こう」

「子供じゃないから、大丈夫ですっ」


 今の年齢は、子供だけど


「わかったわかった」


全然、信じてないし

本をリントさんに渡す


「本の場所、僕では、届かないので」

「ああ、仕方ないな…君はいつも」


いつも?いや、僕とは今日が初めてじゃ?

どこか心、ここにあらずといった状態

どうしたんだろう?


「リントさん?」


僕の声にハッとしたリントさんが、何でもないと言って僕から本を受けとるとさっさと戻して出ていった


「なんだったんだろ?」


誰かと間違えた? でも、誰と?

うーん、分からない。気になるけど考えても何も浮かばない


僕も出よう、明日に備えなきゃいけない


「あら、シアちゃん」

「あ、ミリアさん」

「明日の依頼について、聞いた?」


ミリアさんは聞いてるんだろうか?

僕が首を左右に振ると、「そう」とだけ言う


「ミリアさんは知ってるんですか?」

「まあ、一応ね。そんな事より、これから着てほしい服があるんだけど」


 えっ、そんな事? なんだろ、やな予感がする。ガシッと僕の肩を掴んでくる、手に込められた力は強く逃げれそうな気がしない


「シアちゃーん、さあ、行きましょー♪

ふふ、大丈夫。似合うと思うから」


 ヒイィ!?

引きずられてる、嘘だ、信じられない

た、助けてー!?


「似合うと思うのをいっぱい用意したわ、さあ、レッツゴー!!」


その後、僕はミリアさんの気が済むまで着せ替えられた

詳しいことは、言いたくない。1つ言えるのは、ミリアさんの眼が怖かった。ただ、それだけ

日常回になります。


楽しんでいただけたら、嬉しいです


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